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家具販売する事業者としては、材料原価をとにかく低く抑えることは間違いなく正解だけれど、地球全体で見ると、その原価には植樹するという地球への影響としてニュートラル方向のコストはおそらく加味されていない。
私たちが安いものを買うということは、本来であれば一人一人が負担しなければいけない人類が生物として生存させていただいているコストを負担していないということ。
消費行動として安いのは絶対に正解だけれども、それでも私は安易な価格引き下げ圧力に屈しないような経営をしていきたいなと思ってます。
世界を維持するために。
IKEAはけして安いばかりではないけれど、間接費を減らして極力安くしようと努めているし、一方で環境ニュートラルなコストはきちんと支払っている。
こういう企業努力は、本当に評価されるべきだと思っています。
日本は森林率が高いですが、その多くは人工林で針葉樹です。一方、家具には広葉樹の方が向くと言われ、家具用の木材は輸入依存です。
ですが、違法伐採された木材の輸入・使用に対する規制は緩い。
2017年にようやくできたクリーンウッド法も、任意登録した業者が違法木材かどうかの確認を行わないことを禁止するぐらいのもので、罰則もありません(ちなみにアメリカ、EU、オーストラリアの主な違法伐採対策法は罰則あり)。
こうした中、日本でも広く流通しているIKEAのような企業の自主的な取組は歓迎すべきと思います。IKEAは自社製品にFSC認証木材を使用し、大手環境NGOと組んで積極的に森林保護に取り組むなどしています。
とはいえ大量生産・大量消費モデルであることには変わりないでしょうから、さらなる活動の深化を期待したいところです。
このような取り組みが広がることで、気候変動に歯止めをかけられるのか、まだまだわからないですね。
購入した企業はただその森林を「保有」するだけではなく「適切に管理する」つまり植林や伐採もするということで、やりようによってはその取り組みをマネタイズすることも可能です。
日本では、山林の所有権が極端に細分化されていることが、企業による取り組みを妨げる大きな要因になっていて、その集約化を進めればこの分野は一つの産業としても大きな可能性があり、伐採→製材→出荷→植林を回していくことで、それ自体をビジネスとして回し、同時に地球環境にも貢献できる産業が生まれるはずです。
事実、国内の木材自給率は2000年代には19%であったものが、2019年時点で38%にまで回復し、国内で伐採されて製材された木材への需要はまだまだありますが、それを担う企業の取り組みが足りないために、その需要が十分に満たされていないのが現実です。
そこをうまくつなぐ仕掛けを作れば、「地球環境保護」と経済成長の両方に貢献する産業が生まれる可能性があります。
今回のIKEAの例は海外の取り組みですが、これからは日本の森林産業をどのように作りあげていくか、を議論するべきかもしれません。
コロナ禍で自然豊かな栃木に移住したのですが、私が住む場所の市長さんは、田んぼが広がる美しいエリアの土地を買取、新たに市役所を建てようとしています。今の市役所でも問題ないのに、あえてせっかくの自然を壊してまで作る意義が分かりません。市役所があることで町が活性化することよりも、素敵な自然が人を魅了してこの地に渡ってくることの方が多いのでは?と思いモヤモヤしてます。
IKEA のように政府に頼らずに、倫理観がある企業がどんどんあるべき姿を作り上げるのも必要なのではないかと強く思います。
さらに欲を言えば、この環境保護活動をマネタイズしてポジティブな循環を生んでほしい。
近年はSDGsへの取り組みに魅力を感じる人も増えていて、これまでは成立しなかった環境ビジネスが成立すんじゃないだろうかと期待しています。
弊社ではSDGsに積極的な多くの企業をリサーチしましたが、IKEAはその中でもトップレベルといえる取り組みでした。
2011年に、環境関連NPOの創始者でありCEOであったスティーブ・ハワード氏をCSO(Chief Sustainability Officer)として招聘し、全社のサスティナビリティ戦略を推進してきました。2011年から始めていたというのは驚くべき早さです。
またIKEAは、SDGsの17項目をすべて網羅したアクションプランを用意し、推進しています。SDGsは本来、17項目を全てを俯瞰して取り組むべきものなのですが、まだ多くの企業は一部だけ切り取った活動に留まっています。そんな中、IKEAは経営レベルで本気で取り組む企業の一つと言えます。
SDGs先進企業だからこそ、この記事のような大掛かりな投資につながるのだと思います。そして、世界中の人々がそんなIKEAを心から尊敬し、IKEAの商品を買いたいと思うようになっていきます。
日本企業も負けないよう、経営戦略とサスティナビリティ戦略を融合させていって欲しいと思います。