LINEワクチン相談、コロワくん誕生の陰に医師の苦悩

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朝日新聞アピタル編集長・岡崎明子
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 日本でも間もなく始まる新型コロナウイルスワクチン接種への不安や疑問を、少しでも減らしたい。その一心で集まった若手医師10人が、LINEチャットボットで質問に自動で答える「コロワくんの相談室」を立ち上げた。ワクチン接種の調整を担う河野太郎行政改革相もツイッターで紹介したが、「コロワくん」はどうやって誕生したのか。

1人でやれることには限界

 「いくらSNSで発信したり、記事を出したりしても、追いつかない――」

 米マウントサイナイ医科大学老年医学・緩和医療科の医師、山田悠史さん(37)は悩んでいた。

 昨年8月から米国の病院に勤め、コロナに感染した多くの高齢患者を診てきた。だが直接助けられるのは目の前の患者だけ。人数に限りがあるうえ、日本の患者も助けることもできないという、もどかしさを感じていた。

 新しい技術を使って生まれたワクチンは、コロナの感染収束の切り札になる可能性がある。一方で、副反応への不安やリスクも指摘され、SNS上ではデマのような情報も拡散していた。

 日本の医師免許を持っている者として、少しでも日本の人に貢献したい。その一心から、科学的に確かな情報を寝る間も惜しんで発信してきた。

 だが、1人でやれることには限界がある。そう気づき、「何かできないか」と日本や米国で働く医師の知り合いに声をかけた。

 初めてオンライン会議を開いたのが1月22日。そこから毎日のように会議を開き、「スマホからすぐにアクセスできるツールをつくろう」と動き始めた。

 「厚生労働省や首相官邸、医療機関などのサイトの情報は、探せばたどりつける。でも身近なSNSから情報を得るのが、いまは自然。我々医療者も、そこに寄っていこうと思ったんです」

 急ピッチで作業を進め、2月6日には開設にこぎつけた。

ワクチン接種が遅い日本の利点

 コロワくんを支える医師には、感染症や免疫、アレルギーなど、さまざまな分野の専門家が含まれる。

 LINEで友だちになると、「ワクチンの接種方法」「ワクチンの副反応」など、テーマ別に60のFAQ(よくある質問)を見ることができる。

 質問は、厚生労働省や米疾病対策センター(CDC)などで採り上げられているものの中から選んだ。答えには、根拠となる論文のリンクもつけている。自分が知りたいことが質問にない場合は尋ねることもでき、順次、答えを増やしていくという。

 コロワくんの開設には、ワクチン接種が遅い日本ならではの利点をいかしてほしいという思いもある。

 病院があるニューヨーク州では昨年12月からワクチン接種が始まり、山田さんも接種を受けた。

 ニューヨーク市は相談窓口となるコールセンターをもうけたが、「電話が全くつながらない」「予約ができない」とたちまちパンク。次なる相談先として、コロナの診療で手いっぱいの医療機関に連絡が殺到した。

 山田さん自身も、受け持ちの患者から「全然、予約が取れない」と訴えられ、代わりにコールセンターに電話するなど診療に影響が出たという。

 「日本でも各地にコールセンターができるが、今のままではおそらくパンクすると思います。できるなら日本には同じ経験をしてもらいたくない」

 すでに複数の自治体から、コロワくんをホームページで紹介したいという相談が寄せられているという。

■「何となく不安」という人に…

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