stand.fm中川綾太郎に聞く。音声メディアハックのための「虎の巻四選」

2021/4/26
「学ぶ、創る、稼ぐ」をコンセプトとする「NewsPicks NewSchool」。校長の佐々木紀彦氏がプロジェクトリーダーを務めた「コンテンツプロデュース」では、コンテンツを自分たちの手で作る実践的な課題が課された。
今回、第二期受講生の新田ゆきが、コロナ禍で著しく躍進した音声メディアの実態を探るべくstand.fm中川綾太郎氏を取材した。
中川氏は、エンジェル投資家としての顔を持ちながら起業家として新しいカタチの音声メディアをローンチするという。動画全盛と言われる時代にあえて音声で勝負する中川氏の挑戦をインタビューする。

Clubhouseが音声メディアの競争を加速

最近、SNS業界の新勢力として急浮上した音声SNSのClubhouse。多くのインフルエンサーや芸能人が参画したこと、また、メディアでも大々的に取り上げられたこともあり、あまり音声メディアを知らなかった者たちの間でも一気に注目度が高まった。
photo by Alexander Shatov on Unsplash
それに対抗するように、Twitterは米国時間3月2日「Spaces」というライブ音声チャットルームをAndroidユーザーに開放すると発表。Instagramも「Live Rooms」機能を導入するとアナウンスした。動画メディアを代表するNetflixとYouTubeも音声メディアに参戦し、企業からの注目度も非常に高い。
そもそも音声メディアとは一体何か。どのように使えば良いのか。なぜここまで注目されているのか。実態をよく知らないままClubhouseを使っている人も多いだろう。
今回は聞きたいけどいまさら聞けない「音声メディア使いこなしのコツ」をNewSchool卒業生がヒアリング。相手は株式会社stand.fm代表取締役・共同代表の中川綾太郎氏。
なお、音声メディアには様々な種類がある。代表的なものでいうと、オーディオブック、インターネットラジオ、音声プラットフォーム、音声配信サービスやアプリなど。 stand.fmはいわゆる音声プラットフォームのジャンルに入る。
stand.fmは「誰でも、どこにいても、気軽に収録ができて、すぐに配信できる」をコンセプトにサービスを展開している。視聴者の好きなタイミングで過去の音声を聞いてもらえるよう、あえてライブ配信ではなくアーカイブ視聴に力を入れている。
中川綾太郎
株式会社stand.fm代表取締役 共同代表
2012年、株式会社ペロリを創業し、2013年から、女性向けキュレーションプラットフォームの運用を開始。2014年に株式会社DeNAによるM&Aを受け、子会社化。その後、個人投資家等を経て、2018年12月に、stand.fmをスタート。2020年8月に、YJキャピタルから、5億円の資金調達。

音声コンテンツ虎の巻:其ノ壱 どんな人が向いている?

──音声配信はどんな人に向いているのでしょうか?
中川 大前提として人が好きな方ですね。普段はやらないけど、コロナ以降時間ができて挑戦してみたという方に始まり、最近ですと芸人や話術に長けた方が多くなりました。
──stand.fmのリスナーはどんな方が多いのですか?
年齢層としては10代後半から平均的にいらっしゃいますが、コアな世代は20〜30代ですかね。stand.fmとしては、音声メディアだから声優に使って欲しいといった制限的な利用を考えていません。
できる限り広い方に配信してもらえるプラットフォームでありたいと思っています。だからリスナーにも偏りがありません。
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音声コンテンツ虎の巻:其ノ弐 人気が出るコンテンツとは?

──知名度が人気に直結しますか?
そんなことはないです。もちろん他のSNSで最初から数百万フォロワーを抱える有名な方もいらっしゃいますが、一般の方も数多く活躍しています。
例えばキャビンアテンダントをされていた方が最近すごく注目されています。当初はCAならではの美容・睡眠の話をされていましたが、そこから徐々に恋愛話が増え、今は恋愛相談が話題の中心です。
このように、元々知名度があったわけではないが、音声コンテンツを通して人気が出た方は大勢いらっしゃいます。
──人気と見た目の美しさは比例しますか?
見た目は関係ないですね。顔出しされていない方も結構います。いい声で人気が上がる可能性はなくはないですが、何よりコミュニケーションの上手さ、会話の面白さが大切です。
──配信数で人気に差が出ますか?
やはり更新頻度は重要ですね。音声は撮影と異なり、事前準備が不要で手軽に配信できます。だから頻度の高い配信が可能です。
たくさんの方が色々な投稿をされるので見つけてもらうのが大変なのですが、配信数が増えれば露出が増え、見つけてもらいやすい。さらに、配信を経験することで精度も上がっていき、ますますリスナーが増えます。そうやって好循環が生まれます。
stand.fmの場合は、たくさん配信することでおすすめ欄に表示されますので、それもファンを伸ばす上でのポイントと言えます。
──人気が高いジャンルはありますか?
ジャンルは様々ですので、これ!というものはありません。ですが、最近だと”歌ってみた”ブームはありました。
音声コンテンツは”ながら聴き”に適しているので、音楽やラジオ感覚で聞ける内容に向いています。例えば仕事をしながら、家事をしながら聴くという方も増えています。

音声コンテンツ虎の巻:其ノ参 音声で配信するメリットは?

──ズバリ音声配信のメリットとは何でしょうか?
先ほどもお話しした通り、配信の手軽さがまずは挙げられます。動画の方がいいのではないか?という声もあるのですが、使い方がそもそも違うのです。
音声は”B面"的な側面があって、単体で使うものではない。例えば、TwitterやYouTubeなど他のSNSと合わせて複合的に利用することに適しています。
YouTubeだとボツネタになったものも、音声なら気軽に配信しやすい。ちょっとしたつぶやきや考えでも、発信すればネタになります。
映像にすると大変だからという理由で徐々にユーチューバーの方がstand.fmに参画しています。それは嬉しい傾向です。
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──テストマーケティング的にも使うこともできるのでしょうか?
そうですね。例えば、アーティストの配信者でstand.fmのレター機能を使って一般の方からエピソードを募集する方がいらっしゃいます。新曲作りの参考にしているわけです。
リスナーからしたら自分のエピソードを相談でき、その上好きなアーティストの曲に自分のエピソードの要素が入る。ファンとのコミュニケーションもできるし、クリエイティブの場にもなるのです。

音声コンテンツ虎の巻:其ノ四 音声コンテンツはお金になるのか?

──ちなみに音声の配信だけでご飯を食べていける人もいるのでしょうか?
まだ課金システムをリリースしたばかりなので、数千万・数億円レベルで稼いでいる方はいないですが、stand.fmで月数十万円稼いでいる人が一定数出てきました。
ファンを超えてどうコアファンになってもらうかがマネタイズの鍵だと思います。
──音声版ユーチューバーのような方も今後現れる可能性はありますか?
コロナ以降、音声メディアは注目度が加速しました。弊社でも有料コンテンツの作成に力を入れていて、stand.fmからそのような方が出てくれると嬉しいです。

取材後記

音声技術の進歩や1G〜5Gの通信技術の発達に合わせて、音声メディアはますますの発展を見せる。日本の3年先を行くと言われているアメリカでは人気ポッドキャスターに100億円を払う時代が到来したという。

日本でも、誰しもが音声メディアを使いこなす、音声配信中心の日常が訪れるかもしれない。今から音声コンテンツを使い、配信に慣れ親しむことが日本で億万長者を目指す方法の一つかもしれない。
(取材・構成:新田ゆき、編集:菊谷 邦紘)
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