[東京 22日 ロイター] - ルネサスエレクトロニクスの半導体工場の火災による生産停止を受け、トヨタ自動車など自動車メーカー各社は22日、「状況を精査中」とし、生産への影響などの確認作業に追われている。車載用半導体は需要急増や米中貿易摩擦などで世界的に供給が不足しており、すでに減産に追い込まれているメーカーもある。火災で需給逼迫に拍車がかかり、生産への影響が半年に及ぶ可能性があるとの見方もある。

車載用半導体を巡っては、米テキサス州で2月中旬に大寒波の影響で停電が発生し、サムスン電子やオランダのNXPセミコンダクターズ、独インフィニオン・テクノロジーズなどの車載用半導体工場が操業を停止し、需給逼迫に追い打ちをかけた。

トヨタのほか、日産自動車、ホンダ、マツダ、SUBARUなど多くの自動車メーカーが現在、状況を「確認中」。ある自動車メーカー関係者は「最悪のタイミングでの火災。通常ならなんとかなるかもしれないが、世界的な不足で融通しにくくなっている」と指摘し、今後の生産への影響に懸念を示した。

トヨタは半導体の在庫を1─4カ月程度保有しているが、東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリスト(自動車業界担当)は「そのトヨタも4月、5月の生産は非常に不安定になると思う。ホンダ、日産、他のメーカーも総じて状況は苦しくなるだろう」との見方を示した。

杉浦氏はまた「年度を通して挽回生産する可能性はあるとは思うが、少なくとも上半期は当初見ていた計画に対して1―2割ぐらい不足してしまうのでは」と懸念する。ルネサスは1カ月での生産再開を目指しているが、「おそらく2ー3カ月、下手をすれば半年は影響が続きそう」とみている。

半導体業界に詳しい英調査会社オムディアの南川明シニアディレクターも、完全復旧には「3カ月、下手すると半年かかる場合もある」との見方だ。被災したラインでは主に自動車の走行を制御する「マイコン」と呼ばれる半導体を生産しているが、南川氏は「各社のマイコンは仕様もスペックも違う。右から左へとは変えられない」と指摘。代替生産も「簡単ではない」と話す。

火災は那珂工場(茨城県ひたちなか市)で19日午前3時前に発生し、午前8時過ぎに鎮火を確認したが、先端品を扱う300ミリラインのめっき装置の2%に当たる11台が焼損した。

同工場は2011年の東日本大震災でも被災し、約3カ月間の操業停止を余儀なくされ、自動車生産に大打撃となった。南川氏は「震災時に比べて工場の被害は軽微だと思うが、当時はそれほど(半導体が)足りない時期ではなかった。今は足りない時期が3─4カ月続いた中で起きており、不足に拍車がかかるだろう」とみている。

(白木真紀、平田紀之、山光瑛美、ティム・ケリー)