(ブルームバーグ): 英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンを巡り、安全性への懸念から使用を見合わせる動きが欧州で広がっている。また同社製ワクチンの供給に一段の遅れが生じる中、世界各国では既に確保した分を保持しようとする動きが強まっている。

欧州では既に10カ国余りがアストラゼネカ製ワクチンの接種を中断しており、14日には新たにアイルランドも使用を停止した。2回必要な接種で起こり得る副反応への懸念が背景にある。欧州医薬品庁(EMA)は問題の兆候はないとしているが、接種後に深刻な血栓の問題が生じたとの報告が複数寄せられたことから、タイなど欧州域外でも使用を中断する動きが見られている。

アストラゼネカ製ワクチンを巡っては既に供給面で問題が発生している。同社は欧州連合(EU)内での供給不足分を域外から調達しようとしているが、各国は自国への供給分を保持しようとする動きを強めており、同社の取り組みは難航している。アストラゼネカ製ワクチンの緊急使用許可がまだ下りていない米国も、既に確保している分を保持すべく出荷要請に応じていない。

こうした状況を背景にアストラゼネカ製ワクチンを巡る動きはEUで大きな政治問題となっている。一方、EUはワクチン接種で英国と米国に大きく後れを取りつつある。

ワクチン生産が計画に追いついていないことに加え、オランダのある工場は当局による許可をなお待っている状態だ。この工場はオランダ企業ハリックスが保有し、アストラゼネカ向けにワクチンの成分を生産。EUと英国の両方でサプライチェーンの一部となっている。

アストラゼネカの広報担当は承認のタイミングについて、当初の計画通りであり、EUへの配布に何ら影響していないと説明。ハリックスには通常の営業時間外に連絡を取ったが、これまで返答はない。

原題:AstraZeneca’s EU Vaccine Woes Deepens on Clots, Nationalism (2)(抜粋)

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