「パワハラ対策の相談員が、パワハラをしていた」という、看過できない事実とその軽すぎる対処が明らかになりました。舞台となったのは、厚生労働省。今から4年前の出来事です。
報道によれば、2017年に元室長補佐の部下だった男性が、上司に暴言などのパワハラにあたる行為を受けたとして20年に公務災害を申請し、3月2日付で認定されました。
上司は、職場でパワハラ対策をする相談員だったにもかかわらず、部下の男性に「つぶしてもいいのか」「死ねといったら死ぬのか」などと、公衆の面前で罵倒を繰り返しました。男性はうつ病を発症し、20年3月に退職。一方、元室長補佐は給与を1カ月間1割減額する懲戒処分がこのほど決まりました。
厚生労働省は「パワハラ防止を所管する省として誠に遺憾で反省している。職員への研修を再徹底したい」とコメントしたのに対し、被害を受けた元職員の男性は「複数の部署や窓口などに相談したが、どこも機能しなかった。退職にまで追い込まれたのに、今回の処分は軽すぎて抑止力にならず、同じような被害が出るのを防げないと思う」と話しています。
いわずもがな、厚労省は専門家とともに、長年「パワハラ対策」に取り組んできました。そこには、パワハラに悩み、傷つき、生きる力を失った人たちに関わってきた専門家たちの「パワハラをなくしたい」という強い思いが存在しました。
12年に初めてワーキンググループを設置した際には、それまで明確じゃなかったパワハラの定義を定め、6つに類型化し、報告書として発表。その後も議論を重ね、19年にやっと法制化にたどり着き、昨年6月から「パワハラ防止法」として施行されたのです。
その厚労省でのパワハラ。しかも、パワハラの相談員が、「つぶしてもいいのか」だの「死ねといったら死ぬのか」だのと部下をののしっていたとは、信じられないというか、耳を疑うといいますか、「いったい何をやってるんだ!」と開いた口がふさがりません。
いったい何のための「パワハラ相談員」だったのか。いったいなぜ、「複数の部署や窓口などに相談したが、どこも機能しなかった」のか?
先日も、厚労省の新型コロナウイルス対策で最前線に立つ厚生労働省の職員23人が、銀座で飲み会をしていたことが発覚しましたが、「パワハラ問題も他人ごとだったのでは?」と思えてなりません。
実は法制化に関して、厚労省はたたき台にはなかった「ある文言」を追加していました。
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