[シドニー 9日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は9日、半期の金融安定報告を公表し、国内の銀行は強固な財務態勢を築いているとしつつ、過去最低水準の金利や住宅価格上昇が過剰借り入れリスクを生み出していると指摘した。

国内住宅価格は、1軒目の住宅購入需要がけん引する形でシドニーとメルボルンの価格が過去最高となるなど、ここ数カ月で上昇している。

ただ中銀は利上げで対応しないと繰り返し強調。その代わりにマクロプルーデンス面での引き締めの可能性に言及した。

最近の住宅価格上昇を注視しているとしつつ、今のところ銀行の融資基準は「しっかり」しているとした。

報告は「資産価格の上昇を伴う緩和的な金融状況という環境下、金融セクターによる過剰なリスクテイクがないことが特に重要だ」と指摘。「たとえ各行が独自の基準を弱めなくても、楽観的な借り手がリスクテークを拡大すれば新規融資の平均的な質は悪化するだろう」とし、「そうなれば企業と家計の耐性、および金融システムを弱め、将来のショックとなるだろう」付け加えた。

とはいえ、これまでのところは野放図な融資の兆候はほとんど見られていない。

中銀は、住宅市場の強さが家計バランスシートに対する短期リスクを低下させており、「返済難に直面した場合に不動産を売却して債務を解消できるとみられる借り手の割合が拡大し、各行の潜在的な損失を減らしている」と指摘した。

銀行の不良債権も2020年3月に新型コロナウイルス流行が始まってから想定ほど増えておらず、各行の現在の引き当てバランスは将来のデフォルト(債務不履行)の影響を十分吸収できる公算が大きいとした。

国内金融システムに対するその他リスクについては、商業不動産向けエクスポージャー、特に新型コロナ流行で打撃が最も大きかったオフィスやリテールプロパティー市場を各行が注視していると指摘。銀行業界全体の総資産に占める各行の直接の商業不動産エクスポージャーの割合は約6%にすぎないものの、一部の企業融資は商業不動産によって担保されているため、実質的なエクスポージャーの割合はもっと高くなっている。

中銀はまた、サイバー攻撃リスクが高まっているとし、いずれ大手金融機関が打撃を受ける公算が大きいと警告。気候変動問題も課題だとした。

*内容を追加しました。