金属加工B2Bプラットフォーム「Mitsuri」運営、シリーズAで約4.1億円を調達——国内金属加工会社の約1%が利用、東南アジア展開も

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「Mitsuri」
Image credit: Catallaxy

金属加工の B2B プラットフォーム「Mitsuri(ミツリ)」を運営する Catallaxy(カタラクシー)は22日、シリーズ A ラウンドで約4.1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、インキュベイトファンド、SMBC ベンチャーキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル(東証:8462)、長瀬産業(東証:8012)、シンガポールの政府系投資会社 Temasek Holdings 傘下のプライベート・エクイティ・ファンド Pavilion Capital、名前非開示のエンジェル投資家。

これは Catallaxy にとっては、昨年3月に実施したプレシリーズ A ラウンド(約3.25億円を調達)に続くものだ。インキュベイトファンド、SMBC ベンチャーキャピタルはプレシリーズ A ラウンドに参加しており、今回がフォローオンでの出資となる。

Catallaxy 創業者兼代表取締役 大石裕明氏
Image credit: Catallaxy

Catallaxy は、キングソフト(金山軟件)で Qihoo 360(奇虎360)向けのプログラムを務めていた大石裕明氏が2015年に創業。実家の建設会社の web サイト作成を請け負ったことがきっかけとなり、2018年に製造業紹介メディア「Fabit」と金属加工取引プラットフォーム「Mitsuri」を立ち上げた。実家の建設会社は金属部品の商社的な機能も有していたため、大石氏は金属加工する職人の仕事ぶりに接する機会も多かったという。

金属加工の現場では、職人が手作業で曲げ加工したり、削り出したりする以外に、NC 工作機械が利用されていることが多い。NC 工作機械とは素材に対する工具の順番や加工に必要な作業工程を数値情報で入力するもので、危険が伴う加工を自動化することで、安全性の向上や業務効率の改善が見込める。しかし、実際にこの NC 工作機械を完全に使いこなせている職人は多くなく、大石氏は製造業のソフトウェア化の必要を痛感し、Mitsuri を開発することとなった。

大手メーカーなどが、大量生産ではなく一点もの(試作品の部品や、量産品ではない機械の部品)を必要とする際、町工場を中心とした金属加工会社に発注することが多い。全国に3万社存在する金属加工会社のうち約1%に相当する300社が Mitsuri を利用しており、そうした加工会社は Mitsuri を通じて発注の相談や見積依頼を受けることができる。依頼主にとっては加工内容に応じた工場に相見積もりを簡単に取ることができ、また、加工会社にとっては正確な情報を得て見積・受注に臨めるメリットがある。

Mitsuri では、金属加工会社の仕事のクオリティは、品質・納期・価格・サービスの軸で5段階で評価され、一定以上、低い評価が続いた場合はプラットフォーム上から排除される。依頼主に部品の図面の用意がない場合は、Catallaxy が設計支援を提供することもできる。取引の際のお金のやリとりは、依頼主と受注する金属加工会社の間で、Catallaxy はエスクロー的な立ち回りをするため、双方の間で初めての取引であっても不安要素が軽減される。

Catallaxy の社員数は現在22名。Mitsuri 上で取引される受発注は2019年に30億円を超え、発注社数は10,000社(2020年9月現在)に達した。同社では今後調達した資金を使い、さらなる金属加工業界の上流工程・下流工程両面のソフトウェア化を図る計画だ。Pavilion Capital が投資家に加わったことからも推定できるが、同様の金属加工需要が高い東南アジアでのプレゼンスも確保したいとしている。

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