[東京 7日 ロイター] - 英プライベートエクイティ(PE)企業のCVCキャピタル・パートナーズが東芝に買収提案したことが分かった。買収額は2兆円超とみられる。東芝は7日、「昨日、初期提案を受領した」とコメントを発表。詳細情報を求め、慎重に検討するとしている。加藤勝信官房長官は、重要なインフラに関わる事業を行う日本企業の買収は、外為法に基づく外資規制の対象になるとの認識を示した。

関係筋によると、CVCは東芝と今後、条件交渉を始め、当局を含めて合意できれば株式公開買い付け(TOB)を通じた非公開化を検討する。東芝はアクティビストとの対立が続いており、非公開化を通じて経営判断を速める狙いがあるもよう。

東芝の時価総額は6日時点で約1兆7400億円。CVCは足元の株価の3割程度の上乗せ幅を提示し、買収額は2兆円を超えるとみられる。

国内メディアによると、車谷暢昭社長兼最高経営責任者(CEO)は7日朝、記者団に対し「提案は来ている。これから取締役会で議論する」と話した。ライトストリーム・リサーチのアナリスト、ミオ・カトウ氏は、CVCが初期提案で提示したとみられる価格は低いと見ており「投資家は、より高い価格を求めることになるだろう」と指摘している。

車谷CEOは元三井住友銀行副頭取で、18年に東芝の会長兼CEOに就任。CVCの日本法人で会長兼共同代表も歴任した。

加藤官房長官は7日午前、この買収提案に関連して「外為法に基づく手続きが必要になる」との認識を示し、「海外投資家の属性に関わらず、わが国の経済、社会にとって重要な事業については事業を安定的に継続できる経営体制が構築、維持されることが重要と考えている」と語った。

東芝は、不正会計問題や米原発子会社の巨額損失で経営危機に陥ったことを受けて17年に6000億円の第三者割当増資を実施し、アクティビストの保有比率が高まった。アクティビストとは、株主総会の運営などの企業統治(コーポレートガバナンス)や資本政策を巡り意見が対立していた。

東芝は3月、筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネジメントなどの要請を受けて臨時株主総会を開き、昨年7月に開催した定時総会の運営の適正性について独立した調査を求める株主提案を可決した。

調査の結果次第では、車谷CEOらへの「圧力」が強まりかねないとの観測も出ている。昨年の総会では、車谷CEOの再任への賛成率は約57%に低下していた。

ライトストリームのカトウ氏は「経営陣は、自分たちの立場を維持してくれる友好的な株主を得たいだろう」と指摘している。

東芝株は7日、この報道を受けて買いが殺到し、4530円のストップ高水準のまま終了した。

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