OECDの原子力機関、福島事故10年で報告書 危険軽減は「成功」

福島第1原発 =2020年12月8日(本社ヘリから、納冨康撮影)
福島第1原発 =2020年12月8日(本社ヘリから、納冨康撮影)

 【パリ=三井美奈】経済協力開発機構(OECD)の原子力機関(NEA)は3日、東京電力福島第1原発事故から10年間の対応と課題をまとめた報告書を発表した。事故現場の危険軽減の努力は「非常に成功した」と評価する一方、原発事業では、地元の住民や自治体が意思決定に参加できる制度作りが重要だと指摘した。

 報告書の表題は「福島第1原発事故から10年 進展と教訓、課題」。日本やNEA各国の規制当局向けに、規制環境▽廃炉の技術▽廃棄物の管理▽被害補償-など9項目の勧告を盛り込んだ。

 福島第1原発については、「冷温停止により、事故炉の迫った危機は9カ月で制御された」と記し、廃炉への作業が進んでいると現状を紹介した。日本では2012年に原子力規制委員会が設立されたことに触れ、規制環境は「独立性、透明性への対応で著しく改善した」と評価した。

 一方、原発事業では、住民や自治体、非政府組織(NGO)などの利害関係者を意思決定に関与させることが、信頼向上につながると指摘。リスクについても住民に通知し、話し合う必要があるとした。廃炉作業についても、透明性の確保を求めた。

 事故補償については、被災者が内容や金額について正しく把握し、速やかに受給できる仕組みが必要だとして、日本政府に改善の努力を続けるよう促した。

 報告書はまた、2月13日に福島、宮城両県で震度6強の地震が起きたことに言及。福島第1原発の廃炉を「現実的に可能な範囲で、速やかに完了させる必要があることを再認識させた」と記した。

 NEAは13年、16年にも福島第1原発事故をめぐる報告書を発表している。

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