『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では、どんなチームや企業にも存在する「組織文化」をテーマに、それを知り、変え、そして進化させていくための方法を紹介しています。なぜいま「組織文化」が重要なのか。本連載では本書第一章に収録した原稿を特別公開中です(初回は「日本企業が世界で勝つには「らしさ」が最大の武器になる」)。今回は、組織文化を知るために役立つ「システム思考」について紹介します。

「システム思考」を生かして組織文化を理解しようPhoto: AdobeStock

 企業を取り巻く環境は年々、複雑さを増しています。

 グローバル化やダイバーシティの流れはもはやとどまることはなく、国籍、文化、価値観などが異なる多様な人材が入り交じって一緒に働くことが当たり前となってきました。複雑な環境で生きるということは、そこから生じる課題や問題を解決するのもこれまで以上にハードルが上がることを意味します。

 そんな中で最近、注目されているのが「システム思考」です。

 システム思考とは、複雑な状況の下で変化に影響を与える構造を見極め、さまざまな要因との相互作用を理解し、真の課題解決や変化を生みだすアプローチのことです。

 難しそうに感じますが、要は一つの現象がさまざまなものとつながっているという考え方のことです。目の前に起こる問題や課題について直接関係のありそうな要因だけに着目するのではなく、全体を俯瞰し、多面的な角度からシステムとして捉えて原因を探り、課題を解決しようとするアプローチを指します。

 そもそも課題は、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じるケースがほとんどなので、システム思考の考えに基づいて要因を考えなければ、根本的な解決には到達できません。

 たとえば、企業の収益を高めるにはどうすればよいのかという課題を例にとりましょう。

 直接的には営業部門が顧客に商品を売ることで企業は収益を得るわけですから、短絡的に考えると営業力を高めることが課題解決への最短ルートです。

 しかし、営業部門が成果を出すには、良質な製品やサービスが必要で、そのためにはモノ作りの力を高めることが求められます。製品やサービスを継続して使い続けてもらうには、顧客対応を担うカスタマーサポート部門を強化することも必要でしょう。良質な製品やサービスを周知するマーケティング部門も大切です。

 こうした事業部門が存分に実力を発揮するには、快適な職場環境を整えることも重要ですし、優れた人材を採用することも大切になります。

 当たり前のようですが、企業の業績は組織内のあらゆる部門が直接的、間接的に関係し合って生みだされた結果なのです。

 だからこそ、組織全体を見なければ「いかに収益を高めるか」という問いに対する適した「解」は得られません。そんな考え方が当たり前になりつつあります。それは単発的な結果を求める傾向から、継続的な成果を求める傾向に変わってきているからです。

 組織全体の方向性を決定づけるのに大きな影響を与えているのが、そこで共通認識されている暗黙のルールや空気といった、人々が何となく共有している価値観です。

 その組織に属する人々がどのように考えて行動しているのか。組織の隅々に浸透した価値観が、組織文化なのです。

 組織文化は、その組織に属する人々がどんな価値観で判断を下すのかという一人ひとりの小さな意思決定にも影響を与えています。

 ビジネスの世界では最近になって、一部の企業が組織文化の重要性に着目し、目指す姿へと組織文化を変革し、進化を続けています。

 そしてスポーツの世界でもこの数年で同じような考え方が広がりつつあります。

(続きは2021年3月8日公開予定)

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