(ブルームバーグ): 中国人民銀行(中央銀行)デジタル通貨研究所の穆長春所長は25日、今後導入されるデジタル人民元はアント・グループの「アリペイ(支付宝)」やテンセント・ホールディングス(騰訊)の「ウィーチャットペイ(微信支付)」などのプラットフォームと併存するとの見通しを示した。

穆氏は国際決済銀行(BIS)主催のパネル討論会で、人民銀がデジタル元を開発している主な理由の1つとして、国内モバイル決済市場の計98%を占めるアリペイやウィーチャットペイに対するバックアップ機能を挙げた。

同氏は「こうしたサービスに金融面、あるいは技術的問題が起きた場合、中国金融システムの安定に悪影響をもたらす恐れがある」と指摘。小口決済システムへのバックアップなどを提供するため、人民銀はデジタル通貨サービスを強化・提供する必要があると述べた。

また、穆氏はビットコインなど仮想通貨の人気が中国の資本勘定管理の脅威になったことを受けて、通貨主権を守ることもデジタル元の発行を目指す理由の1つだと説明した。

人民銀は既に国内の一部でデジタル元の実証試験を重ねており、デジタル通貨を発行する最初の主要中銀となる可能性がある。ブルームバーグ・インテリジェンスによると、デジタル元はアリペイとウィーチャットペイから徐々にモバイル決済市場でシェアを奪い、2025年には約9%のシェアを握ると見込まれている。

穆氏は市場を重視した形でデジタル元を展開し、紙幣やモバイル決済プラットフォームと併存することになると話した。

原題:China Digital Yuan Will Co-Exist With Alipay, WeChat, PBOC Says(抜粋)

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