[ワシントン 24日 ロイター] - 米国債利回りの上昇と物価上振れリスクの台頭を背景に、市場で連邦準備理事会(FRB)の早期引き締め観測が強まる中、パウエル議長とクラリダ副議長は24日、景気が明確に改善するまでは金融政策を変更しないというシンプルなメッセージをそれぞれ発信した。

パウエル議長は下院金融サービス委員会で開かれた公聴会で証言し、物価の持続的で憂慮すべき上昇が始まらない限りインフレ高進については懸念せずに、雇用の最大化を目指す姿勢を示した。

インフレ率が2023年まで目標の2%を下回って推移するというFRBの見通しに関する議員からの質問に対し、「FRBは直面する課題を率直に認めている」と応じた。その上で「目標を達成できると確信しているが、3年超の時間がかかる可能性がある」と述べた。[nL4N2KU4Q8]

今春に予想される物価上昇は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後の供給ボトルネックや、経済再開に伴う需要の急増を反映する可能性があるものの、政策対応を必要とするものではないとの認識も示した。

米国が新型コロナワクチンの接種プログラムを拡大し、追加財政出動を計画すると同時に、パンデミック後の経済再開に向けて動く中、潜在的なインフレ高進リスクに関心が集まっており、米国債利回りはこのところ上昇している。

一方、クラリダ副議長は在オーストラリア米商工会議所のオンラインイベントで、金融市場が米経済の見通し改善を織り込んでいるのは「適切な」動きだと指摘し、ここ数カ月で景気に対する自身の強気度合いも増したと述べた。[nT9N2H504N]

しかし、これはFRBのゼロ金利や債券買い入れ策の変更が差し迫ているという意味ではないと強調。「われわれは忍耐強く、非常に慎重に対応し、将来的に取り得るいかなる決定についても、かなり事前からわれわれの考えについて極めて高い透明性を確保する」と表明した。

インフレ率は今春に2%を上回るが、年末までに2%近辺に戻ると予想した。

FRBの債券買い入れ策の変更に反応したテーパータントラム(緩和縮小に対する市場の大混乱)の可能性について語るのは「時期尚早」と指摘。

「われわれには深い穴があり、道のりはまだ遠い。私の景気見通しを踏まえると、金融政策は足元のみならず今年いっぱい、現在の状態が極めて適切だ」とした。

SGHマクロ・アドバイザーズの米国担当チーフエコノミスト、ティム・デュイ氏は、FRBが予想より早期に危機局面の政策を解除する必要に迫られるとの見方が一部で出ているものの、こうした意見は雇用を優先するFRBの新たな枠組みを考慮していないと指摘した。

「FRBを以前の枠組みにはめようとすれば、FRBに先行することになる。FRBはそうした先走りを裏付けることはしないだろう」との見方を示した。また「FRBはデータが政策転換の必要性を示すまで緩和的な政策を維持する方針であり、それには非常に長い時間がかかると想定している」とした。

パウエル議長は「われわれは予測で行動するわけではない」とし、「入手される実際のデータが、目標達成に近づいていることを示す必要がある」と発言。政策変更前に具体的な進展を確認する必要があると強調した。

*内容を追加しました。