トヨタ、コロナ禍でも他社引き離す 供給リスク管理で業績回復

トヨタの11月世界生産は過去最多を記録した
トヨタの11月世界生産は過去最多を記録した

 トヨタ自動車は10日、再び通期業績予想を上方修正し、新型コロナウイルス禍での堅調な回復ぶりを見せつけた。世界的な半導体不足の影響で、日産自動車やホンダなどが通期の販売台数の予想を下方修正するなど、自動車業界は減産を余儀なくされている。一方でトヨタは、通期の販売台数予想も引き上げた。自動車各社の業績の明暗は、部品のサプライチェーン(調達・供給網)や関連会社との緊密な連携の重要性を再認識させた。

 「サプライヤーには確度の高い生産計画を提示し、コミュニケーションをしてきた」。トヨタの近(こん)健太最高財務責任者(CFO)は10日のオンライン会見で、半導体不足の影響を抑えられている要因を説明した。

 平成23年の東日本大震災時は部品供給が途絶え、減産が半年間に及んだ。その反省から、サプライチェーンの情報を集約し、供給リスクを知らせるシステム「レスキュー」を構築。半導体については「1~4カ月の在庫を保有するようにしていた」(近CFO)という。

 令和3年3月期のトヨタ車と高級車ブランドのレクサスを合わせた世界生産台数の見通しは、従来の825万台を維持。販売は国内と海外の両方で増え、従来比30万台増の890万台と予想する。

 これに対し、ホンダは販売台数見通しを従来比10万台減の450万台、売上高を1千億円減の12兆9500億円に下方修正した。日産も販売台数の予想を従来比15万台減の401万台、売上高を2400億円減の7兆7千億円に引き下げた。半導体不足が原因だ。

 トヨタは平成21年3月期にリーマン・ショックで最終損益が4369億円の赤字に転落。翌年は黒字転換したが、24年3月期は東日本大震災の影響を受け、減収減益となった。31年3月期に国内企業で初めて売上高30兆円を突破したが、その数字の裏には「地道な努力の積み重ねがあった」と関係者は口をそろえる。

 トヨタの近CFOは半導体不足について「夏まで続くという声もあるが、サプライヤーなどで話していると、そこまでいかないかもしれないと感じている」と見る。ホンダや日産も今年前半までには供給不足は解消できると見込む。

 新型コロナ収束後の反転攻勢に向けた各社の準備が、またその先の業績を左右することになる。(宇野貴文)

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