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久保建英はあまりにも気の毒。このままだと宝の持ち腐れ、ヘタフェはなぜ活かせないのか?【分析コラム】

ラ・リーガ第22節、セビージャ対ヘタフェが現地時間6日に行われ、3-0でセビージャが勝利した。久保建英は4試合連続で先発メンバーに名を連ねたが、ヘタフェは2試合連続で無得点。カルレス・アレニャと久保の獲得は、得点力不足の解消へとつながっていない。(文:加藤健一)

text by 加藤健一 photo by Getty Images

一発退場でヘタフェは大敗

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【写真:Getty Images】

 公式戦7連勝、ラ・リーガでも4位につけていたセビージャとの試合が難しいことは戦前からわかっていた。しかし、実際のヘタフェは「それにしても…」と思うようなひどい内容だった。

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 もっとも、ディフェンスは健闘していた。久保建英、マルク・ククレジャの両サイドハーフが献身的にサイドのスペースを埋め、4バックはコンパクトな陣形でゴール前に立ちふさがった。

 35分にセビージャがゴールネットを揺らしたが、ハンドが取られて得点は認められず。DFラインの裏を取ったジョルダンの折り返しをルーカス・オカンポスが押し込んだが、オカンポスのトラップが腕に当たっていた。

 ヘタフェは前半を0-0で折り返すことに成功したが、後半の早い時間に試合が壊れてしまった。ルーズボールにジェネが出した足がオカンポスの足首に入ってしまう。オカンポスが苦悶の表情で倒れている間にOFR(オン・フィールド・レビュー)が行われ、ジェネに一発退場が宣告された。

 10人となったヘタフェは防戦一方の展開に。ジェネの代わりにセンターバックを補充するため、久保は59分に交代。ヘタフェは攻撃的な交代カードを切るが、数的有利を活かしたセビージャが3点を挙げて勝利を収めた。

試合の犠牲となった久保建英

 久保にとってはあまりに気の毒な試合だった。カウンターからネマニャ・マクシモビッチにラストパスを供給したシーンがこの日の唯一のハイライトで、チャンスを作ることがほとんどできなかった。

 久保の問題というよりはチームとして問題がある。前半はセビージャのボール保持率が70%近く、ヘタフェが10人で戦った時間は86%を超えている(データサイト『Whoscored.com』より)。ヘタフェがボールを持てないことは想定内だったが、あまりにもボールを繋げなさ過ぎた。

 ヘタフェの中盤を見ると、ダビド・ティモール、マクシモビッチ、カルレス・アレニャ、ククレジャのパス成功数は10本台。59分に下がった久保は10本パスを出したが、成功したのはわずか6本だった。

 2列目の3人にボールが入らない。入ってもサポートが薄く、セビージャの素早いプレッシングに潰されてしまう。3人の背後でプレーするティモールはボールタッチ数がわずか17回、マクシモビッチも21回と、ボールに絡めていない。DFラインはボールを繋げず、マウロ・アランバッリの出場停止により中盤の構成力は低下していた。

 前方にパスコースのないヘタフェは、最前線のハイメ・マタをめがけて蹴るサッカーに終始した。この展開が予想できていたとすれば、アレニャと久保を起用した意味はどこにあるのだろうか。久保は試合の犠牲になっていた。

ヘタフェでは宝の持ち腐れ

「私は毎日、多くのフィニッシュ、そして枠内シュートを求めている。(そのためには、)すべてのフィールドプレーヤーが攻撃に貢献しなければならない」

 セビージャ戦の前にホセ・ボルダラス監督はそう語った。全員で守ることはもちろん、全員で攻めなければゴールに近づくことはできない。

 3点を挙げたセビージャがいいお手本だった。幻となった前半の1点目と、67分の先制点はDFラインの裏を取る動きからゴールが生まれている。オフ・ザ・ボールの積極的な動きがセビージャは際立っていた。

 パプ・ゴメスの移籍後初ゴールも、フランコ・バスケスがDFラインの前を横切ることで、バイタルエリアにスペースを作っている。ボールを持っていない選手の貢献というのは、皮肉にも敵将が試合前に挙げていたポイントだった。

 一方でヘタフェはオフ・ザ・ボールの動きが乏しく、久保も含めて足下でボールを受ける場面が多すぎた。スペースに出してもそこに走りこむ選手がいないことも多く、簡単にボールを明け渡してしまう。

 時間は言い訳にならない。チームのコンセプトがはっきりしていれば、久保やアレニャのようなインテリジェンスのある選手はフィットできるだろう。チームとしての攻撃の狙いがピッチに現れないので、カウンターと個人の打開以外に攻撃する手段を見出せていない。

 ウエスカやエルチェといった相手にはどうにかなった。しかし、ビルバオやセビージャのようにカウンタープレスの強度が高いチームでは、ヘタフェの中盤は分断されてしまう。

 ボルダラス監督ハードワークを信条とするサッカーで、これまでヘタフェを躍進させてきた。不調にあえぐ今季はボールを保持する攻撃へと舵を切ろうとしているが、やろうとするサッカーに既存の選手たちのスタイルが合っていない。アレニャと久保は間違いなく能力のある選手だが、ヘタフェが今のままであれば宝の持ち腐れとなってしまうだろう。

(文:加藤健一)

【了】

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