2021/4/10

金融界に走ったアルケゴスショック、その舞台裏

ビル・ホワン氏から得ていた手数料を享受していた取引銀行はその後、アルケゴスの投資規模や手元資金の少なさに驚がくすることになる
INDEX
  • 電話会議
  • 「大混乱」の始まり
  • 再出発
  • 急落の時
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電話会議

元ヘッジファンド・トレーダー、ビル・ホワン氏(57)は窮地に立たされた。
同氏の個人資産を管理するファミリーオフィス「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」は3月25日、世界有数の投資銀数行の幹部に対し、電話会議の開催を申し入れた。
そこで協議する緊急テーマは、同社がごく少数の主要銘柄に多額の資金を投じ、損失が大きく膨れ上がってしまった問題だった。
ニューヨーク7番街のこのビルにアルケゴス・キャピタルが拠点を置いていたとされる(写真:ロイター/アフロ)
いわゆる「トータル・リターン・スワップ」──銀行が手数料と引き換えに、顧客の代わりに自己資金の数倍の取引を行うデリバティブ(金融派生商品)の一種──がその賭けの一部に用いられたため、ホワン氏による複数企業への膨大なエクスポージャーが不明瞭になっていた。