2021/2/26

オンラインで大学がアップデート。「共感力」がつなぐ学びを

NewsPicks BrandDesign Editor
コロナ禍は大学の在り方も一変させた──。2020年度は、ほとんどの大学で授業がオンライン中心に。ネガティブなイメージで語られることもあるオンライン授業だが、学びの現場は逆境に屈せず、デジタルの可能性を探求。今、急速に学びを進化させている。場所や時間から解放された先にある、コミュニケーションでつながる主体的な学びの姿とは?

激動の時代を生きる学生、そしてすべてのビジネスパーソンにも通じる、“オリジナルな人生”を歩むために必要な考え方を、青山学院大学の松永エリック・匡史教授に訊く。

準備期間“ゼロ”、大学はオンラインシフトできるか

松永 コロナは、大学にも大きく影響しました。僕が教鞭をとる青山学院大学では、2020年度は丸一年、完全にオンライン授業へと舵を切りました。
 急遽、決まったので準備期間もほとんどなく、毎日が試行錯誤の連続。正直、開始当初は混乱することもありましたね。
 緊急事態だからといって、大学の学びを止めることはできません。どうやって授業を軌道に乗せるのか。
 オンライン化が決まるとすぐに、授業の運営方法やツールの使い方を教授同士で話し合うところからスタート。
 僕が所属する地球社会共生学部は、1学年が200名程度と小規模な学部で、以前から教授同士の横の連携が強かったこと。加えて、教授陣に各分野のエキスパートがそろっており、ITの専門家がいたことが、大きな助けとなりました。
 とはいえ、待ったなしで授業が始まったため、当然、さまざまなトラブルや問題も発生。それらも逐一、教授陣で共有し、解決策を一緒に考えていきました。

遊び心も加えながら、学生の興味をそそる工夫を

 最初に直面したのは技術的な課題。パソコンやツールの使い方、ネットワークや環境の違いという基礎的なところを、一つひとつクリアしていきました。
 例えば、オンラインでは「顔出しするほうがよい」という意見もありますが、そうするとネットワークへの負荷がすごく高くなってしまう。
 僕の授業はライブ形式なので通信の安定性を優先し、学生の顔出しは基本的にはなし。音声とテキストで授業を行っています。
 その代わり、オンラインでも学生が「いかに興味を持てるか」を追求。画面下に自分の姿をスナップカメラで変身した金魚のアイコンにして入れてみたり、女性になったりしたことも(笑)。
※カメラを加工することでバーチャル背景の設定ができたり、顔にエフェクトをかけたりできるレンズサービス
 そんな小さなアイデアをきっかけに、新しいかたちの授業にもおもしろがって参加してくれる学生が多かったです。
 前期が終わる頃、学生からは「レポートが多くて大変」という声も上がりました。教授陣がオンラインに適した評価の仕方がわからないから、課題を出しすぎてしまった。
 これも共有して反省し、学部内で調整。僕の場合は課題は出さず、授業の中でレポートを書く時間を設けるようにしています。

オンライン化はマイナスばかりではない

 悪い点が強調されがちなオンライン授業ですが、僕はメリットも多いと感じています。
 実際、リアルよりも学生の反応は格段にいい。今の学生はチャット文化で育っているので、教室で手を挙げるよりもチャットで質問するほうが抵抗が少ないんですよね。
 対面時以上に、チャットで意見や質問が活発に飛び交い、授業の質も上がりました。ワークショップのような授業スタイルも、ツールの活用などいくつか工夫は必要ですが、ほとんどリアルと変わらずにできます。
 なによりも最大のメリットは、場所や時間に縛られないこと。
 アルバイトの休憩時間や歩きながらでも授業に参加できるし、海外から授業を受ける留学生も。特に新入生の場合は、コロナで上京を見送り、実家で暮らしながら授業を受けるケースも多くありました。
 オンライン授業には、「ライブ形式」と録画された映像を見る「オンデマンド形式」があります。授業のスタイルに合わせて、時間や場所を自分で工夫して学ぶ経験は、学生にとっても大きなプラスの経験になったと思います。
 僕自身も、自宅から大学まで1時間半かけて通っていましたが、往復3時間の移動時間がなくなりました。その時間を授業の準備やミーティングにスライドできるようになったのは、本当によかったですね。

オンラインが広げる「つながり」

 一方で、大学のオンライン化は、学生の孤立という懸念も生みました。
 確かにこれは見過ごせない問題ですが、地球社会共生学部は学生が全員留学する前提の学部なので、もともと個別のサポート体制が手厚く整っていたことが、いい方向に影響しました。授業にちゃんと参加しているか、単位は取れそうかなど、教授陣が細かく学生の様子を見ているんです。
 オンライン前提になったことで、より気軽にメールで相談できる雰囲気が生まれ、学生との“つながり”は以前より深まった印象です。
 知り合いがいない新入生のフォローとしては、必修授業の際にオンラインでグループ分けを行い、いろいろな人と交流できるよう配慮しました。
 秋に1度、感染対策を万全にした上で1年生全員が顔を合わせる機会を設けたのですが、オンラインで交流を重ねてきたおかげで自然とすぐに打ち解けていたようで安心しました。
 改めて、完全オンライン授業に挑戦した1年を振り返ると、デジタルがつながりを広げる可能性を実感する時間だったと思います。

勇気と自信が「オリジナル」な人生を拓く

 とはいえ、常に待ちの姿勢ではつながりは生まれません。つながりを築き、深めるために必要な力は、「他者への共感力」と「自己の確立」だと思います。
 そういう意味でも、「今まで通りの生活ができない中で、大学生が未来を切り開いていくための手助けとなりたい」、そんな思いで Microsoft Surface が掲げる“オリジナルで、あり続ける”のメッセージは、学生たちの心に深く響くのではないでしょうか。
 では、「どうすれば、オリジナルな存在になれるのか?」
 この問いに僕なら、「自分が思ったように生きればいい」と答えます。
 そもそも人間って、全員がオリジナルな存在です。でも、いつの間にか親や周囲、世間の価値観に流され、自分本来のオリジナリティを見失ってしまいがちです。
 いかに流されず、勇気と自信を持って自分の生き方を追求できるか。それこそが、自分の人生の根幹を成す問いになるでしょう。
 肩書は関係ありません。どこの大学、どこの会社に所属する私ではなく、自分にとっての幸せを問い続けること。
 多くの人が誤解しているのですが、自分の人生は、大学や就職先の企業に「選んでもらう」ものではありません。大学も就職先も人生も自分の意思で選ぶことができるし、それがその人独自のストーリーをつくっていく。
 そのためにも、自分が本当は何が好きで、何ができるのかを知っておくことが大切です。
 それがわかれば、共感できる相手とどんどんつながることが可能になる。つながりのなかでクリエイティブな思考も刺激され、イノベーションが生まれていく。
 世界中の誰とでもつながれる今の時代。オンライン授業の経験は、共感を軸につながりを見つけ、主体的に学ぶ自己実現のトレーニングにもなったでしょうね。

最新デバイスは未来への投資になる

世界とつながる扉を大きく広げるオンラインのネットワーク。その可能性の扉を開けるには、ツールが必要だ。パソコン、タブレット、スマートフォンなど、マルチデバイスを使いこなすことは、もはや現代の学びの必須スキル。

そんな時代の中、新大学生を応援するのが、マイクロソフトとビックカメラがスタートしたオンライン接客での購入サポートだ。コロナ前後で変わった大学生のデバイス事情、オンラインでの接客のメリットについても、松永教授に聞いてみた。
 今の大学生の生活は世間が思う以上に、スマートフォンが中心。積極的にパソコンを使いこなしているのは一部という印象がありました。
 オンライン授業は、そういう大学生にもパソコンが身近で使えるツールだということを改めて教えてくれたと思います。
 大事なのは、デバイスの使い分け。外から授業に参加するならスマホやタブレットでいいし、よりクリエイティブな作業をしたいときはパソコンなど、目的に合わせて最も適した使い方をするのが一番効率的です。
 さらにいうと、最新のデバイスに触れることは、大学生にとっては大切な自分の未来への投資になります。
 タッチペンを使ってデジタルなノートで情報を整理したり、ファイルをオンラインで共有して一緒に作業したり。視覚や聴覚に訴えるVRやARなど、五感を使うツールもますます増えていくでしょう。
 最新技術にどんどん触れることで、クリエイティブな発想が生まれていくし、学び方も進化していく。
 その点でいうと、 Surface Pro 7 のようにキーボードを取り外して、タブレットにもパソコンにもなるのは、非常に便利ですよね。軽いのもいい。
 時代はモノからコトへ移り、所有よりシェアだ、といわれています。
 しかし、何かをオンラインでシェアするには、個人がデバイスを所有していることが前提。せっかく所有するならば、愛着をもって使えるものを選びたい。
 選択基準としてスペックはもちろん重要ですが、デザインやファッションの一部として楽しむという目的があってもいい。付け替えできるキーボードの色をファッションやインテリアに合わせて選ぶとか、ステッカーを貼って自分のセンスを表現するのもひとつの方法です。
 自分なりのこだわりたいポイントがあるからこそ、オンライン接客で具体的なアドバイスをもらいながら選べ、チャットでさっと質問できるのは、いまどきの学生にぴったりのサービスだと感じました。
ビックカメラのサイトでは、動画とチャットを使ったオンライン接客を実施中。毎週火・木・土・日曜日、12:00から21:30。土・日はライブ配信。

主体的につながる努力を

 コロナの状況にもよりますが、青山学院大学では新年度から全面的に対面授業を復活させる予定です。とはいえ、単純に“コロナ以前”に戻すのではもったいない。 
 この1年で培ったオンライン授業のメリットも生かしながら、大学の学びをもっとアップデートさせていきたいと思っています
 オンラインの世界と私たちをつないでくれるデバイスは、これからの時代、体の一部のようなもの。その先には、言葉や距離の壁を超えて共感し合える、広い世界が待っています。
 大事なのは、自らのオリジナルを探求し、共感できる相手を見つけ、つながること。
 オンラインは決して孤独な世界ではありませんが、主体的につながる努力をし続けることは、これからの時代、より重要になると思います。