【イスタンブール=佐藤貴生】国際海運の要衝、エジプトのスエズ運河で「正栄汽船」(愛媛県今治市)が所有する大型コンテナ船が座礁した事故について、エジプト運河庁のラビア長官は27日、記者会見し、321隻が足止めされていると述べた。損害額は1日当たり推計96億ドル(約1兆500億円)で国際物流への影響が拡大している。
コンテナ船は台湾の「長栄海運」が運航する「エバーギブン」。オランダ・ロッテルダムに向かっていた23日に座礁した。全長400メートル、幅59メートルと世界最大規模の大型船で、約1万8千個のコンテナを積載している。油漏れはないもよう。
沿岸に乗り上げた船首の周囲の土砂は重機で約2万トンが除去された。満潮になる27日が船体移動の好機だとしてタグボート14隻で移動を試みたが、離礁には至らなかった。運河庁はさらにタグボートを投入して今週前半の事態打開を目指す。船体を軽くするため船首付近のコンテナ約600個を下ろすことも検討しているが、その場合、影響の長期化は避けられなくなる。
アジアと欧州を最短距離で結ぶスエズ運河は海上輸送物資の約12%が通る大動脈。通航不能の状態が続けば、スエズ運河より8日ほど日数を要するアフリカ・喜望峰回りのルートを取らざるを得ず、国際海運の遅れは必至。燃料費もかさむことになる。
長官は会見で船のかじが動くことを確認したとし、外国の支援に謝意を述べたが、「技術的問題や人的ミスが事故原因の可能性がある」として調査する方針を示した。正栄汽船は25日、「荒天に遭遇して座礁した」と主張している。
スエズ運河は1869年に開通。液化天然ガス(LNG)やLPガス、自動車などの工業部品を運ぶ船が年約2万隻利用している。