(ブルームバーグ):

米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイが8日、3本立ての円建て社債を起債した。関係者によると発行総額は1600億円となった。

債券格付けはムーディーズ・インベスターズ・サービスから「Aa2」、S&Pグローバル・レーティングから「AA」を取得する。主幹事はBofAセキュリティーズとJPモルガン証券、みずほ証券が務めた。

スプレッドは前回債と比べると大幅に縮小した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた世界的な金融緩和で円建て社債の発行スプレッドが縮小傾向にあることが反映された。もっとも国内では、ムーディーズによる格付けがバークシャーより6段階低い中国電力が2日に10年債を利率0.30%で起債しており、信用力対比での投資妙味はあると言える。

ある投資家は10年債で利率0.4%台だとやや物足りないが、国内債に比べれば検討しやすい水準だと、投資判断などは非公表だとして匿名を条件にコメントした。みずほ証券デットシンジケーション部の村松謙旨インターナショナル円・シンジケートヘッドは、バークシャーは国内発行体の社債と比べ格付け対比のスプレッドが厚く、「ドル債と比較した際にもスプレッドが厚い」と指摘した。

日本の商社に投資

バークシャーについては、昨年8月に日本の5大総合商社の株式をそれぞれ5%超まで取得したことが話題となった。長期保有を目的としており、価格次第で保有比率を最大9.9%まで高める可能性があるとしていた。

ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、円安が一服していることもあり、円での調達は昨年の日本株投資の「第2弾という受け止めに当然なる」と話す。仮に1600億円を全額投資しても株式相場への影響は限られるとしながらも、「どのセクターを買うのか、その理由や何に着目しているのかは他の投資家の参考にもなり、非常に関心が高い」と述べた。

バークシャーは今回債の発行の目的を償還したドル建て債の借り換えを含めた一般運転資金の調達としているが、詳細は公表していない。円債発行の理由や詳しい資金使途について、現時点でバークシャーからコメントを得られていない。

社債投資家にとっては資金使途が分かりづらいことは懸念材料でもあった。ある銀行の投資家は、バークシャーは投資会社のイメージで日本株を買い増すとの臆測も出やすく、明確な使い道が分からないままでは社債を買う合理的な理由を説明しにくいと話した。

(第6段落に市場関係者のコメントを追加します)

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