(ブルームバーグ): オリックスは、政府が整備を急ぐデータセンター運営事業への本格参入を検討している。2000億円程度を投じる可能性がある。コロナ禍による環境変化などを受けた事業ポートフォリオ見直しの一環で、傘下銀行の法人部門強化や欧米での再生可能エネルギー分野での大型買収も視野に入れる。

井上亮社長はブルームバーグ・ニュースのインタビューで「データセンターに対するニーズが激増している」と指摘。国内での本格展開を念頭に研究を始めたと明かした。データセンターはインターネットや携帯電話の通信に利用する装置が集積する施設で、高圧電力の確保や自然災害対策が立地の決め手となる。

データセンターの需要増について、井上社長は、コロナ禍で通信販売など電子商取引が増えたことや携帯電話の高速通信規格「5G」の利用拡大期待が背景にあると説明。本格展開を決めた場合の事業規模について「最低2000億円でやらないとスケールメリットが出ない」とした。電力については、同社が得意とする再生可能エネルギーの活用を検討する。

調査会社IDCジャパンは、2024年の国内データセンターサービス市場規模を約2兆1828億円と試算。19-24年の年間平均成長率は9.1%と予測している。政府も12日の成長戦略会議(議長・加藤勝信官房長官)で今後、データ通信量が急増するとみて国内データセンター誘致の必要性を指摘した。

オリックスの20年4ー12月期連結純利益は、新型コロナウイルス感染拡大で航空機リース部門、関西国際空港運営事業などが不振だったこともあり、前年同期比42%減の1420億円だった。井上社長は同社の事業領域が分散していたため影響は限定的だったとして、通期予想の連結純利益「1900億円は達成できるのかなと思う」と述べた。同社は法人営業・メンテナンスリース、不動産など10部門で約11兆円の資産を保有している。

事業領域の多様性を強みとする同社は、成長のために事業ポートフォリオの入れ替えを続けている。コロナ禍の経験から、井上社長は、これまで投資効率の悪い事業は「手放したいとも思ってきたが、銀行には今回ずいぶん助けてもらった」と認識を改めたという。19年5月の経営計画の進捗(しんちょく)の中では「低金利環境下で金融収益を大きく成長させるのは困難」と指摘。ファイナンス部門を重点分野としていなかった。

一方で、オリックス銀行に対しても他の事業分野同様に成長は求めていくとし「プライベートバンキングやマーチャントバンキングを行う態勢を整えるようにと話をしている」と説明。個人の不動産投資ローンに強みを持つ同行の法人部門を拡大する考えを示した。具体的には企業の合併・買収(M&A)に資金を付ける投資銀行事業などに参入し、昨年3月末時点で0.76%の銀行の総資産利益率(ROA)を、早期に2倍の1.5%程度に引き上げたい考えを示した。

再エネ企業の顔も

成長領域として重視している環境エネルギー関連では、今後もグローバルな買収を検討する。井上社長は、北米や欧州で企業価値1000億-2000億円程度の再生可能エネルギー企業があれば買収候補になるとし、特に米国で再エネ専門の資産運用会社や事業開発会社を探しているとした。そのほか、欧州ではノンバンクなど金融会社にも興味があるという。

オリックスは昨年9月にインドの環境エネルギー大手グリーンコー・エナジー・ホールディングスへの約2割の出資を決め、12月には開発済み設備容量2.9ギガワット(GW)、今後のパイプラインは同10GW以上と急成長しているスペインの環境エネルギー会社エラワン・エナジーを約1000億円かけて買収すると発表。国内でもメガソーラー事業(1GW)を展開しており、SMBC日興証券は「日本を代表する再生可能エネルギー企業」と分析している。

また、出資する航空機リース会社アボロン・ホールディングスの親会社、海航集団(HNAグループ)が経営難に陥っていることに関連し、アボロン株を買い増す可能性については「HNAから過去に何度か打診があったが、現在の30%の持ち分で満足している」と説明。「安く買えるのであれば検討するかもしれない」と述べるにとどまった。

(最終段落を追加し更新します)

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