【山口周×遠山正道】「プロジェクトを仕掛ける側」になるために必要なこと

2021/4/10
NewsPicks NewSchoolでは2021年4月から「新しい時代の仕事との向き合い方」を考える2つのプロジェクトが始動する。
ひとつは、遠山正道氏による「1/1の人生デザイン― 私欲を社会につなぐためのスマイルズ的メソッド ―」プロジェクト。
もう一つは山口周氏による「ビジョンクエスト〜「ビジネスの未来」創出〜」プロジェクト。
開講に先立ち、既存ビジネスに対する課題感やこれからの生き方について独自のビジョンを掲げる両氏による対談が実現した。

「フリーのサラリーマン」

──お二人はこれからの働き方はどうなっていくと思われますか?
山口 近い将来、多くの人が複数の会社で働いたりプロジェクトベースで集まって仕事したりするスタイルが増えていくのではないでしょうか。
極論として、必ずしも利益を得ることだけがプロジェクトでなくてもいいなとも思っています。例えば、みんなでお金を出し合って花火を打ち上げて終わり!というのも1つのプロジェクトになるわけです。
そうやって色んなプロジェクトを仕掛けることが常態化していくと、前回遠山さんがお話しされていた「プロジェクトを仕掛けていく人」もたくさん育っていくし、いろんなプロジェクトに呼ばれる人が増えていく。
その方が、人生が楽しくなると思うし、安定もするのではないでしょうか。大企業1社に勤めていて、世の中の流れが変わって会社が潰れてしまうなんてことが起きても、他のコミュニティや人脈があったり、仕事があれば生き残れますから。
複数の小さなプロジェクトを持っている働き方って、一見不安定なようで、実は本質的には安定しているんです。
山口 周
独立研究者/著作家/パブリックスピーカー
1970年東京都生まれ。電通、BCGなどで戦略策定、文化政策、組織開発等に従事。著書に『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』『ニュータイプの時代』『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『武器になる哲学』など。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修士課程修了。株式会社中川政七商店社外取締役、株式会社モバイルファクトリー社外取締役。
遠山 私もその話に全く同意で、最近「フリーのサラリーマン」という言葉を使おうかなと思っていて。
山口 またうまいことおっしゃいますね(笑)
遠山 「サラリーマン」とは、もちろん今でいえば「ビジネスパーソン」ってことなんですけど、あえて” サラリーマン”って言ってみることで伝わるべき人に伝えたい。サラリーマンもフリーの時代で、何社かと契約しながら働くことができると面白いなと思っています。
それで、プロジェクトを自分で仕掛けていく。本当はそうやって個人で経験もネットワークも蓄えた人こそ、会社としても有難い人材でもあるはずですよね。
山口 そうですね。現実的な話をすると、会社に勤めている人ひとりがフルタイムの時間全てで価値を出ているわけではないですから、例えばその人が実際は3分の1くらいのコミットで結果を出しているとすると、複数契約やプロジェクトベースで一緒に仕事をしていく方が双方にとって良いと思うんです。
遠山 本当にそう思います。
遠山 正道
スマイルズ代表取締役社長/スープストックトーキョー代表取締役会長/The Chain Museum共同創業CEO
1962年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年株式会社スマイルズを設立、代表取締役社長に就任。現在、「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイ専門店「giraffe」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファミリーレストラン「100本のスプーン」、海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」を展開。「生活価値の拡充」を企業理念に掲げ、既成概念や業界の枠にとらわれず、現代の新しい生活の在り方を提案している。著書に『成功することを決めた』、『やりたいことをやるビジネスモデル-PASS THE BATONの軌跡』。

とにかく実践。最後は美意識を

山口 そういう意味でも、いかにプロジェクトを仕掛けるか、呼ばれるかどうかで人生の楽しさが変わってきますね。こうした働き方を実現できる人になるためには、何より実践が大事です。
僕は結構臆病なタイプなので、最近になってやっと少しずつ自分から何か働きかけるってことができるようになりました。やってみてわかったのは、これにはある種のコツが存在するということ。コツを体得すると意外となんとかなるということを知りました。
例えば、立ち上げる段階でチームの座組みを考えて自分の得意なことや立ち位置を決めておくことも重要です。僕はオッチョコチョイなところがあるので、何かやるとき、必ず地に足をつけて具体化してくれる人、助けてくれる人と一緒に始めます。
いないと途中で空中分解してしまったりするので。そういった経験そのものが大きな財産になっていくので、実際にプロジェクトを立ち上げて経験するきっかけとして講座を活用してもらえたらいいなと思いますね。
遠山 この仕掛ける対象って、仕事に限らなくて良いですよね。今まで私もなんとなく全部仕事にしてきてしまったけれど、例えば引っ越しとか、旅とか、パートナーを見つけるとか、新しいコミュニティーを持つとかそういうことでも良いなと。
いろんな価値やアイデアを世の中に表明していくことは、必ずしも仕事の形でなくていい。
そうやって自分自身の心と体に嘘を付かず、人生を楽しめる体質になるとその人はどんどん魅力的になっていく。
加えて、一緒に組んだ相手との関係性が深くなったり、転じて仕事として呼ばれたプロジェクトでも良い効果を発揮したり......そんな世の中になってくると思います。
── 仕事もプライベートも入り混じって発展していくスタイルですね。プロジェクトの紹介文でも書かれている「公私同根」という遠山さんのキーワードが素敵だと思いました。
遠山 これはスープストックトーキョーを始めるときのプレゼンで「それは公私混同じゃないかね?」って言われそうな気がしたので、その前に編み出した言葉でした。
仕事だけじゃなくて、生きがいであったり、自分の中の火種であったりを、エネルギーにしていけるといいと思って使いました。
会社のプロジェクトを自分のモチベーションに生かすのはすごく良いと思っていて、そこから「それ面白そうだね」とか「それを仕事に置き換えたらどう?」と、会社に言ってもらえる人を増やしていきたいですね。
──山口さんの著書に登場する「未来のためにいまを手段化する」インストルメンタルなものではなく、「この瞬間の愉悦と充実を追求して生きる」コンサマトリーなものに経済を転換していくべきという提案とも通じそうですね。
山口 インストルメンタルは「良い未来のために今は我慢しなさい」というようなことで、コンサマトリーはその逆で「今がすべて・今を充実させる」という考え方です。ビジネスや勉強って、結構インストルメンタルなことが多いのではないでしょうか。
でも、もうそんな時代は終わったと僕は思っています。これからは永遠に続く「今」がずっと循環すると考え、とにかく「今を生きる」意識でいることが大切だと考えています。
将来のために「今を生きていない」ってもったいないですよね。今を諦めずに生きませんか?と、提案したい。
遠山 まさに「1/1(1分の1)の人生」に通じる考えですね。
山口 そうですね。
── そんな山口さんは今、心と体に嘘をついていない状態なんですか?
山口 全くではないかもしれませんが、インストルメンタルな仕事はしないようにしていますね。僕はとにかく「つまらない」のが嫌なんですよ。
つまらない状態でいると駄目になってしまうので、面白いことを常に探しています。引っ越しもプロジェクトだというお話がありましたが、つまらない状態から抜け出すには「極端な引っ越し」をするのは一つの手だなと思っています。
最近面白くなくなっているなと思ったら、大胆に引っ越しちゃう。ガラッと環境を変えて暮らしてみるって面白いものです。
遠山 面白いね!
山口 こういうのも、みんなプロジェクトですね。地方に行って、1カ月10万円くらいで借りられる物件でアトリエを作るとなんていうのも良いかもしれないですね。
──ある意味、ベンチャーもそういうものかもしれませんね。
山口 最近宇宙ビジネスをやられている方と話していたんですが、宇宙ビジネスってどうやって利益を出すのか尋ねると「山口さん宇宙ビジネスは儲からないです。本当に全然儲からないんです!!」と。
これって、子供がロケット花火を好きで打ち上げるのと同じで、純粋にやりたいからやる!なんです。
それで、仲間を募って資金調達して実現させる。宇宙ビジネスの本質ってそれだなと思いました。面白い話ですよね。
──そういったプロジェクトを仕掛ける側になると、ビジョンの語り方など、いかに魅力的に伝えられるよう描くかが大切そうですね。
山口 そうですね。ビジョンもそうだし、あと人格や人望みたいなものも大事だと思います。
信じて応援される人であること。だからプロジェクトを作ってそこに人を集められる人って、最後のところで行動面における美意識が必要だと僕は考えています。
そんな意識を持ちながら今回のプロジェクトでも参加者の方と一緒に何か作り出していけたらいいですよね。
遠山 周さんのプロジェクトと私のプロジェクトを1回くらい一緒にやっても楽しそうですね。受講生みんなで交流して何か考えるとか。
山口 楽しそうですね!ぜひやりましょう!
── それでは最後に改めて、お二人のプロジェクトにどんな方に参加していただきたいか伺えますか?
遠山 そうですね。今話していたように私もプロジェクトを立ち上げて楽しませて欲しいというか、私を担いだプロジェクトもどんどん考えてみて欲しいので、受講されるみなさんに期待しているし、楽しみにしています。
先日、以前開催したNewsPicksの私のゼミを受講してくれた方と久々にお会いしてお話ししましたよ。そういう関係が続いていくのもいいですよね。
山口 自分から飛び込める人がいいですね。人が何かしているのを見て羨ましがるのではなく、せっかくなら自分もやってみる。とにかく行動してみるのが良いですよ。
それがプラスになるかよくわからないとか、リターンが回収できるかわからないと悩んで実行に移せない人が多いんだけど、自分に揺さぶりをかけることがまずは大事なんです。
それで、駄目だったらまた元に戻ればいいだけですから。悩んでる時間が一番無駄です。
悩んでる間に飛び込むと必ず得るものはある。それをやっていると、人生は必ず動き始めるので、非予定調和的に動かす!ということをぜひやってみて欲しいですね。
(構成・執筆:小俣荘子、撮影:遠藤素子)
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山口周氏による「ビジョンクエスト 〜「ビジネスの未来」創出〜」プロジェクトをお届けします。

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