給与デジタル払い、26%の大手企業が関心を持つのはなぜか?

» 2021年04月08日 16時09分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 政府が解禁の方針をとっている「給与デジタル払い」。企業側の対応意向はどうなのだろうか。Works Human Intellingence(東京都港区、以下ワークスHI)が大手企業247社に行った調査によると、26%が関心を持っていることが分かった。

「給与のデジタル払いが解禁になった場合、利用を検討しますか」への回答(ワークスHI)

 1社は「利用予定」と回答しており、5.7%が検討中。20.6%が「これから検討予定」だとした。

 では大手企業はなぜ給与デジタル払いに関心を持つのだろうか。利用検討の目的としてトップに挙がったのが「銀行振込手数料の削減」(55.2%)だった。給与デジタル払いは、通常の銀行振り込みではなく、資金移動業者のサービスを利用して給与を支払う。PayPayやメルペイの残高として支払うイメージだ。手数料のかかる銀行振込に対して、手数料はゼロまたは少額になると見られ、コスト削減につながる可能性がある。

「給与デジタル払い」を検討する目的(ワークスHI)

 2位は「第2口座などと同様な従業員への便益」(47.8%)だった。銀行振込による給与支払いでは、振り込みコスト削減やシステム的な煩雑さから、月に1回などまとめて支払われる場合がほとんどだ。給与デジタル払いでは、多頻度少額の支払いが可能になると見られ、それを望む従業員がいた場合には対応したいと考える企業は多い。

 3位には「デジタル通貨発行元からのポイント付与による従業員への還元」(22.4%)が挙がった。資金移動業者の多くは同時に決済事業者も兼ねており、サービス利用者数拡大のため、給与デジタル払いに積極的なところも多い。また、4位には「パート・アルバイトなどの人材確保」(15.7%)、「給与前払いのしやすさ」(6%)などが挙がった。

 ただし、対象とする従業員は限定して考えている企業も多い。「利用を検討する場合、想定している利用対象は」という質問に対し、「全従業員」と回答したのは27.4%にとどまった。「国内口座を所有していない外国籍社員」「アルバイトから導入」といったコメントがあり、利用対象を絞るという声もあった。

 徐々に期待が高まる給与デジタル払いだが、企業側が考える障壁は複数にのぼる。最も多かったのは「システムインフラの投資コスト」(63.2%)で、「担当者の対応工数」(60%)がそれに続いた。また、「取引銀行との関係性」(45.9%)や「労働組合の理解」(35.1%)を挙げる声もあった。

「給与デジタル払い」を実施する場合に考えられる障壁(ワークスHI)

 ワークスHIの伊藤裕之シニアマネージャーは、給与デジタル払いについて「興味に値する制度ではあるが、制度自体が不透明な部分もあり、実現に向けて早急に検討する段階ではない」とコメント。ただし、給与デジタル払いは手数料削減や従業員への福利厚生以外にも、「社会の変化や多様性を理解し重視するという企業メッセージを内外に与える効果がある」とし、結果的に採用や従業員のエンゲージメントにプラスになるとした。

 本調査は2月15日から3月5日にかけて、ワークスHIの統合人事システム「COMPANY」を利用する顧客である国内大手法人247社に対して、インターネットを使って行われた。

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