ドイツの脱原発訴訟
10年前の3月12日、福島第一原発の1号機で水素爆発が起きた。
それからほぼ10年後の今年3月5日、ドイツで小さく報道されたニュースがあった。福島事故のあと原発の運転を止められた電力会社と、ドイツ政府の間で長く争われてきた賠償問題に、ようやく決着がついたのだ。
当時、福島の事故の後、点検のためとして止めさせられた原発は、2度と動くことはなく、その後、地滑り的に2022年の脱原発が決まったが、それは、電力会社の意思でも落ち度でもなく、一方的な政治的決断によるものだった。そのおかげで彼らは、本来ならあったはずの利益を失い、将来投資も無駄になったとして、政府に賠償を請求していた。
そして、ほぼ10年たった今、原発を持っている電力会社であるVattenfall, RWE, Eon/PreussenElektra, EnBWの4社に、政府が24.3億ユーロ(約3100億円)を支払うということで合意を見た。
電力会社はこの他にも、企業の経営権の侵害などを理由に、いくつかの訴訟も起こしていたが、今回の合意により、それらは取り下げることが決まった。
ちなみに日本でも、福島第一原発の事故後、同じ理由で、同様の賠償を日本政府に請求できた電力会社は数多くあっただろう。
当時のドイツにおいて、福島での水素爆発の映像インパクトは極めて大きかった。すでに前日の津波の壮絶な写真が流れた後だったからということもあるが、これが政治的に最大限利用されたことは否めない。
特に、40年来、反原発を唱えてきた緑の党は、それ見たことかと言わんばかりのはしゃぎようで、それを聞いた人々が、日本での死者・行方不明者2万人は放射能のせいだと勘違いするほどだった。
公営第2テレビは爆発の映像を繰り返し放映し、まもなく爆発の効果音までつけた。いずれにしても、この後、かねてより原発嫌いの人が多かったドイツでは、激しい反原発運動が息を吹き返した。