[ワシントン 26日 ロイター] - 米国の情報機関を統括する国家情報長官室は26日、2018年に起きたサウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件について、サウジのムハンマド皇太子がカショギ氏の「拘束もしくは殺害する作戦を承認した」とする報告書を公表した。

カショギ氏は18年、トルコ・イスタンブールのサウジ領事館で殺害。生前は、米紙ワシントン・ポストにサウジ政権に批判的な論説を寄稿していた。

バイデン政権は、同報告書の公表を拒否していたトランプ前政権の路線から一転し、公表に踏み切り、米・サウジ関係再調整に向けたコミットメントを明示した。同時に、イラン核合意復帰や中東地域の諸問題への対処で最も緊密なアラブ同盟国の一つであるサウジとの強い関係維持に向け、微妙なさじ加減での対応が求められている。

国家情報長官室の報告書は、ムハンマド皇太子が意思決定権を握っていたことなどを踏まえ、「カショギ氏をトルコのイスタンブールで拘束、もしくは殺害する計画をムハンマド皇太子が承認したと認識している」とし、「ムハンマド皇太子は2017年以降、サウジの情報機関を完全に掌握していた。こうした状況下は、ムハンマド皇太子の承認なくしてサウジ当局者がこのような活動を実施できる可能性は極めて低い」とした。

米政府はムハンマド皇太子本人に対する制裁措置は見送ったものの、情報機関の副長官を務めたアフメド・アル・アシリ氏と、警備隊のラピッド・インターベンション・フォース(RIF)に対する制裁を発動させた。国家情報長官室は報告書で、RIFがカショギ氏の殺害に関与したとして名指ししている。

このほか、国家による国外のジャーナリストや反体制活動家に対する行動を標的とした新たな措置の下で、サウジ国籍76人を対象にビザ(査証)制限を実施する。

バイデン政権当局者は、米国がサウジとどのような関係を将来的に構築していきたいか、制裁措置と査証制限で明確なメッセージを送ることになると指摘。オースティン国防長官がムハンマド皇太子とすでに協議を行ったことを明らかにした。

別の当局者は、ムハンマド皇太子に対する制裁発動の議論について、米政府は「国の最高レベルの指導者」に対する制裁措置はこれまで一般的に発動させていないと述べた。

また、関係筋によると、バイデン政権はサウジへの武器売却取りやめを検討しているという。「防衛」兵器の売却については容認される見通し。

米国家情報長官室の報告書について、サウジは「容認できない」と反発。サウジ国営通信によると、外務省は声明で「サウジ政府はこの報告書を完全に否定する」と表明。「この犯罪は個人のグループが引き起こしたもので、サウジ政府はこのような悲劇が二度と起こらないよう、必要な対策を講じた」とした。

ただ同時に「サウジ外務省は米国とのパートナーシップが強固であることを確認する」との見解も示した。

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