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チェコの規制当局がドコバニⅡ期工事に立地許可発給 

12 Mar 2021

©CEZ

チェコ国営電力のCEZグループは3月9日、ドコバニ原子力発電所Ⅱ期工事(120万kW級PWR×2基)の立地許可が原子力安全庁(SUJB)から発給されたと発表した。

ドコバニ発電所では、1980年代後半に運転開始したI期工事の4基(各51万kWのロシア型PWR:VVER)(=写真)が閉鎖時期を迎えるのに備え、出力の大きな5、6号機をⅡ期工事として建設する計画。立地許可の申請書は、CEZグループの「ドコバニⅡ原子力発電会社(EDU II)」が昨年3月に提出していたもので、プラント供給企業の選定や建設工事の実施に先立つ最も重要な準備手続である。

SUJBは3月8日付けの発表の中で、「立地許可の発給を阻むような事実は見受けられなかった」と表明。この建設計画については同国のA.バビシュ首相が2019年11月、チェコのエネルギー自給を維持するため、Ⅱ期工事の最初の1基については2022年末までにプラント供給企業の選定を終え、遅くとも2029年までに建設工事を開始、2036年までに運転開始を目指すと述べている。

CEZ社は2015年にドコバニ発電所Ⅱ期工事の建設準備を開始しており、この年に建設プロジェクトの準備と実施を担当する子会社としてEDU II社を設立した。EDU II社はⅡ期工事サイトの自然条件を調査したほか、建設プロジェクトの設計概念や、5、6号機の運転と将来の廃止措置が周辺住民と環境に及ぼす影響を予備的に評価。専門家による200以上の分析・調査結果も参照し、5年の歳月をかけて約1,600ページの立地許可申請書を作成した。同社はまた、2019年に環境影響声明書(EIA)も作成している。

このほか昨年7月には、チェコ政府がCEZ社とEDU II社の3者で建設プロジェクトの枠組契約に調印。今回、原子力法に基づいて立地許可が発給されたことから、CEZグループは今後、プラント供給企業の入札公示や施設の配置設定などを行うとしている。

CEZ社のD.ベネシュCEOは立地許可が発給されたことについて、「当社はⅡ期工事に必要な文書の作成など、準備作業その他の行政手続で膨大な努力を傾注している」と説明。これに加えて、「プロジェクトの実施に際しては可能な限り透明性が確保されるよう取り組んでおり、資機材の調達保証報告書など様々な関係資料も一般に公開している」と強調した。

チェコでは一時期、テメリン原子力発電所の増設計画が進められていたが、チェコ政府が「完成発電所からの電力を固定価格で買い取る保証を与える事は出来ないと明言した」ため、同計画は2014年に頓挫している。ドコバニ発電所の増設計画については、2019年7月にチェコ政府がCEZ社の100%子会社を通じて建設資金を調達するという投資家モデルを承認。2020年5月には、A.バビシュ首相が記者会見で、「1基あたり60億ユーロ(約7,800億円)と言われている総工費の7割までを政府が低金利で融資する」と述べていた。

また、ドコバニⅡ期工事のプラント供給企業に関しては、中国広核集団有限公司(CGN)とロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社、韓国水力・原子力会社(KHNP)、フランス電力(EDF)、米国のウェスチングハウス社が入札に関心を表明したと伝えられている。

(参照資料:CEZ社SUBJの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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