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2021年度、国はどんなロボットに投資するのか?(経済産業省編)

仕事柄、ロボットの研究開発の国家プロジェクトに携わらせて頂くことが、そこそこあります。いろんな人と話していると、「国家プロジェクトでどんなことをやっているのかさっぱりわからん!!」という意見を貰うことが結構あります。

今回は、ロボットに関する国家プロジェクト(以降、国プロ)ってどんなものがあるの?というのを紹介したいと思います。と言っても開発中の内緒のモノについては言えないので、国の予算としてオープンになっている情報を中心に見て行きましょう!!

国プロとして、ロボットに関連する予算を組んでいる省庁は結構あります経産省、文科省、国交省、農水省、厚労省などなど。基礎的な研究開発は文科省、ちょっと応用よりなのは経産省、現場に近いものは現場のフィールドに応じて製造業関係は経産省、農業は農水省などなど、という感じでしょうか。

あまりにも多いので、2回に分けて纏めて行きたいと思います。第1回目の今回は、最も多くのプロジェクトが組まれている「経済産業省」のプロジェクトを見てみたいと思います。

追記:後半の国交省、農水省などの纏めは以下です。

情報ソースは経済産業省の予算関係のホームページに載っているPR資料などのオープン情報を勝手に拾って来ただけですので、抜け漏れがあるかもです。また、情報の正確性は責任を持ちません。
(漏れをご指摘頂ければ追加します)

先に感想を纏めておくと、「ロボット」と銘打った事業自体はと少ない気がしますが、AIとかIoTなど他の技術と組み合わせた事業やロボット技術が関連する事業は結構あるなという印象です。

ロボットど真ん中

そんな中、最もロボットの要素技術っぽい研究開発を含むのが「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」

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「ロボットフレンドリーな環境を整備」するという内容と「ロボットの要素技術の研究」を行うという2本柱です。昨年度から開発が始まっている事業で、ロボットフレンドリーな環境整備としては、施設管理、小売、食品製造などの人手不足が顕著な分野へロボットを導入していく上で、導入コストの低減につながるロボットを導入しやすくする環境(ロボットフレンドリーな環境)の整備に関する研究開発が行われています。例えば、様々なロボットが様々なエレベータに搭乗できるようにするための通信仕様や運用方法等についての研究開発がされています。

また、屋外環境の構築に関しては、ラストマイル宅配を対象として配送ロボットなどを事例として、2020年度は開発が実施されています。いくつかは実証リリースがされています。

以下のNoteでも2020年度の取り組みを纏めています。

要素技術の開発に関しては、主にマニピュレーションの研究がなされています。代表的な取組みは、川崎重工業、デンソー、ファナック、不二越、三菱電機、安川電機の産ロボメーカ大手6社で、産学連携により産業用ロボットの基礎技術研究を行う「技術研究組合 産業用ロボット次世代基礎技術研究機構」【ROBOCIP (ロボシップ)】が設立されました。この中では、多品種少量生産現場をはじめとするロボット未活用領域においても対応可能な産業用ロボットを実現するための要素技術として、「モノのハンドリング及び汎用動作計画に関する研究」、「遠隔制御技術に関する研究」、「ロボット新素材とセンサ応用技術に関する研究」などが行われています。


AI・IoTなど

AIの研究開発ということで、⼈との協調性や信頼性を実現するAIシステムの研究開発や、⾃律・リモートシステムに必要なAI技術の研究開発を行うという目標になっているのが、「IoT社会実現に向けた次世代人工知能・センシング等中核技術開発」プロジェクト。おそらく昨年度まで「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」と「IoT社会実現のための⾰新的センシング技術開発事業」が融合された事業なんだと思います。IoT推進に必要となるAIだけでなく、センサそのものも尖ったものを開発していこう!というプロジェクトになるのではないかと思われます。

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以下、2020年度資料より参考図を抜粋。

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AI×ロボットの中でも出口を意識したものになっているのが、「次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発事業」です。このプロジェクトでは、「交通」「プラント」「発電」「土木」「流通」で新たな領域へのAI導入を加速するAI技術の開発・実証とかを行っているようです。2018年度から取り組みが行われていて、推進されている具体的な内容はパンフレットで確認することができます。

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そして、よりデータを効率的に活用するためにデータ共有プラットフォームを開発するのが「Connected Industries推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業」。2019年度から始まった3年プロジェクトのため、2021年度が最終年度になります。重点5分野(「⾃動⾛⾏・モビリティ」「ものづくり・ロボティクス」「素材・バイオ」「プラント・インフラ保安」「スマートライフ」)で使えるAIシステムが生み出される予定です。2020年度の採択先はこちらで発表されています。ロボット関係会社としては、ロボットの共通制御ソフトなどを開発する Rapyuta Robotics 株式会社が「倉庫運営プラットフォームの開発」のテーマで採択されています。

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製造業

製造業に絞った取組みとしては「5G等の活用による製造業のダイナミック・ケイパビリティ強化に向けた研究開発事業」があります。ロボットそのものは明示されていませんが、ロボットを含む製造のラインにおいて、5Gなどを使って柔軟・迅速な組換えや制御が可能な生産ラインを実現することを目指しています。2021年度から始まるプロジェクトということで、全貌がわからないところがありますが、「異なる生産設備等を一括で最適制御するためのプログラム」とか「クラウド上からの制御指示を個々の生産設備等に正確か
つ迅速に伝達するための技術」
が開発されるようです。どこまで5Gが活用されるかはわかりませんが、コロナのような不測の事態が起こったとしても、企業間、企業内、製造現場といった各レイヤーにおいて、柔軟・迅速な対応によりこれに対応する「企業変革力」(ダイナミック・ケイパビリティ)が強化され、より柔軟か強靭なサプライチェーンが実現されていくんだと思われます。

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自動運転

自動運転、MaaS関係では2021年度から新たに「無人自動運転等の先進MaaS実装加速化推進事業」が5年間のプロジェクトとして始まります。最終的には、40以上の地域で無人自動運転サービスが実現されることになっています。技術的には、「遠隔監視技術により1名の監視者が3台以上の車両の運行管理技術」「歩行者・車両が混在する地域で道路上の情報等を活用し安全かつ円滑な自動運転技術」などが開発され、物流、買物、医療・健康などの課題解決を図る先進的なモビリティサービスの実証が行われます。

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ドローン

2022年の有人地帯での目視外飛行(レベル4)の実現を目指すのが、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」です。2017年度~2021年度のプロジェクトで、物流やインフラ点検等の分野で活用できるドローンの社会実装を世界に先駆けて進めるため、分野に応じて求められる機体性能の評価手法や運航管理と衝突回避の技術の開発を行っています。「空飛ぶクルマ」と呼ばれる大型の人搭乗型ドローンについても調査研究を行うようです。

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なお、このプロジェクトの中でWorld Robot Summit(WRS)に関する様々な取組みが行われています。位置付けとしては国際標準化となっていますので、WRSを通じて標準化すべき項目やあるべき性能・評価方法などの検討がなされていくものと思われます。

2020年度までの開発内容・体制は、こちらなどで確認することができます。

医療・介護

「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業」の中で、「ロボット介護・福祉⽤具開発プロジェクト」が実施されます。このプロジェクトの中では、感染症対策などの新たな課題に対応する、ニーズ由来のロボット介護・福祉⽤具の開発が行われ、2027年度までに9件のロボット介護・福祉⽤具の実⽤化が目標となっています。また、安全性や効果評価等海外展開につなげるための環境整備を行われる予定です。

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今年度から新たに始まるプロジェクトとのことですが、これまで行われてきた「ロボット介護機器開発・導入促進事業」や「ロボット介護機器開発・標準化事業」の後継となるプロジェクトでしょうか。報告書による目標50件に対して、32件の実用化と未達になっていますが、数としてはかなり多いですので、今回のプロジェクトにも期待ですね。

福島プロジェクト

東日本大震災の後に始まったのが、「福島イノベーション・コースト
構想」
。ロボット関連では、陸・海・空のフィールドロボットの開発や評価・実証を行うことができる「福島ロボットテストフィールド」などの整備が進められています。

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いかがでしたでしょうか?
こうやって眺めてみると、経産省だけでも結構プロジェクトがあるな!という印象です。

私もこれまでに複数の国プロで研究開発をさせて頂きましたが、税金を使っている以上、しっかりと成果を社会に還元出来ていければと思います。

次は他の省庁も見てみたいと思います。
また来週~〜

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安藤健(@takecando)

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