首相、4月前半訪米 安全保障 日本の役割重く 中国念頭、同盟強化に米期待

日米豪印オンライン首脳会議を終え、ぶら下がり取材に応じる菅義偉首相=13日午前、首相官邸(納冨康撮影)
日米豪印オンライン首脳会議を終え、ぶら下がり取材に応じる菅義偉首相=13日午前、首相官邸(納冨康撮影)

 菅義偉(すが・よしひで)首相は12日の政府与党連絡会議で、自身の訪米について「バイデン米大統領が直接会談をする最初の外国首脳としてお迎えをいただく」と強調した。米側は国務長官、国防長官がそろって訪問する外国としても日本を最初に選んだ。米側の日本に対する期待が大きい表れで、安全保障面など日本が担うべき役割はより重くなりそうだ。

 首相は昨年9月、バイデン氏は今年1月に就任。親密な関係を結んだ安倍晋三前首相とトランプ前米大統領が退場し、日米関係に与える影響が懸念された。だが、首相がバイデン氏にとって初の会談相手になることで、トップが代わっても変わらぬ緊密な日米の連携を示した。

 変わったのは外交スタイルだ。「安倍・トランプ」のトップダウン型と異なり、「菅・バイデン」は外務省や国務省など下からの積み上げを重視する姿勢をとっており、日米関係筋は「あらゆる分野で対話が増えている」と歓迎する。

 首相訪米に関しても、日米双方の担当者が綿密に協議した結果といえる。首相は2月訪米を目指したが、大統領周辺は高齢のバイデン氏の新型コロナウイルス感染を懸念して慎重な姿勢を崩さなかった。日本側は米政府が欧州諸国にも同様の回答をしていることを把握し、引き続き首相の早期訪米を働きかけたのに対して米側が応えた。

 首脳間の「個人と個人」がモノをいう関係から、「政府と政府」の交渉に重きを置く従来のスタイルに戻った形だが、それだけ日本にのしかかる課題も重くなる。日米両政府の担当者の間では、中国の軍事的台頭を踏まえ、自衛隊と米軍の役割・能力の見直しが必要との認識で一致しているからだ。

 こうした課題は、貿易赤字や米軍駐留経費に偏りがちなトランプ政権下では十分なエネルギーが割かれていなかった。この間、中国は長射程ミサイルや海軍艦艇を整備し、米軍を中国本土に近づけさせない能力を強化している。北朝鮮に関しても、トランプ政権は米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発を阻止するため武力行使をちらつかせたが、日本を射程に収める中短距離ミサイル開発は事実上黙認してきた。

 米国が「最も手ごわい競争相手」と位置付ける中国を念頭に置いた日米同盟強化の必要性は、バイデン政権が日本重視の姿勢を示す理由でもある。政府高官は中国や北朝鮮を念頭に、「日本はとてつもない危機にある。ありとあらゆることを考えなきゃいけない」と緊張感を高めている。(杉本康士、石鍋圭)

会員限定記事会員サービス詳細