【3分解説】アストラゼネカ製ワクチン「中断ドミノ」の今後
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注目のコメント
アストラゼネカのワクチンの中断は、安全性確保のプロセスを示すものだと思います。
これは、稀な有害事象でも各国が慎重にその情報を集め、副反応の可能性を検討し、少しでも疑いがあったら疑いの段階で一旦停止するほど慎重を期してワクチン事業を進めていることの裏返しです。
各国政府は、ただただ闇雲にワクチンを推進しているのではなく、科学的に慎重な判断をしようとしているのです。
にもかかわらず、伝わり方は逆方向かもしれません。すでに因果関係が示されたかのように、「危険なことがあったから中断になった」「重い副反応が出た」「危険なワクチンを用いてきた」というような捉えられ方につながっているかもしれません。心ない方からは便乗するかのように陰謀論なども聞こえてきます。
実際に、アストラゼネカのワクチンを主に用いる国では、ワクチン忌避の動きに直結する様子も報じられています。
これは、各国政府にとって想像以上のマイナスのインパクトになるかもしれません。今後接種が再開したとしても、一度崩れた信頼は(決して歪んだ判断ではなかったにもかかわらず)取り戻せない可能性もあります。
特に第3波を迎える欧州諸国にとって、ひいてはパンデミック収束への明るいニュースが届いていた世界の国々にとって大きな痛手につながる可能性もあります。
これは、慎重に慎重を重ね、安全性を確実に担保するための停止であり、予防接種事業自体に警鐘を鳴らすメッセージではないことを改めて確認いただければと思います。911のテロ後の1年間にアメリカで約1500人が、飛行機を怖がって遠隔地へ車で移動したため交通事故死したそうです。ちなみにアメリカ大陸を横断するフライトで事故死する確率は、車で約20km走る間に事故死する確率とだいたい同じだそうです。
Steven Pinker, The Better Angels of our Nature, Chapter 6より
元ソース:G. Gigerenzer 2006 Out of the frying pan into the fire: behavioral reactions to terrorist attacks. Risk Analysis, 26, 347-351
ワクチンの件についてどちらのリスクが高いのか僕は専門家ではないのでコメントできませんが、主観的なリスク評価は往々にしてバイアスが入ることは指摘しておいて無駄ではないかと思います。3月18日の欧州医薬品庁(EMA)はどんな判断をするか。日本への影響も大きいです。今回は、アストラゼネカ製のワクチンで、特定のロットに問題があったという情報もあります。EMAがどういう最終判断をするか注目です。