Culture:Gen Zの心を掴む「アバター」

Culture:Gen Zの心を掴む「アバター」

Deep Dive: New Cool

これからのクール

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あらゆるものがリアルからヴァーチャルへ染み出している現代。ブランドが若年層の消費者と関係を築くためのアイコンもまた、ヴァーチャルな存在が成り代わろうとしています。そして、さらにその先も。いま「クール」なアバターカルチャーを紹介します。

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Image: PHOTO VIA genies.com

ここ数年、仮想プラットフォームはもとより、「ヴァーチャルインフルエンサー」と呼ばれる、人間よりもリアルかもしれない“非実在”インフルエンサーの活動が盛んになっています。

草分け的存在として挙げられるのが、LAを拠点にするBrudが手がけるリル・ミケーラ(Lil Miquela)でしょう。2016年から「Instagram」に登場し、フォロワーは300万人以上。ミケーラはミュージシャンとしても活動し、Spotifyで楽曲を配信するなど実在する人間と変わらない存在感を発揮しています。ちなみに、同サイトでは、ミケーラがリアルか?という質問に対しては、「リアーナと同じくらいリアル」と回答しています

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Image: PHOTO VIA INSTAGRAM

また、2018年秋、フランスのラグジュアリーブランド「Balmain(バルマン)」は、3人のデジタルモデルを起用したキャンペーンを開始。2人のモデルはBalmainの専属モデルで、3人目のシュドゥ・グラム(Shudu Gram)は世界初のデジタルスーパーモデルとして知られ、人気を博しています。

英国のファッションフォトグラファー、キャメロン=ジェームズ・ウィルソン(Cameron James-Wilson)が生み出したシュドゥは、Instagramで21万人以上のフォロワーをもつデジタルと現実の境界線を曖昧にする存在。人工知能は備わっておらず対話することはできませんが、ファッション業界のエンパワーメントと多様性のメッセージをレペゼンしているといえます。ちなみに、シュドゥは、ヴァーチャルモデルのエージェンシーである「The Digitals」に所属しています。

ほかにも、フランスのNoonoouriや日本のImmaなどがヴァーチャルインフルエンサーとしての影響力のある存在として知られています。K-POP最大手のSMエンタテインメントがガールズグループAespaにヴァーチャルメンバーを入れたことも記憶に新しいでしょう

こうした状況を面白くパロディ化したのは、フライドチキンでおなじみのKFCコーポレーション。アイコニックなカーネル・サンダースが、最高のインフルエンサーライフを謳歌している様子がInstagramに投稿されています

DIGITAL & FASHION

デジタルの可能性

ヴァーチャルの世界をお金につなげている例は、ファッション業界で多くみられます。

オンラインマーケッターのカテリーナ・リロイ(Katerina Leroy)は『Enterpreneur』に対し、「ブランドは、ヴァーチャルインフルエンサーを『完全にコントロールできる適切な人物』として起用できる。また、ネガティブなフィードバックのリスクを減らすことができるメリットもある」とコメント。実際に、『HypeAuditor』によると、ヴァーチャルインフルエンサーはリアルなインフルエンサーの約3倍のエンゲージメントがあるとしています。また、ヴァーチャルインフルエンサーのコアオーディエンスは18〜24歳までのGen Zの女性なのだとか。

こうした状況を、アムステルダムに拠点を置くデジタルファッションハウスThe Fabricantのファウンダー、ケリー・マーフィー(Kerry Murphy)は、「デジサピエンス」というキーワードで説明しています。

彼は『Mission Mag』のなかで、「デジサピエンス(Gen Zと若いミレニアル世代)は世界で約35億人いて、総支出額の55%以上を占めています。彼らにとって仮想空間は、第2の故郷。現実とファンタジーを曖昧にしながら成長している」と述べています。「デジサピエンスはトレンドセッター、トレンドチェイサーであり、そして、自分たちの存在をアップグレードして解放する、あらゆるテクノロジーのアーリーアダプターなのです」とも言います。

そのコンセプトは、決して新しいものではありません。すでにモバイルやタブレットでスタイリングを楽しむ新たなかたちのファッションゲームアプリ「COVET Fashion(コヴェットファッション)」の存在は広く知られていますが、同アプリは2018年には5,340万ドル(約58億円)を売り上げたと報じられています。

ちなみに、The Fabricant のゴールは「ファッションを民主化し、トレンド、季節性、サイジングを超え、ユーザーとの継続的な対話とフィードバックのなかで共同創造」し、「集団的知性によってデザインを進化させる」ことにあるとされています。『Forbes』が指摘している通り、こうしたデジタルファッションが在庫の過剰在庫を減らすなど、サステイナビリティの観点からも意味をもつことは、注目しておくべきでしょう。

VIRTUAL LIKE REAL

Gen Zと仮想世界

ヴァーチャルインフルエンサーのアイコンとしての活躍が目立つ一方で、GenZは、自身の仮想空間での活動を司るために「アバター」を創造しています。

GenZは、デジタルアバターを自分たちの延長線上にあると考えています」と言うのは、「PitchFWD」創設者でニューヨーク大学で非常勤教授を務めるサマンサ・ウォルフ(Samantha G. Wolfe)。彼女は『Forbes』に対して、次のように述べています

「GenZは個性を愛し、社会的な構造に異議を唱える世代。仮想世界で過ごす時間が増えるにつれ、自分自身をユニークに表現したいと思うのは理にかなっています」

「彼らはまず、ブランド品や服、とくに自分たちと真に関係のあるものを購入することから始めるでしょう。しかし、それは新しい種類のファッショナブルな表現や、メタバース(インターネット上に構築される仮想の三次元空間)でしかできない新しい種類のデザイナーのために、大きな機会を提供してもいます」

GENIES CREATES

生活に馴染むアバター

パンデミックの最中に大ブームとなった『どうぶつの森』は、GenZのアバターへのオブセッションを象徴する好例といえるでしょう。古くは「Sims(シムズ)」や「Second Life(セカンドライフ)」のようなデスクトップゲームが登場した約20年前にさかのぼるアバター。今日では、メッセージングやソーシャルメディアプラットフォーム上で自分自身を表現するために使用されることが多くなってきていると、『Digiday』では述べられています

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Image: VIA TWITTER

「Snapchat」で自撮り写真からスタンプがつくれる「Bitmoji(ビットモジ)」や、iMessageの「Memoji(ミーモジ)」などで、一度アバターをつくったことがある人もいるでしょう。

そして、いまとくに注目されているのが、アバターアプリ「Genies(ジーニーズ)です。Geniesは、アカシュ・ニガム(Akash Nigam)とエヴァン・ローゼンバウム(Evan Rosenbaum)が2018年にローンチ。自分自身に似せた3Dアニメーションのアバターをつくることができ、「WhatsApp」や「iMessage」「LINE」「WeChat」などのメッセージングアプリや、InstagramやSnapchatのようなソーシャルメディアプラットフォームでも使用できます。同社はこれまでに4,180万ドル(約44.7億円)の資金調達を行っています

2020年に公開された、調査会社Zebra IQの「Gen Z Trends Report」も、Geniesをアップカミングな企業として選出。セレブリティとのコラボレーションでも知られていて(ジャスティン・ビーバーやカーディ・B、リアーナ、ショーン・メンデスと、錚々たる面子)、バスケットボール選手などの一流アスリートと提携した「アバター・エージェンシー(Avatar Agency)」を2019年に設立しています。Geniesは、メンデスのために一点物のデジタルグッズを販売する予定ですが、これは、以前、サッカー選手のメスト・エジル(Mesut Ozil)のデジタルウェアラブルを50万ドル(5,350万円)で完売させたことに続くものだといいます。

企業としては、グッチやニューバランス、チートス(Cheetos)、さらにはNBPA(全米バスケットボール選手協会)などがマーケティング戦略にGeniesを使用しています。グッチは2020年10月にも、2018年から提携している契約を拡大し、ユーザーがグッチのアプリ内でオリジナルの3Dアバターを作成できるようになったことを発表(これまでは2Dで展開)。また、GIFアニメーションのGIPHYも、Geniesの3Dアバターを導入しています。

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Image: PHOTO VIA genies.com

同社CEOのニガムは『VentureBeat』とのインタビューで、「わたしたちは、アバターがどのように見え、ユーザーにとって何を意味するのかを再発明しようと努力してきました。3Dは、よりダイナミックな能力をもっています。また、デジタルグッズを使ってより多くの『遊び』も実現できます。SDK(ソフトウェア開発キット)を使用することで、当社の3Dアバターをサードパーティのプラットフォームに初めて提供できるようにもなりました」と述べています

Geniesのユーザーの大部分は18~25歳。つまり、デザイナーブランドが取りこぼしているGen Zのオーディエンスにリーチするための鍵となる、重要なプラットフォームになっているのです。

NEW COLLABORATION

NFTとの取り組み

このパンデミックでさまざまなイベントが中止になるなか、インフルエンサーとファンが交流する場としてもアバターは使われています。Geniesは最近、ブロックチェーンゲーム「クリプトキティーズ」などを開発するDapper Labs(ダッパー・ラボ)とコラボレーションを発表しました

ダッパー・ラボは2020年10月、独自のブロックチェーン「Flow(フロウ)」で構築したNFT(ノンファンジブル・トークン)トレーディングカードゲーム「NBA Top Shot」のオープンベータ版をローンチしたことでも注目されました。ダッパー・ラボのマーケティングおよびチームパートナーシップの責任者であるケイティ・テッドマン(Caty Tedman)によると、同ゲームはこれまでに2億3,000万ドル(約246億円)以上を売り上げているといいます

「将来的には、自身のデジタルアイデンティティをパーソナライズできるようにしたいと考えています」と、ダッパー・ラボのCEOであるロハム・ガーレゴズルー(Roham Gharegozlou)は言います。「デジタル資産」として話題になっているNFT市場との取り組みにおいても、アバターは欠かせない存在になっているのです。


COLUMN: What to watch for

Second Lifeがブーム

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Image: LINDEN LABS

本文でも紹介されていた仮想世界プラットフォーム「Second Life」がいま、2003年の「建国」以来の盛り上がりを見せています。パンデミックの影響で現実世界の経済が低迷するなか、 Second Lifeは好調でした。運営するLinden Lab(リンデン・ラボ)のCEOであるエブ・アルトバーグ(Ebbe Altberg)は、「ゲーム内のGDP全体で30~40%の増加が見られます」と語っています。Second Lifeでは、アバターが提供する商品やサービスを通じてゲーム内でリンデンドル(Second Life内の仮想通貨)を獲得すると、プレイヤーはそれを米ドルに換金することができます。2020年、プレイヤーは7,300万ドル(約7.8億円)を稼ぎ、現金化したといいますが、これは2019年の6,500万ドル(約6.96億円)から順調に成長しています。パンデミックが起こったことで、正直これまでパッとしなかったSeond Lifeに、ようやく人びとは目を向け始めています。


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