経済インサイド

「科学的根拠」でハンドドライヤー解禁 経団連の次の狙いは海外出張

経団連
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経団連が13日、新型コロナウイルスの感染防止と経済活動を両立させる行動様式の改革で、新たな一歩を踏み出した。感染拡大防止の指針を再改定し、オフィスや製造現場にあるトイレでのハンドドライヤーの使用制限を緩和したことは、国内主要企業で構成し政策提言も行う経団連が、一部の意見をうのみにせず、科学的なエビデンス(証拠)に基づいた対策を重んじる姿勢をアピールしたといえる。感染拡大の長期化が懸念され政府が対応に苦慮する中、経済界には「新たな日常」へのさらなる改革が期待される。

指針は昨年5月に経団連が策定。政府の専門家会議でハンドドライヤーの感染リスクが指摘されたため、使用制限を盛り込んだ。

一方、昨年春のコロナ感染拡大初期から使用が制限され始めたハンドドライヤーをめぐって、関連業界は対応に悩んできた。大型新築ビルでは設置が当たり前となった中、建設関係者からは、設計段階で設置を組み込むべきか、すでに設置している施設では取り外すべきかといった検討が重ねられた。TOTOや三菱電機など製造メーカーも、成り行きを注視してきた。

そんな中、ハンドドライヤーは、海外では制限されるどころか感染対策で使用を推奨するケースもあることが分かった。日本だけが異なる対応になっていた。関係者からは、事実上の全国の感染防止方針の基準となっている、経団連指針の改定が欠かせないとの声が漏れていた。

経団連も昨年夏から検証作業を進め、ハンドドライヤーが感染拡大にはつながらないと判断し、冬場のオフィスや工場の換気の方法などとともに、使用制限緩和を盛り込んだ指針改定を12月に実施することを検討した。

しかし、11月前半にハンドドライヤー使用制限緩和について一部で報道されると、テレビのワイドショーやネットで反対論が相次いだ。政府関係者からも制限緩和判断は見送るべきだとの考えが示され、経団連は昨年12月に1度目の改定を行った際、制限緩和の盛り込みを断念した経緯がある。

今回の再改定ではその反省も踏まえ、科学的根拠を最重要視した。外部の評価機関による飛(ひ)沫(まつ)飛散状況の確認や、エアロゾルの研究では第一人者とされる研究者のシミュレーションなどを実施。根拠を明確にしたことで、政府関係者の了承を得て制限緩和に至ったという。

海外出張など国際的な行き来の禁止を受け、企業活動は大きな影響を受けている。経団連では、感染が抑制されている海外での実態など科学的根拠を積み上げ、ワクチン接種の証明書である「ワクチンパスポート」の制度化なども検討していく構えだ。(経済本部 平尾孝)

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