(ブルームバーグ): 東芝の指名委員会が社内の幹部を対象に行った車谷暢昭社長兼最高経営責任者(CEO)への信任調査で、「不信任」との回答が過半に達していたことが12日までに分かった。6月の定時株主総会で示す取締役選任議案に影響を与える可能性がある。事情を知る複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。

関係者らによると、指名委員会は不正会計問題が経営トップらの関与で発生したことを踏まえ、2016年から年1回、社内上層部の約120人を対象に社長に対する信任調査を実施している。調査結果は指名委員会が社長選任のための参考資料として利用している。

車谷氏に対する不信任は、19年12月の調査では1割弱だったが、今年1月の調査で2割を超えた。そのため、対象を執行役や事業部長クラスの30人弱に絞り、2月から3月にかけて再度聞き取り調査を実施した結果、不信任が半数を超えたという。結果については3月下旬に車谷氏にも伝えられている。

複数の関係者によると、不信任の割合は過去の水準と比べても群を抜いて高いことから、会社側が策定する取締役選任議案に影響を与える可能性があると述べた。少なくとも社外取締役のメンバーに車谷氏を選任する考えはないのではないかとみている。

東芝広報担当の原みどり氏は、信任調査を毎年行っていることは事実とした上で、結果については発表していないと話した。ブルームバーグが車谷氏の不信任について報じると、12日午前の取引で一時前週末比7.6%高まで上昇していた同社の株価は5.2%高まで上げ幅を縮小した。午後12時47分時点では6.5%高の4540円で取引されている。

エフィッシモの提案可決

東芝が3月18日に開いた臨時株主総会では、昨年の定時総会での取締役選任を巡る再調査などを求めるエフィッシモ・キャピタル・マネジメントの提案が可決された。エフィッシモが選任した3人の弁護士は現在調査を進めており、東芝はその行方を注視している。

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昨年の定時総会ではエフィッシモが派遣しようとした取締役候補への投票は過半に満たなかったとして否決された一方、車谷氏の賛成票も57.2%にとどまっていた。車谷氏は社長就任から2年目、CEOとしては4年目を迎えた。

東芝を巡っては、英投資会社CVCキャピタル・パートナーズが買収して非公開化する趣旨の提案をしたことが分かっている。CVCは1株当たり約5000円を提示しており、買収額は約2兆2800億円に上る。関係者の1人は、このタイミングでCVCの提案が明らかになったことについて強い違和感を感じると話した。

(関係者のコメントを加えて記事を更新します)

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