3都府県に「まん延防止」適用する政府方針 分科会が了承

新型コロナウイルス対策で、感染症の専門家などでつくる分科会は、来週12日から東京、京都、沖縄の3都府県に「まん延防止等重点措置」を適用する政府の方針を了承しました。政府は、9日夜開く対策本部で正式に決定することにしています。

新型コロナウイルス対策をめぐり感染症の専門家などから意見を聴く政府の「基本的対処方針分科会」が、9日午前、西村経済再生担当大臣らが出席して開かれました。

この中で、西村大臣は「全国的に新規陽性者の増加が続いている。人の流れが、3月、4月に非常に活発化していることが、大きな要因の1つだと思うが、変異株の広がりが背景にあり、極めて強い危機感をもっている」と述べました。

そのうえで東京、京都、沖縄の3都府県に「まん延防止等重点措置」を適用し、期間は来週12日から、京都と沖縄は来月5日まで、東京は来月11日までとする方針を諮りました。
また西村大臣は、3都府県の知事が決めることになる重点措置の対象地域について、東京は23区と八王子、立川、武蔵野、府中、調布、町田の6つの市とするほか、京都は京都市、沖縄は那覇市など沖縄本島の9つの市になるという見通しを示しました。

そして、ほかの地域との往来や、不要不急の外出の自粛も要請していくとしたうえで「変異株は感染力が強く、重症化するリスクがより高いことを考え、対策をさらに徹底し強化していきたい。何としても、これ以上の大きな流行にしないよう、それぞれの知事と連携しながら、全力で取り組んでいきたい」と述べました。

分科会は、こうした政府の方針について議論を行い、了承しました。

これを受けて、午後から衆参両院の議院運営委員会で報告と質疑が行われるのに続き、政府は9日夜6時から対策本部を開いて、3都府県への「重点措置」の適用を正式に決定することにしています。

これによって「重点措置」が適用されるのは、大阪、兵庫、宮城の3府県から、東京、京都、沖縄を加えた6都府県に拡大されることになります。

西村経済再生相「感染や変異株など状況みながら機動的に対応」

西村経済再生担当大臣は、分科会のあと記者団に対し「今後の対応など、さまざまな意見をいただいた。特に首都圏の埼玉、千葉、神奈川の3県について、感染状況など、さまざまな議論があった。引き続きそれぞれの知事と連携し、感染や変異株、病床の状況などをみながら機動的に対応していきたい」と述べました。

田村厚労相「病床確保するなど必要な対応進めたい」

田村厚生労働大臣は閣議のあと記者団に対し、全国的な感染状況について「関西圏を中心に増えており、特に変異株が猛烈に広がっている。東京でも継続的に感染者数は増えていて『まん延防止等重点措置』となれば、より厳しい対応を取ってもらうことになる」と述べました。

そのうえで「全国的に見ても感染が収まっているという状況ではなく、今はそれほど伸びていない地域でもいつクラスターが起き、感染者が増えるか分からないので、変異株の動向を注視しながら、病床をしっかり確保するなど必要な対応を進めたい」と述べました。

一方、高齢者へのワクチン接種が来週12日から始まることについて「医師や看護師の確保など接種体制を整えてもらえるよう、自治体と協力していきたい。2回接種したからといって安心はできず、若い人も含めて感染リスクの高い行動を避ける必要性は当分続くと思う」と述べました。

尾身会長「政府に強いメッセージを出すことをお願いした」

分科会の尾身茂会長は会合のあと報道陣の取材に応じ、政府が示した東京都と京都府、沖縄県に「まん延防止等重点措置」を適用する方針を了承したと述べました。

そのうえで「変異株の影響に対する危機感を非常に強く持っている。多くの人が『コロナ慣れ』になっているなかで、変異株を中心とした感染拡大への危機感について全年齢層に向けてしっかりと強いメッセージを出さないと、この危機を乗り越えられないのではないかということで、政府に強いメッセージを出すことをお願いした。単に基本的対処方針に書けば問題が解決するわけではない。政府は、対処方針に盛り込まれた重点検査などの対策をしっかりと実行してほしい」と強調しました。

日本医師会 釜萢敏常任理事「必要に応じ対象区域広げることも」

日本医師会の釜萢敏・常任理事は記者団に対し「1都3県のうち、東京以外の3県はどうなのかや、関西でも、和歌山や奈良をどうするかという意見があったが、国が個々の知事としっかり話をして出してきたことをまずは尊重したい。今後も必要に応じて対象区域を広げることも考えないといけないし、これまでと違う対応をしないととても乗り切れないという強い危機感を持っている」と述べました。

一方、ワクチン接種について「2回接種をしっかり順守し、数も均等に人口割りとする方式が、国民にとっていちばんよい選択なのか、もう一度考える必要がある」と政府に再検討を求める考えを示しました。

全国知事会 飯泉会長「今回の適用は適切でタイムリーな対応」

全国知事会の飯泉会長は分科会に出席したあと、記者団に対し「今回の『重点措置』の適用は、適切でタイムリーな対応だ。一方で、政府には、今後、各知事が要請の判断をしやすいように、2週間後の感染傾向がわかるようなデータなどを示してほしいと要望した。変異株により、感染のフェーズが変わり、若者の重症化が増えていることも、しっかりと呼びかけていくべきだ」と述べました。

官房長官「特に若い世代への情報発信さらに進めていきたい」

加藤官房長官は、閣議のあとの記者会見で「東京は、緊急事態宣言の解除以降、引き続き、時短要請を行っているにもかかわらず、感染者が増えており、さらなる対策の必要性が認められる。京都は、感染者数が先週に比べて今週は2倍を超えており、大阪との生活圏のつながりが大きいことから感染拡大が懸念される状況にある。沖縄は、直近1週間の陽性者数に加え、病床占有率が『ステージ4』相当となっている状況から、適用することにした」と説明しました。

そのうえで「地域の方々にご協力をいただかなければいけない。特に若い世代への情報発信については、SNSなどの手段も活用するなど、さまざまな工夫をしながら、理解を求めていく対象に届くように広報をさらに進めていきたい」と述べました。

一方、対象地域について、記者団が「例えば、駅の北と南で『重点措置』が適用される自治体とされない自治体に分かれるなど、分かりにくい状況になる場合もある」と指摘したのに対し「どこかで線を引けば、必ず、指摘されるようなことは出てくるが、どういう風に切り分けるかは、各都道府県の判断に委ねている」と述べました。

丸川五輪相「5月1~2日の沖縄の聖火リレーよく検討を」

丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣は、記者会見で「沖縄県では、『まん延防止等重点措置』の期間中の来月1日と2日に、聖火リレーがある。県の実行委員会と大会組織委員会で、そこはよく検討してほしい。おそらく、玉城知事もいろいろと考えていると思うので、調整をしっかりとお願いしたい」と述べました。

萩生田文科相「感染リスク高い活動 一時的に制限も」

萩生田文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「重点措置の地域の学校に対しては、地域の感染状況に応じて学校教育活動や部活動で感染症対策を講じてもなお感染リスクが高い活動を一時的に制限することや、家庭と連携・協力して基本的な感染症対策を徹底するため積極的な情報発信を行うなど、感染症対策を強化していただくようお願いしたい」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「効果の見極めが重要」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「誰も断定的な予測ができない中で、状況に合わせて対応していくことが重要だ。今までは、緊急事態宣言を出すか出さないかしかなかったが、特別措置法の改正で『まん延防止等重点措置』という中間的な措置もとれるようになったので、まずはその効果をしっかり見極めていくことが重要だ」と述べました。

公明 山口代表「大型連休とも重なる見込み 対応は注意深く」

公明党の山口代表は、党の参議院議員総会で「昨夜、菅総理大臣から電話があり、専門家の意見を聴いたうえで決定する予定とのことだった。期間や該当地域がいろいろなので、十分注意してそれぞれの地域と連携を密に対応していきたい。大型連休とも重なる見込みなので、連休の対応についても注意深く取り扱っていきたい」と述べました。

共産 田村政策委員長「東京 京都 沖縄で十分か危惧」

共産党の田村政策委員長は、記者会見で「東京、京都、沖縄の重点措置だけで十分なのか危惧の念を抱いている。政府は無策としか言いようがなく、私たちが求めてきている大規模検査もほとんど進んでいない。感染がまん延したのを見て、ただ時短営業を要請する対応では、国民に疲弊と諦めが広がるだけだ」と述べました。