2021/4/7

【必見】シリコンバレーで最も成功した「子育て法」

NewsPicks 編集委員(ニューヨーク支局)
その教育法で育てられた3人の娘は、世界的に有名になった。
長女は、動画サービス「YouTube」のCEO。次女は、カルフォルニア大学医学部の准教授。三女は、ユニコーン企業であるバイオベンチャー「23andMe」の創業者となった。
エスター・ウォジスキーは、そんな3人の母親だ。シリコンバレーでは有名な教師でもあり、誰もが知っている一流企業たちが、そのエッセンスを学ぼうと詰めかける。
どうすれば、子どもたちは自由で、独立して、創造的に育つのか。
NewsPicksは、その秘密を聞くべくエスター本人にインタビューした。

誰もが知ってる「3姉妹」

エスターが唱える教育法「TRICK」とは、信頼(Trust)、尊重(Respect)、自立(Independence)、協力(Collaboration)、優しさ(Kind)の頭文字だ。
それは富裕層によるエリート教育だったり、強烈なスパルタ教育でもない。シンプルに、子どもの自立を促す。
まずは3姉妹から見た、母親像について本から抜粋しよう。
エスター・ウォジスキー氏(写真:本人提供)
(以下、3姉妹のメッセージ抜粋)  今、わたしたちが何よりありがたいと感じているのは、自立できたことだ。父と母はわたしたちを信頼して、幼いころから責任を与えてくれた。
自立するということは、経済的に自由になるということでもある。経済的に自由であるということは、お金持ちとは違う。
子どものころからちょっとした商売で、お金を稼ぐことも教わった。わたしたちは、お隣さんの庭にたわわに実っているレモンを何年も売り続け、ご近所で「レモン娘」と呼ばれていた。
家族で外食しても、飲み物や前菜は決して注文しなかった。スーパーマーケットで買い物する前には必ず新聞広告に目を通し、クーポン券を切り取っていた。
わたしたちが小学校に入ると、母は複利計算表を見せてくれた。わたしたちは必死になって、毎年少なくとも数千ドルは貯金するようになった。
(写真:gwmullis / Getty Images)
10代になると、運転免許を取る前に、クレジットカードと小切手帳をもらい、毎月きちんとクレジットカード代金を支払うことや小切手帳で入出金を管理することを教わった。
わたしたち家族が何よりも優先していたのは旅行と教育で、そのほかにお金は使わなかった (父は同じサンダルを、60年も履き続けている)。
エスターは、ニューヨークの貧しいユダヤ系移民(ロシア出身)の家に生まれた。父は画家を目指したが、墓石加工の労働者として働き、威圧的だった
幼い頃、貧しさや病院の対応により、クスリを誤飲した弟を失った。伝統的なユダヤ教に基づいて、女性に高等教育はいらないと教えられた。
そうした幼少期の記憶と向き合い、エスターは自分の娘が生まれた時、同じような教育をしないと誓ったという。

生後12カ月で「泳げた」

わたしの子育てのゴールは、できるだけ早く、3人の娘を独立独歩の人間に育てたかった。それは一種の「実験」でした。
いつも疑問に思ったのは、何歳になったら、子どもは様々な技術(喋る、走る、泳ぐ、楽器を弾くなど)が身に付くかということ。これは、ゲームのようなものでした。
この実験がうまくいって、彼女たちはスイスイと泳げるようになりました。
次女のジャネットは、生後12カ月でプールで泳げるようになりました。これは、一般的には、あまりにも早すぎると思われるでしょう。
(写真:Thanasis Zovoilis / Getty Images)
ウォジスキー家は、あらゆる体験に自分で挑戦できる、いわば経験の「食べ放題ビュッフェ」でした。もし気に入らなければ、やらなくていい。