食料価格、インフレ率や所得上回るペースで上昇の勢い-世界的に懸念
Emily Cadman、Deena Shanker、Leslie Patton、Charlie Wells-
コロナ禍からの景気回復期待と緩和的な金融政策背景に商品価格上昇
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悪天候や需要増、新型コロナに伴う混乱ですぐには下落しそうにない
世界の食料価格は上昇している。タイミングは最悪だ。
インドネシアでは豆腐の価格が昨年12月の水準を30%上回っており、ロシアでは砂糖が1年前から61%値上がりした。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)からの景気回復期待と極めて緩和的な金融政策を背景に石油や銅、穀物などの商品価格が上昇し、新興市場は原材料コストの急激な値上がりの痛みを感じている。
北米や欧州の消費者も例外ではないだろう。既にパンデミックに伴う混乱や輸送・梱包(こんぽう)コストの上昇にさらされ、企業は商品価格上昇分を吸収する力を使い果たしつつある。カナダのダルハウジー大学の農産物分析研究所のディレクター、シルバン・シャルルボア氏は「より多くを食料に支払うことに慣れる必要がある。悪化の一途だろう」と語る。
ありがたくない話だが、これからやってくる食料インフレは特別厳しいものになりそうだ。コロナ危機の影響は豊かな国々も例外ではなく、米国ではさらに1320万人が食料不足に陥ったと、食料支援団体フィーディング・アメリカは推計する。
米農務省の統計によると、最も貧しい層では収入の36%を食料に費やしていることが示されており、小売りや輸送など比較的低賃金の職種での大量レイオフも家計に重くのしかかっている。
穀物やヒマワリ種子、大豆、砂糖など主要商品の相場が高騰し、世界の食料価格は1月に6年ぶり高水準となった。悪天候や需要の増加、新型コロナに伴うサプライチェーンの混乱が相まって、すぐには下落しそうにない。
先進国市場では食品の加工過程などがより複雑に入り組んでいるため、短期的な価格急騰には影響されにくい傾向があるが、高水準のコストが長期にわたれば企業はそれをどう転嫁するか考え始める。米食品会社コナグラ・ブランズは、値上げはコスト上昇に対応するために今年講じ得る手段の一つだと指摘した。
ただ、消費者は値上がりをすぐに実感しないかもしれない。価格は据え置いて商品の量を減らす「シュリンクインフレーション」が起きる可能性もある。英政府統計局(ONS)の調査では、食品会社がコスト増とポンド安に見舞われた2012年1月-17年6月に2529製品のサイズが小さくなり、サイズが大きくなった製品数の4倍以上だった。
現在、英国の食料価格は横ばい、もしくは下落となっているが、英小売協会(BRC)のエコノミスト、リリアナ・ダニラ氏は状況が変わると予想し、若干のショックを伴いかねないとみる。10年にわたるスーパーマーケットの価格競争で英消費者は欧州で最も安い価格に慣れており、他地域の消費者より準備ができていない可能性が高いという。さらに欧州連合(EU)離脱に伴う通商面の複雑化と遅延という影響も加わる。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週の議会証言で、食料不安はより貧しい社会をパンデミックがいかに緊張させたかを表す例であり、経済を再び動かす推進力の一つでもあると指摘し、「支援が必要なことが示唆されており、われわれはできるだけ早期に経済を回復させる必要がある」と語った。
原題:Food Prices Are Soaring Faster Than Inflation and Incomes(抜粋)