2021/3/30

オンラインとリアルのハイブリッドな働き方に最適なワークプレイスとは

NewsPicks, Inc. Brand Design Senior Editor
 コロナ禍によってテレワークが推奨され、ワークスタイルは大きく変化した。場所や移動の制約から解放された一方、働く環境として十分とは言えない在宅勤務によって疲れを感じている人も増えている。
 多くの企業がオフィス環境の変化へ迅速に対応することが求められているが、「働く人が仕事する場を主体的に選ぶ」という新たな価値観も生まれた。
 思考や集中力を高め、質の良いフロー状態に導き、社内外で闊達なコミュニケーションも取りやすいワークプレイスにはどういった要素が必要なのか。
 三井不動産の法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」は、2020年から新サービス「ワークスタイリングSOLO」や、三井不動産提携ホテルの個室ワークスペースを提供開始している。
 ジャパン・インフラ・ウェイマーク代表取締役社長の柴田巧氏、法政大学キャリアデザイン学部教授の田中研之輔氏、WAmazing株式会社 代表取締役の加藤史子氏の三氏が実際に利用した体験談とともに、ニューノーマル時代のワークプレイスの最適解を探っていく。

仕事をポジティブに楽しめる「郊外型個室ワークスペース」の新しい価値

柴田 郊外型という「ワークスタイリングSOLO」(以下、SOLO)のコンセプトはすごくいいですね。
 当社では昨年から9割の社員が在宅勤務をしていますが、落ち着いて仕事ができる環境の確保に苦労していました。
 家族がいる人は、家の中に集中して仕事をするスペースが作れない。仕方がないから屋根裏にデスクを置いてみたものの寒いし、Wi-Fiが届かないといった話も聞きました。
 一方で独身の社員の中には、ワンルームなのでWEB会議の背景に生活感が全部出てしまう、ビデオをONにするのが嫌だと言う人もいました。
 当社では以前から八重洲のシェアオフィスも利用できるようにしていますが、八重洲まで来ると会社に出社するのと移動距離が変わらないという人も多くて。
 SOLOが家の近くにあれば、移動による感染リスクは最低限に抑えられ、彼らのプライベートもきちんと守りながら、落ち着いた空間で働ける。まさに理想的なワークスペースですね。
 SOLOを実際使ってみて、一番に感じたのは音の静かさです。他の部屋の声が全然漏れてきませんし、自分がWEB会議をする際にも安心して利用できました。
 前職のときからワークスタイリングは使っていたのですが、他の拠点と同様に情報セキュリティへの配慮が行き届いていると感じます。
 また、部屋の中にはタブレットがあり、いつでもコンシェルジュの方と話ができます。ドリンクブースのところにカメラも設置されていて、「ちゃんと見ていてくれている」という安心感もありました。
 私の好きなビスケットも置いてありましたし(笑)、無人の拠点でもホスピタリティを感じられるのがいいところですね。
 今回はSOLOを利用する目的で普段はあまり利用しない駅で降りたので、受付を済ませた後に30分くらい付近を散歩してみたんです。閑静な住宅街の中に古くからある神社があったり、美味しそうなラーメン屋さんを見つけたり……。
 コロナ禍の自粛の中の、束の間の小旅行みたいな感覚でした。
 出かけることに制約がある中でも、短い移動で利用できるオフィスが増えてくれば、仕事をしに行くことがちょっとした楽しみや気分転換にもなりそうですね。
 ニューノーマルの働き方は、ビジネスや社会において非常にポジティブな変化です。在宅勤務で苦労している人も多いのですが、家族との時間がとれる、時間を効率的に使えるといった良い面もあります。
 WEB会議が続く日、子どもが早く帰ってくる日はSOLOを使うなど、働く人が状況に応じて場所を選べるというのが、これからの新しい価値になるんじゃないかと思います。

リアルとオンラインが混じる働き方こそ、ホテルの客室空間が“使える”理由

田中 私の働き方は、リアルとオンラインが混ざったハイブリッドです。リアルな会議の間に短いWEB会議が入ったりするので、その間自分の身をどこに置くのかというのはいつも苦慮しています。
 重要な戦略会議では内容を外に漏らすわけにはいきませんし、イベント登壇であれば伝えるのが仕事ですから、常に感情を込めて伝えたい。そんなときに周囲を気にせず、安心してWEB会議を行える場所というのはありがたいですね。
また、WEB会議の際に身だしなみや背景など、環境を整えることは、ビジネスパーソンとしての最低限のマナー。それをできる人かできない人かで判断されていく時代になっていると感じます。
 ワークスタイリングのホテルは拠点数が多いので、次の訪問先から近い拠点を選んで使えるというのも魅力的です。実はこれまでもホテルのデイユースなどを使ったことはありますが、このホテルは仕事用に環境を整えてあるので非常に集中できました。
 私は十数社の企業顧問をしているのですが、経営の最前線から感じることは、目の前の変化に翻弄されるのではなく、数年先を見据えて、個人も組織もチャレンジし続けることの大切さ。
 そうした日々の積み重ねが、ビジネス資本や社会関係資本の蓄積につながるのです。
 働き方の大きな転換期に入り、大企業も含めてどんどん自由な働き方にシフトしています。企業が先を見据えて経済投下できるのであれば、環境の整ったワークプレイスを契約し、ビジネス資本を貯めていくというのは必然的な流れだと思います。
 また、個人に求められる姿勢として私が提唱しているのは、組織に頼らずに自ら自身のキャリアの成否を決める「プロティアン・キャリア」です。
 集中力を高めるために自分で場所を選びながら、生産性を高めて働く、毎日違う場所でフレッシュな感覚を持ちながらチャレンジする。キャリア形成においても重要な姿勢だと思います。
 自ら最新の働き方にアップデートし、学んだことを実行するための空間を手に入れることは、将来を切り拓くためのエッセンシャルなキャリア投資と言えます

WEB会議や打ち合わせが多い仕事こそ、ホテルの“上質さ”が効く

加藤 当社はインバウンドのお客様を支援する事業をしているので、20年4月の緊急事態宣言を受け、コスト削減のためオフィスを退去するという決断をしました。
 社員は全員在宅勤務ですが、コワーキングスペースも利用しています。私は来客対応などでリアルに打ち合わせをする場が必要なこともあり、自宅の近くに個人的にシェアオフィスも借りています。
 ただシェアオフィスでWEB会議をしていると、どうしても周囲への配慮が必要ですよね。話す内容にも気を遣いますし、イヤホンをしてマスクもしたままで話をしなくてはいけません。
 その点ホテルは、完全にプライベートな空間なので、何の心配もなくWEB会議に集中できます。
 また、私は仕事柄リアルな出張や打ち合わせも多いので、移動やオフライン会議の合間にどこでWEB会議ができるかをいつも探しているんです。ネット環境があって、声を出せる場所がなかなか見つからないので、訪問先の会議室をそのままお借りしたこともありました。
 ですから、ホテルをオンラインとオフラインの仕事をつなぐハブのように使えたらすごく便利なんじゃないかと思いました。
 今日は午前中にここでオンライン登壇をしていたのですが、そばに洗面台があるのでお化粧直しもできますし、背景がキレイなので見ている方にも失礼がないと感じました。
 それから、シェアオフィスだとトイレがフロアの外なので、パソコンをそのまま置いていていいのかという問題もありますよね。その点ホテルはトイレが室内にあるので良いですね。
 働く場所の制約がなくなり、自分で選べるようになるということは非常に意義深いことだと思います。ワーケーションの利用も現実的になりますし、在宅勤務では隙間時間で家事をしたり、子どもの様子を見たり。すごく時間が有効に使えるようになったと思います。
 オンラインとオフラインがシームレスになっている中、安定したWi-Fi環境があり、気兼ねなくWEB会議が行えるサードプレイスのような場所はますます求められていると思います。
 その点、三井不動産の提携ホテルはどこも立地が良く、ホテルならではの清潔感もあり、ウイルス対策もしっかりとされている。しかも10分単位で利用できるので、まさにサードプレイスの役割を担える場所だと思いますね。

NewsPicksのエディターが「ワークスタイリング」の新サービスを試してみた

 まず体験したのは20年12月にサービスを開始した「ワークスタイリングSOLO」だ。
 三井不動産はこれまで、法人向け多拠点型サテライトオフィス「ワークスタイリングSHARE」と法人向けサービスオフィス「ワークスタイリングFLEX」の2サービスを展開してきた。SOLOはSHAREの会員が利用できる完全個室型のサテライトオフィスである。
 入り口につくと、コンシェルジュがオンラインで迎えてくれた。QRコードをかざして受付を済ませ、わからないことを質問すると、丁寧に教えてくれる。無人の拠点という不安はこの時点で消えていた。
 個室に入ると適度な広さの空間があり、圧迫感はない。デスクについてしばらく経つと、周囲の話し声がほぼ聞こえないことに気づく。
 WEB会議では、「音」の問題に悩んでいる人は多い。
 シェアオフィスでは迷惑にならないように小さな声で話し、情報漏洩にも気を遣う。逆に在宅勤務では、子どもの声、インターフォン、隣の工事……常に音の入り込みを気にしながら会議に参加しなければならない。
 だからこそ、音の問題がなく安心してWEB会議が行える環境は貴重だ。
 次に体験したのは、ホテルの客室を利用したワークプレイスだ。
 ワークスタイリングが提携するホテルは、三井不動産ホテルマネジメントが運営する「ザ セレスティンホテルズ」「三井ガーデンホテルズ」「sequence」の 全国38拠点。SOLO同様にワークスタイリングSHAREの会員であれば10分から利用が可能だ。
 NewsPicksのエディターが体験したのは、2つのホテル。
 まず宮下パークの中にある三井不動産の新ブランド「sequence MIYASHITA PARK」。部屋はコンパクトだが、窓からは自然光が差し込み、宮下パークのスタイリッシュな風景が開放感を醸し出している。
 シングルの室内にはシンプルにワークデスクとチェアのみ。雑念なく仕事に集中しやすいスタイリッシュな空間、周辺の最先端の商業施設などの雰囲気もあり、クリエイティビティを刺激される。
 5階にあるレストランではモーニングを食べ、スイッチを入れて客室で仕事をするのもいいだろう。業務に忙殺され余裕がないとき、非日常の中で感性を研ぎ澄ませたいとき……。少し気持ちに余裕を持って仕事をスタートできる。そんな空間だった。
 一方、銀座にある「ミレニアム三井ガーデンホテル東京」はベッドやテレビも含めて、ホテルステイの居心地の良さをそのまま残している。
 ワークスタイリングの2つのホテルを体験し、共通して感じたのは非日常感と安心感だ。
 在宅勤務が続く中で、ホテルという非日常的な空間に行くこと自体も魅力であり、いつもとは違う気持ちで仕事に向き合える。
 立地も良く、館内のカフェやレストラン、フロントのホスピタリティなど、ホテルがもともと持つ魅力も味わえる。ホテルによって施設や雰囲気はそれぞれ違うので、さまざまな拠点を巡り、自分のお気に入りを見つけるという楽しみもありそうだ。
 ワークプレイスを選ぶことは、自分らしく働くということだ。
 「一人で作業に没頭したい」「WEB会議を静かな環境で行いたい」「家を出てリフレッシュしたい」……その日そのときの自分に合う環境を選ぶことで、効率的で生産性の高い仕事が可能になる。
 そしてワークプレイスの多様な場所や空間は、在宅勤務で単調になりがちな思考を刺激し、インプットやアウトプットの質を高めてくれるだろう。
 ワークスタイリングは、テレワークの課題を解消し、パフォーマンスを高めるための“ひとつの解”を示している。