2021.03.06

まさか、ふつうに暮らせない…?とザワつく、21歳マイノリティの「苦しい胸の内」

居場所の発見と孤独(1)

いまの私が、過去の私を救っている

「橘さんは、今まで大変な場面を自力でなんとか切り抜けてきたとのことですが…どうして、誰かに”提供する”側へ回ろうと思えたんですか?」

都内で「対話型”レズ”風俗 Relieve ~リリーヴ~」という女性間風俗店(*) を営む筆者は、「風俗」の響きとかけ離れた「対話」のコンセプトに興味を持たれ、取材を受けることが多い。

2020年5月。店を立ち上げるまでの私的な苦難と、様々な悩みを抱えたお客様のエピソードをまとめたノンフィクションが出版された際に、取材者から聞かれた質問だった。

どういう意味で尋ねられたのか図りかねていると、補足してくれる。

「トラブルや悩みを自分で解決するしかなかった人って、すごく自己責任論が強化されるというか…他の人が誰かのおかげで助かることを、ラクしてずるいとか、橘さんは思ったりしなかったのかなって」

たしかに。

そのとき私の回答は、こんな感じだっただろうか。

「苦痛を嘆いてひとりで恨みを募らせても、あのときの私が、自力でもがき進む以外には生き延びられなかった事実はもう覆らないですよね。だから、かけて欲しかった言葉を、思い返しながらお客様にかけることが、当時の私をいま救いに行くことになる気がしてます」

Image by iStock
 

この記事を書いている今だってまぁ、その通りだと思っている。現に接客の場では、過去の自分が味わった苦しみ、悲しみ、孤独が、お客様からこぼれる言葉を、鮮やかに補ってくれる。

しかしこの回答は、「苦痛ばかりの日々を生き延びて本が出版され、なんとか毎日の生活に不自由しない橘みつ」となった結果の言葉だと、後から振り返って思う。

(*)女性キャストが女性客に接客する風俗店。レズ風俗の俗称で周知されたが、差別性や誤解をはらむ呼称でもあるため、本稿では店名以外を「女性間風俗」と表記する。

関連記事