徳島市の阿波踊りを主催する阿波おどり実行委員会が3月末に突然、解散し、運営を委託していた民間3社共同事業体との契約を一方的に解除した。これを受けて12日、事業体総責任者の前田三郎・キョードー東京取締役が都内で会見し、実行委員会事務局を担っていた市側に損害分の賠償を求めると明らかにした。会見の詳報は次の通り。

会見する前田氏=東京都内

市長が代わってから連絡なくなった

前田氏)コロナ禍の中、お越しいただき、ありがとうございます。オンラインを通じて徳島で参加されている方には大変申し訳ない。本来であれば徳島に行ってお話するのが正しい姿なんでしょうけど、やはりコロナ禍ということで、東京にてインターネットを介して会見とさせていただくことをおわびし、お願い申し上げます。

 まず最初にお話したいのは、私は本当に徳島市、徳島の人たち、徳島が大好きだということ。そういう中でこうした会見をするのは心苦しい気持ちがある。コロナ禍の中でどうやって阿波踊りがもう一度過去の輝きを取り戻すのか、非常に心配している。今日は お配りしている会見要旨に沿って進めさせていただく。

(前田氏、資料配付した下記の5点からなる要旨を読み上げる)

【事業体が記者に配布した主張の要旨、経緯の表】(クリックするとPDFが開きます)

記者)そもそも、いつから実行委員会と事業体は関係が疎遠になったのか。その理由はどのように考えるか。

前田氏)「疎遠になった」というか、まず2019年度の阿波踊りが終わった段階で、事務局との間で「2020年度はどんなことをすればいいんだろうか」という協議をしていた。もう一度原点に戻っていろんなことを話した方がいいんじゃないかと。桟敷の数、入場客数、バスや駐車場の利便性など、見えてきたいろんな課題をどうするのか、と実行委員会などと話をしてきた。

 しかし、昨年2月、3月でコロナが広がり、4月になって、「本当にこのままやっていいんですか」という話をした。3月の末には東京オリンピックの中止を巡る話題も出ていた。そこで、「とにかくまずは阿波踊りを開催する前提で進めてください」(徳島市)と。「経費は掛かりますよ、4月に入るとチケット販売が始まる。そこが判断のヤマになりますよ」という話はお伝えしていた。昨年4月に市長選があり、(遠藤彰良前市長が敗れ)新市長(内藤佐和子氏)が就いた。新市長は選挙公約で、「自分が実行委員長に就き、新しい阿波踊りをつくっていく」と掲げていた。

 4月の終わりには、そういった経費も含めて実行委員会がお支払いしますと。議事録にも残っているが、そう言われてわれわれも安心していた。中止が決まった後も、(コロナ下での阿波踊りの実証実験と位置付けられる)「阿波おどりネクストモデル」について協力してくれという話もあったが、実際には仕事の発注はなかった。それが昨年4月から5月頃の話だったと思う。

 今年までに事務局長(徳島市経済部長)って何度、代わったんですかね。多分(2020年5月に)横山部長に代わった後、われわれに連絡が来なくなった。「なぜ疎遠になったのか」と質問されても、われわれも全く理解できない。先方から連絡が来なくなったというのが実情。

記者)「納付金500万円を免除できない」という市の見解の理由についてはどのように受け止めているか。

前田氏)お伺いしたけど、何の返事もない。

記者)負担金についてのやりとりは横山部長と担当レベルでしていたのか。

前田氏)コロナの感染が広がっていたので、実行委員会事務局(徳島市経済部)とのやりとりの窓口は(北島町に所在し、3社共同事業体を構成する)ネオビエントに任せていた。1、2度、今年に入ってぐらいじゃないかな、徳島市に呼び出されて「納付金を払いなさい」と言われている。(ネオビエントは)「2100万円の負担はとんでもない、払えませんよ」みたいな話をした。

記者)キョードー東京は直接、徳島市の事務局とはやりとりしていないのか。

前田氏)僕自身は直接はしていない。徳島は感染状況が抑えられていたので、東京から行くのはどうなのかと。代表してネオビエントにお願いしていた。

記者)納付金500万円の負担については、納得できないという思いか。

前田氏)全然納得できない。事業機会がなくなったのに、負担金だけ求められるというのは非常に困る。また、一度払うと言った立て替え経費(開催準備費の約2100万円)をお支払いいただけないのは、筋が通らない。コロナ禍で、徳島市は国の交付金などもありながら、随分いろんな民間事業に援助されてきたように思う。なぜ阿波踊りについてだけ何の援助もないのか、筋が通る費用だけでも負担しないのか。われわれとしては納得できない。

記者)コロナについては、納付金は免除されると明記されているのか。

前田氏)「突発的な事件事象が起きた場合に、双方協議の上、免除する」と基本契約41条にある。「不可抗力による費用等の負担」についての第41条。「不可抗力の発生に起因して乙に損害、損失、増加費用が発生した場合は、乙はその内容や程度の詳細を記載した書面を持って甲に通知するものとする」。乙はわれわれで、甲が実行委員会。「甲は通知を受け取った場合、損害状況を確認した上で乙と協議を行い、不可抗力の判定や費用の負担等を決定する」。この条文を言っている。

 

「祭り」と「興行」での成功目指した

記者)経緯の一覧表に「令和3年1月12日 徳島市経済部長から、ある市議会議員と会うことを求められる」とある。市議会議員とは誰か。

前田氏)その時、横山部長は「ある市議会議員、ほらほら」という風にネオビエントに言ったそうだ。あくまで「ある市議会議員」と言っただけで、具体的な名前は出していないと思う。

記者)踊り手は運営の混乱が続くことを不安視している。徳島市を中心とした運営をどう感じているか。運営の方でも踊りを良くしたいと考えていた中で、なぜうまくいかなかったのか。

前田氏)市役所の横山さんに聞いてほしい。2019年、最初に徳島にお伺いして事業を受託した。その時点でチケットを売り悩んでいた。過去の数字をある程度見て、「これはちょっとがんばらないとまずいよね」という話を市役所や実行委員会の方たちとして、どうやったら成功に導けるのかを考えた。「成功」というのは「興行としての成功」と「地域の祭りとしての成功」と両方の意味を指している。僕自身は、街のお祭りなんで徳島市民にお祭りを返したいという思いがあった。

 それまでは興行的な色が強すぎたんじゃないかと。初年度の反省会の時に「市役所前の桟敷はもういらないんじゃないか」「無料演舞場をもう少し整備しよう」「4つある有料演舞場を2つに減らしてもいいんじゃないか」「交通規制を30分繰り上げたらどうか。演舞場や規制の問題を解消すれば、もうちょっと人が街に出てくるようになるんじゃないか」「バスが駐車場に来るのに1、2時間かかっているので、街中でバスに乗れるようにしよう」などと、いろんな改革案や改善策を考えていた。その辺までは良かったが、おととし正常化したものが、このコロナの後、なぜ、こうなってしまったのか。われわれもはっきり言って分からない。市役所に聞いてくださいというのも失礼なので、分かる範囲でお答えしようと。しかし、正直言って本当に分からない。

記者)要旨の5つ目に「損害賠償請求する」とあるが、相手は実行委員会なのか、実行委員会事務局を担っている市になるのか。

前田氏)通常、こういう実行委員会解散の場合は、清算人が1、2名いるはず。であれば、実行委員会に対してご請求申し上げる。「実行委員会は解散した」と主張されるなら、実行委員会の継続機関として市役所が認められることは明らかだ。事務局を市役所の経済部が担っていたため、市役所が継続機関と法的には理解されると思う。また、市長に権限が受け継がれていると考える。そういう法的な考えを基に、先方に請求する。徳島市の経済部か、市長か、ということになる。(徳島市役所であることは)間違いない。

記者)提訴や裁判手続きも考えているのか。

前田氏)法的なことは顧問に相談しながら決めていこうと思う。現在では、訴える、訴えないについてはまだ言えない。あんまり言うと大人げないという話になる。それはあまりしたくない。

 

実行委解散に際し、一言あってもいいのでは

記者)裁判手続きに向けて代理人弁護士等と協議中ということか。

前田氏)清算人が出てきてお話ができることが一番いいんじゃないか。われわれはまずそれを求めている。去年4月以降、実行委員会に一度も呼ばれていない。基本契約では、実行委員会がやろうとすることに、われわれは意見を言うことができるとなっている。それを考えると、「実行委を解散しようと思っている」などと、一言あってもいいのではないか。契約当事者なんだから。

記者)(要旨の5つ目にある)「不測の損害」とは具体的にどれくらいか。

前田氏)約2100万円のうちの、論理的に通る金額、実費を請求しようと思っている。ただ将来生むべき利益に対して損害が発生したのであれば、これは一度ちゃんと計算して、どの程度の利益や損益があるのかを含め、もう一度考えないといけない。どちらかと言うと、(準備費用)約2100万円の立替金(を重視している)。

記者)(要旨5つ目について)受託できなかったことで得られなかった収益はどれくらいの規模なのか。

前田氏)これは全く想定できない。まだ見積もりも何もしていない。1年目(2019年)は台風で2日間中止になり、1億円以上の赤字が出た。全体の事業費でみると、収入はチケットの売り上げと、徳島市あるいは県からの補助金、看板・広告費で、最大でも3億円ほど。チケットが売れなければその分減ってくる。そこから経費も引かれるので、そんなに大きな金額にはならない。

記者)もし、2019年度の台風がなかったら、どれくらいの収益があったのか。

前田氏)初年度は微妙だが、売上が下がり始めていたので、チャラ、もしくは利益は出ていても2、3000万円ではないか。予算上は5000万円ぐらい利益が出る見積もりをしていたが、そこまでいかなかったのではないか。

記者)「興行と祭りの両方での成功を目指した」ということだが、受託した理由は。東京の会社として何を重視したのか。

前田氏)(キョードー東京は)全国のいろんなイベントをやっている。徳島だから、大阪だから、というのは全く関係ない。2019年度の段階から、「お祭りは市民の手元に戻したい」と思い、それに応じた規模でつくり直していきたいと言っていた。会議でもそういう議論をずっとしていた。お祭りやコンサートなどは、興行的な成功と質的な成功の両方をとれるのが一番いい。しかし、必ずどちらもとれるとは限らない。ただ本来、作品やコンテンツ自体が良くないと、質的成功がないと本当の成功とは言えない。「まず、お祭り自体が質的に成功して、それからお金がついてくれば一番いい」という話はしていた。

 一部で「東京の会社が」という地元の方もいるが、われわれが徳島の事業をしてもおかしくはないし、僕は徳島大好き。おいしいものがあるし、(住民の)人柄もいいし。そんな街で仕事ができて、日本有数のコンテンツである阿波踊りに携われた。それはわれわれにとって、本当に名誉なこと。お金のことだけ考えていたら、多分やっていない。きれいごとに聞こえるかもしれないが、現実にうちはそういう会社。それを信じていただきたいと思う。

 

  市長の「新しい時代の阿波踊り」がこの結果なら、残念

記者)徳島の踊り子たちは「今年どうなるんだろう」という不安の中で動いていた。リーダーシップをとるのは内藤市長。これまでの経緯を踏まえ、市長に言いたいことは。

前田氏)今回の交渉の経緯をみていると、交渉らしい交渉がされていない。理不尽だと思う。それが内藤市長のやり方なら非常に残念。選挙公約で、「新しい時代の阿波踊りをする」と言っている。それがこういう結果なのはとても残念に思う。踊り子さんたちは本当に頑張っていて、個人的にとても応援したいと思っている。ただ、いろいろ考えると、(昨年11月にコロナ時代の阿波踊りの実証実験とされる)「阿波おどりネクストモデル」をしたけれど、本当に実証実験となったのだろうか。われわれもあの時そばにいたが、科学的なエビデンスが一つも出てきていない。客席はがらがらの状態でやったが今、東京では東宝や松竹などのお芝居は、ぴっちり50センチでお客さんを入れている。前後も約95センチ~1メートルで入れている。それでもクラスターは発生していない。

 阿波踊りではまず、客席の中での「密」を考えないといけない。その次は、踊り手さんたちの「密」。稽古中の「密」。連員は企業連に教えに行っているが、そこでクラスターが起きないかどうか。企業連でクラスターが起きると、企業活動が止まる可能性がある。そういうリスクの責任を誰が取るのか。もうひとつは、街中の「密」。あれだけの人たちが、中心街を屋台で買い物をしながら、お子さんたちも含めて踊りながら過ごす。あの「密」をどうやって避けるのかをしっかり考えないと。少なくとも、客席の「密」と踊っている人たちの「密」については多少、研究されていたが、客席の「密」を考えると、経済効率が悪くなる。その場合、税金の投入額が増えるが、それをどうしていくのか。市民としてそれでも構わないというのであればいいが、なかなか今、そういう時代ではないと思う。

 われわれも解決方法が見つかったわけではないが、冷静に分析すると3つの「密」があり、それをひとつひとつ解決していく議論を、実行委員会、市、事業体でやりたかった。それが全くできなかったのが残念だというのが本音。それ以上言うと悪口になっちゃうので、やめときます。

 

行政の継続性を無視していいのか

記者)聞いてると、市長が(内藤氏に)代わり、(実行委員会事務局からの)連絡が途絶えたとしか聞こえない。今回の(運営の民間委託の)スキームは4億3600万円の累積赤字が発覚した結果、(遠藤)前市長がつくっている。話し合いにもまともに応じない。報道でも見出しが踊っているが、「事業体外しありき」だったのではないかとも言われている。内藤市長は「勇気ある女性賞」というものを受賞したという報道もある。その市長に対して疑問を感じているようだが、「事業体外しありき」ということをどう考えるか。

前田氏)われわれにはさすがに分からない。正直、(遠藤)前市長ともほとんど挨拶もしたことがない。コンペに出て、事業受託をして、(2019年の)あのときはまず、(阿波おどり振興協会の)「総踊り」ができるかできないかの問題があった。これを山田実連長(天水連・協会理事長)と「なんとかやりましょう」と話をした。NHKにも協力してもらい、8K映像を撮影してもらった。そうやってなんとか正常化したと僕は思っている。阿波踊りをやってきた徳島新聞社の方たちともよくお話をして、広告などで協力してもらい、スタートが切れたと思う。

 元市長と前市長の政策が違うと言って、市役所による行政行為を継続しなくていいのだろうか。そんな国や市役所はどこにもないと思う。八ツ場ダム(群馬県)は中止しているが、国民的議論をした上でのこと。またダム計画は復活し、完成しようとしているが。徳島では(吉野川)可動堰のときには何十年もいろんな議論をしている。行政にとって「継続性」というのは非常に重要なキーワード。その継続性を無視するのはあっていいことなのか。行政行為を中断するのであれば議論をきちっとして行わないと、ちゃんと行政行為を行っていないということになるんじゃないか。

記者)行政行為がしっかり継続されていない。それが現状のお気持ちということなんですね。結局、市長が代わり、「前のことを消したい(前市長時代のことを否定したい)」という思惑がある、とは感じるか。

前田氏)うーん、あんまり言えないけど、感じないかと言えば、感じる方かな。どちらかと言うと。

記者)(キョード-東京は)「阿波踊りを市民の手に戻したい」という話の中で、「身の丈に合ったもの」にしようと考えていたと感じる。過去の報道を調べると、明らかに時代にそぐわなくなってきたものを、キョードー東京が手を入れて何とかしようとしていたと感じる。徳島市の中に、それを面白くないと思う人がいたという思いはあるか。

前田氏)世の中には、行政行為も含め、「既得権」というキーワードがどうしても付いてくる。「既得権」を(持っていると)感じられている方たちが、もしかすると私たちに不快感をお持ちになっていたのかな、ということは思う。しかし、直接的に聞いたことはない。うわさ話で耳にしたことはあるが。実際に、肌身でそう感じたことはない。 

記者)2019年度は、台風で赤字だった。2019年度の赤字分や納付金の扱いはどうしたのか。

前田氏)契約書にある「台風や大雨」の事象に当たる。中止を決める議論に参加した。実行委員会の幹部、当時の事務局長、私どもで議論した。2日前から「直撃しますよ」と。「風で広告の看板が飛んで、人命に悪影響が出ますよ」と。今、手配しないと間に合わないということで、看板などは2、3日前に撤去した。市民、観光客の安全を置きざりにして、公演することはできないというのが僕の判断だ。事務局長も実行委員会も合意した上で、中止した。その翌日も台風が居座った。さすがに痛かったが、諦めた。これについてはわれわれは覚悟はできている。例えば数年前に国立競技場でポール・マッカートニーのコンサートを企画した。3日分売り切れた。しかし、本人の体調で毎日のように「公演中止」となった。みなさんもご存じだと思う。

 先ほど基本契約41条(「不可抗力による費用等の負担」の条文)に触れたが、一番問題なのは、コロナは突発的な現象で普通の天災とは違うことを市役所に理解いただいていない、ということ。日本、世界の良識を市役所は覆したのかなと私は感じている。

 

中止を決めたのは実行委員会

記者)台風で中止になった2019年には赤字額をキョード-東京が負担し、納付金も払った。前回は支払って、今回支払えないのは。

前田氏)契約書には「コロナの際に負担しなさい」と書いていない。しかも、中止を決めたのは実行委員会で、当時の実行委員長は内藤市長。事業のチャンスを失ってまで、なぜわれわれが負担しないといけないのか逆に聞きたい。

記者)台風も素人からみると「不可抗力」と思える。(赤字額の負担を)台風の際は事業者が持って、コロナで持てないのはなぜか。

前田氏)台風とコロナは一緒なのか。台風については「自然災害」と別条項に書いてある。じゃあなぜ、市は他の指定管理事業について(コロナによる影響ということで)補償しているのか。コロナと台風が同じ「不可抗力」だと考える理由を、あなたに聞きたい。

記者)素人からみると、台風も避けられないものかと思う。請求となると市民の税金を使うことになる。事業をしているプロとして、予見可能性について台風とコロナの違いはあるのか、と。

前田氏)台風はある程度、(来ることが)予見できる。コロナについては世界的規模の問題。予見できた人がいたら会ってみたい。伝染病は過去にもあった、これからもあるだろう、と。そのレベルだったのではないか。

記者)台風は急に中止になるが、コロナの場合、4カ月前に中止している。予見性はあったのでは。

前田氏)われわれは「このまま継続していいですか、経費かかりますよ」と言い、(徳島市は)「お支払いします」、と。その後、(徳島市が)「はい中止、お支払いできません」というのは理屈が通らないのでは、と。会見の最初で言った通りです。 

記者)要旨の5つ目について、「上記損害の賠償を請求します」とあるのは、準備費用の約2100万円と、2021~23年度に開催していれば得られた収益ということでいいか。

前田氏)そう。

記者)(要旨の5つ目にある)「得られたであろう収益」というのは未来の損害になると思うが、こうした場合でも賠償は成立するのか。

前田氏)想定損益なので、成立すると思う。ただし、本当にそれが必要かどうかについて検討しないと。あまり大人げないことはできない。約2100万円の負担についても、信義があるものについてのみ、請求させていただく。

記者)現時点で、2021~23年度の経費が発生する準備はしていたか。

前田氏)一番問題なのは倉庫かもしれない。明確な会計年度の区切りがない。4月1日から3月31日の使用が、去年の8月に行われる阿波踊りの倉庫代だと考えている。

記者)損害賠償を求める理由について。「業務不履行がないのに一方的に契約を解除され、名誉を傷つけられた」という慰謝料の請求は考えているか。

前田氏)そこは考えていない。

 

信義の問題。話もせず、唐突に文書を出されても

記者)要旨の3つ目にある「一方的な契約解除」について、契約上問題があると考えているか。

前田氏)あると思う。契約書はもちろんだが、お互いの信義の問題なので、交渉を丁寧に重ねているのかどうかが重要。話もしない中、唐突に文書だけ出されても困る。こちらから何度も文書を出しているのに、それに対して何の答えもないのは信じられない。 

記者)要旨の4、5つ目について。具体的な算定については今後見積もりをするとのこと。いつ頃、市当局に対して賠償請求等するのか。

前田氏)具体的に、まだすぐ行動はできないと思っている。今日付で先方に手紙を出している。会見要旨と同様の趣旨の手紙を差し上げた。それに対する誠意ある返事があると期待している。なければ、法的な考え方もせざるを得ないのではないかと。昨年12月ぐらいから、われわれは随分お願いをしており、それが全くなされていないのでこうした会見に至っている。この1週間や2週間で、そうした行為が行われるとは思っていない。

記者)徳島市への通知に回答期限はあるか。

前田氏)回答期限はない。なるべく早くということでしょうか。付ければよかった。

記者) 質問が2点ある。まず1点目は実行委員会の法的性格について。市は「任意団体で市とは無関係だ」と主張しているようだ。それに対し、前田さんは「市と実行委員会が同一である」と考えると言っていた。どうしてそう考えるのか。ほかの地域でも、実際には行政が中心だが、実行委員会のような別の団体を立てていろんな人が参加し、イベントをするという形がある。その場合、団体が行政と全く無関係という主張が成り立っているのか。

 2点目はビジネス面について。先ほどから前田さんは市の対応が「理不尽」「信義則違反」とおっしゃっている。私も今までの記者経験で考えると、今回の件はかなり強引なやり方だと思う。こういうやり方が徳島でなされている。今後、ビジネスを徳島でしようとする人への悪影響はあるか。

前田氏)法的考え方の整理は、まだ全て終了していない。ただタイミングがずれていくとよくないので、現時点で(徳島市に対し)手紙はお送りし、われわれの意思をお伝えした。実行委員会の法人格をどう考えるのかについて。実態は実行委員会がほとんど開かれず、ほとんど事務局が決めていた。事務局長は徳島市経済部長なので、こちらに通知をするしか方法がない。「解散して実行委員会がなくなれば、何の責任もない」というのは世の中的に許していいのかということになる。われわれとしては筋だけは今日の記者会見で通したいと思っている。

 ビジネスが徳島でやりにくいことはない。去年、コロナが一瞬、落ち着いたときに、阿南市や阿波市などの学校で、文化庁の予算を得て朗読劇をしたことがある。職員の方たちには非常によくやっていただいた。徳島県全体で、私たちの文化事業を受けいれてくれたことに非常に感謝している。一種の福祉事業だが、スムーズにうまくやらせていただいた。こういう(徳島市の阿波踊りのような)例は、初めて経験した。いろんな仕事をしてきたが、こんなことは正直言って初めてだとお答えしておきます。

記者)今回の件で、キョードー東京が企画する公演が徳島で開催されなくなるのではと懸念する声がある。

前田氏)そういうことは絶対しない。僕は徳島が大好きだし、私どもで公演をしている米津玄師さんも徳島の出身。学校での朗読劇もやっている。そうしたことは変わらず、続けていこうと思っている。徳島の一人一人の方にご迷惑を掛けるようなことはしませんので、それはどうぞご心配なく。

 

【追記】2021/4/16 事業体が記者に配布した経緯の表を公開しました(主張要旨と合わせてPDFで読めます)