サントリーの広告戦略・マーケティング戦略から学べることとは

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「人と自然と響きあう」を使命にかかげ、高品質の商品やサービスを届けながら社会・文化の発展へ貢献することを目指しているサントリーホールディングス株式会社(以下サントリー)。

食品・スピリッツ・ビール・ワイン・健康食品を軸に事業会社を束ねており、主に酒類や清涼飲料事業をグローバルに展開しています。

清涼飲料市場では伊右衛門茶や黒烏龍茶、BOSSなど、ビール事業ではザ・プレミアム・モルツ、スピリッツ事業ではトリス、サントリー角など、国内でのヒット商品は数知れず。長年愛されるロングセラー商品が多いのも特徴です。

サントリーの商品は、なぜこれほどまでに長年にわたり消費者に愛され続けるのでしょうか。広告・マーケティング戦略の観点からひも解いていきましょう。

また、事業計画の見直しや新商品・サービスの販売に向けてマーケティング戦略を検討される方へ、自社がどんな立ち位置でマーケティング戦略を立てるべきかが分かる「市場分析シート」も無料でご提供しています。ご興味のある方はこちらからダウンロードしてください。

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サントリーの広告・マーケティング戦略のポイント

サントリーの商品開発は、仮想のターゲット集団を設定して、その人が何を好むのか、なぜその商品を好むのか、を掘り下げることからはじまります。その上で共通事項を見つけ、生活や行動パターンから「消費者が心の中で求めているもの」を考えていくのです。

そして、生み出された商品が幅広い層から認知されヒットする理由には、サントリーの巧みなブランド戦略があります。

これから紹介するザ・プレミアム・モルツの広告にも、消費者の「実際の行動」とブランドを結びつけるマーケティング戦略がありました。

ザ・プレミアム・モルツのブランド戦略

これまで、ザ・プレミアム・モルツやエビスビールなどの「プレミアムビール」は、お中元やお歳暮など贈り物として売れる「ハレの日需要」の商品と考えられており、実際に売れ行きが伸びているのもギフトシーズンがメインでした。

ですが、実際にサントリーがプレミアムビールについて調査したところ、消費者が最も飲んでいる場面は休日の夕食時でした。頑張った自分へのご褒美として、休日のプチ贅沢を味わう人たちに好まれていることが分かったのです。

そこで、サントリーは「週末」というキーワードを軸に広告を打ち出します。モンドセレクション受賞という実績を絡め「最高金賞のビールで最高の週末を」というキャッチフレーズで商品理解を深めてもらいつつ、「週末に飲むビール」としてアプローチしました。

すると、「週末の夕食時」のために商品を手に取る人が増加。対年比440%増の大ヒットを記録します。

消費者の実際の行動を読み解き「仕事を頑張ったご褒美に、週末くらいは良質なビールを飲みたい」という「心の中で求めていること」を導き出した結果、プレミアムビールを「ハレの日ギフト」から脱却させ「週末に飲みたい贅沢ビール」として認知させることに成功したのです。

今やプレミアムビール市場において、サントリーは約5割のシェアを占めています。

ハイボールブームの火付け役

サントリーが創業以来主軸にしているスピリッツ事業。NHK 連続テレビ小説「マッサン」のヒットで、より多くの人に知られるようになりましたが、サントリーはいわゆる「ジャパニーズウイスキー」のパイオニアです。トリスやサントリー角などのロングセラー商品も幅広い世代に知られています。

ところが、ウイスキーの市場は長年低迷期にありました。「オジさんがバーで飲むお酒」というイメージや「度数が高くて飲みにくい」「食事に合わない」などの印象があり、とくに若い年代や女性からのニーズがほとんどなかったのです。

また、居酒屋などの1軒目や「1杯目」のお酒ではビールが飲まれているのに対し、ウイスキーは居酒屋ではほとんど飲まれていませんでした。2軒目以降のバーや飲食店などでようやく飲まれていたくらいです。

そこでサントリーは、「1軒目で飲まれること」を目標に、改めてウイスキー市場の再調査を行いました。すると、サントリーが推奨するウイスキーのアルコール比率と、消費者が求める飲みやすい度数やアルコール比率には違いがあることが分かりました。

そこで、炭酸水の爽快感とレモンのさわやかさをプラスしたウイスキーの飲み方「ハイボール」のプロモーションに注力。

ウイスキーを食事にもよく合う「スッキリとした飲みやすい飲み物」に転換してアピールしたところ、見事ブームとなり、1軒目の居酒屋などでも飲まれるようになりました。

ハイボールブームは居酒屋や飲食店にとどまらず、家庭にまでも浸透。家庭で手軽に飲めるハイボール缶も続々とヒットします。さらに、サントリーの角瓶をはじめ山崎や白州などのブランド人気も再燃。サントリーのマーケティング戦略が、ジャパニーズウイスキー市場全体を好転させたとも言える事例です。

テレビCM界の妙手がWeb動画に進出

「缶コーヒーBOSS」にはハリウッドの大物俳優トミー・リー・ジョーンズ、「ザ・プレミアム・モルツ」には矢沢永吉を起用するなど、視聴者を引きつけながら商品の情報も刻み付ける印象的なテレビCMを得意としているサントリー。テレビCM界をリードし続けてきたサントリーが今、ブランドの認知拡大のために動画マーケティングに力を入れています。

Z世代をターゲットに広告を制作

日常的にテレビを観る人は年々減っており、テレビCMの広告効果も減少していると言われています。そこで、テレビCMに替わる広告手法としてサントリーが注力しているのが動画広告です。

YouTubeにサントリー公式チャンネルを開設し、主にZ世代と呼ばれる若年層ユーザーへリーチするよう、さまざまなバリエーションの動画広告を制作しています。

ここで憶えておきたいのは、サントリーの動画広告はネット販売を目的としていない点です。動画広告ではあくまでも「顧客との接点」をつくるツール。商品やブランドの認知度・好感度を上げて印象付け、実際に店舗へ訪れた際に商品を購入してもらうことにつなげる、という戦略をとっています。

サントリーの広告・マーケティング戦略まとめ

サントリーの広告・マーケティングにおいて重要なポイントとなっているのが「市場調査」と「ターゲットが心の中で求めていること」の追求です。

既存の価値観や習慣を根本から見つめ直し、どうすれば商品が「求められる商品」になるかを追求し続ける開発者やマーケッターの姿勢が、ヒット商品を生み続けていると言えるでしょう。

下記の記事では、商品やサービスを認知させるだけでなく「成果」に繋がる広告戦略の具体的な方法や、その他の企業の事例を紹介しています。今後の広告戦略策定におけるアイディアが詰まっていますので、こちらも合わせてご覧ください。

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