マスコミが伝えない「集団免疫」の“本当の意味”…ワクチン接種で流行は収まるのか?

集団免疫と収束について考えよう

緊急事態宣言が今月21日に解除された。今後の感染拡大をどう抑えていくか、期待が高まっているのがワクチンだろう。予防接種は新型コロナウイルス感染症対策にとって明確なゲームチェンジャーであり、最終的には収束へ導いてくれ得るものだ。現在使用されはじめているmRNAワクチンの直接的効果は素晴らしいものであるという知見も出揃いつつある。ではまもなく終息に向かうのか、その答えは「NO」だ。

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もちろん高齢者の重症患者が顕著に減るなど、社会的な喧騒は徐々におさまってくるものと期待している。ただ、高齢者の7割から8割が予防接種を終えたからと言って、緊急事態宣言のような措置を講じなくてもよい世にすぐ戻ることは考え難い。なぜそう考えるのか。その意味を知るためには予防接種によって得られる「集団免疫」を説明する必要がある。

実は知らない…「集団免疫」のホント

集団免疫」は、予防接種を高い接種率で実施したり、自然感染で免疫を得た者の比率が人口内で高くなったりすると、集団そのものが感染から守られるというものを指す。私が専門とする感染症疫学に特異的な考え方で、集団のサイエンスにしか見られないコンセプトだ。

高い接種率を達成することを通じて感染症を制圧する予防接種政策の中で最も重要な拠り所であると言っても過言ではない。

なぜ免疫を得た者の比率が高くなると集団そのものが感染から防がれるのか。例えば予防接種の割合が20%との集団と80%の集団があるとする。この時、自分と自分の大切な人を感染から守るためにどちらの集団に住みたいですか、と問われればどう考えるだろう。

もちろん80%の集団を選ぶと思う。周囲が予防接種者で固められているため、自身の感染を防ぐことができる、ということが直感的にわかる。これが集団免疫の礎になる考え方だ。

ヒトからヒトへ直接伝播する感染症では自分が感染するかどうか、という感染の「リスク(確率)」が他のヒトから独立ではない。予防接種が接種者自身の恩恵だけでなく、他者にとっても感染機会の減少に繋がるのだ。

 

ちなみに、歴史上で「集団免疫」の考え方を最初に提唱したスイス人医師はこのことをコミュニティの火事の延焼に例えた。藁ぶき屋根の家が多く密集した社会では火事が起こると延焼しやすいが、コンクリート造りの社会は火事に強い。だから、「社会全体でコンクリート造りの家を増やして火事に強くなろう」という例えをしつつ、当時、天然痘の予防接種の有効性を訴えた。

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