[東京 15日 ロイター] - 日銀は18―19日に開く金融政策決定会合で示す政策点検で、イールドカーブ・コントロール(YCC)の運営や上場投資信託(ETF)など資産買い入れ手法の見直しを行う見通し。長期金利の許容変動幅を示した上で、緩和効果を損なわない範囲で金利の上下動を容認することや、市場が落ち着いている時にはETF買い入れを控える半面、ボラティリティが高まる局面では買い入れ額を大きく増やすことなどが主眼となりそうだ。

市場機能の回復と市場急変時の積極対応の両立を通じ、物価目標に向けて粘り強く金融緩和を続ける姿勢を示すとみられる。

<長期金利の許容変動幅、声明に明記の可能性>

政策点検の実施は昨年12月に発表された。新型コロナウイルスの感染拡大で経済への下押し圧力が高まり、2%の物価目標の達成により一層時間がかかりそうだとの問題意識から、これまでの政策の効果と副作用を分析し、一部の政策手法を見直すことにした。

政策点検では、現行の「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和」の枠組みは適切に機能しているとの判断から変更しない。また、2%の物価目標、マイナス金利、コアCPI(消費者物価指数)の前年比伸び率が2%を安定的に上回るまでマネタリーベースを拡大する「オーバーシュート型コミットメント」といった現在の枠組みの骨格を形成するものも見直しの対象とはしない。

今回の点検で焦点となるのは、YCCの運営とETFなどの資産買い入れの手法だ。

YCCの運営を巡り、長期金利の誘導目標ゼロ%に対して日銀が許容する変動幅については、18年7月に黒田東彦総裁が示した「おおむねプラスマイナス0.1%の倍程度」を維持した上で、声明文に「上下0.2%程度」と具体的な数字を明記する可能性がある。

これまでの基準は黒田総裁が会見で示したものにすぎず、声明に明記することにより日銀の意図がより市場に伝わりやすくなるメリットがある。ただ、日銀内には具体的な数字を示すと、柔軟な市場調節に支障が出るといった警戒感もある。

日銀では、長期金利が昨年後半、非常に狭いレンジで停滞していたことを問題視する声がある一方、許容レンジを広げることが「緩和の後退」と受け止められることへの警戒感もある。雨宮正佳副総裁は8日の講演で「金利の大幅な変動は、望ましくない結果をもたらす可能性があるが、一定の範囲内であれば、金融緩和の効果を損なわずに、国債市場の機能度にはプラスに作用する可能性がある」と指摘。市場機能を回復するため、緩和の効果を損なわない範囲内で金利の上下動を容認する可能性を示唆した。そうした姿勢を声明に明記することにより、金利が上下により動きやすくなるよう国債買い入れオペの手法を工夫する余地が広がる。

一方、19日に公表する声明では、景気悪化時の追加緩和手段の1つとして、長短金利の引き下げが重要な手段であることをより強調するとみられる。

雨宮副総裁は講演で「長短金利の引き下げは、金融仲介機能に及ぼしうる影響にも配慮しつつ実施できるようにしておくことが適当だ」と指摘した。長短金利の引き下げ余地明確化のため、日銀は当座預金の3層構造を修正する可能性がある。また、実際に金利を引き下げる際には金融仲介機能を維持するために副作用の軽減策を打ち出す構えも示すとみられる。

もっとも、新型コロナの影響でサービス業の一部に下押し圧力が掛かっているものの、足元の景気は底堅く推移しており、今回の決定会合で長短金利の引き下げを決める可能性は低い。

<ETF買い入れ手法>

ETFの買い入れを巡っては、日銀が日本株最大の保有主体になる中で、市場機能や企業統治への悪影響が指摘されてきた。日銀は、昨年3月から4月にコロナの感染急拡大で市場が波乱の展開になったときのように、ボラティリティが急速に高まり、放置すれば実体経済に悪影響が出かねない場合には機動的に買い入れ額を増やすことを明確化するとみられる。

日銀は、コロナ対応の一環でETFの買い入れ上限を年12兆円程度に引き上げたが、原則年6兆円の買い入れめども残してきた。日銀では、原則6兆円を削除し、上限12兆円のみ残すことを支持する声が出ている。こうすることで、政策点検後も日銀の緩和姿勢に変化がないことを示すことができるとする。

ただ、昨年春に急拡大したリスクプレミアムが株高局面で落ち着いてきていることを点検結果で示した上で、声明では原則6兆円を残し、市場が荒れた場合には6兆円を超えるペースでの買い入れもありうると明示すれば緩和スタンスの後退にはならないとの声も出ている。

政策点検は3月期末が迫る中での発表となる。日銀は市場動向を注視し、買い入れ手法の具体的変更を最終的に決めるとみられる。

(和田崇彦、杉山健太郎 取材協力:木原麗花 編集:石田仁志)