fbpx
Photo: Flashpop / Getty Images

Photo: Flashpop / Getty Images

画像ギャラリー
ガーディアン(英国)

ガーディアン(英国)

Text by David Robson

「幸せになりたい」というのは、誰しもが願うことだろう。私たちは人生を充実させるために、目標を立てたり成功を思い描いたり、自身の幸福について考えたりする。しかし、こうした行為がすべて裏目に働いているかもしれない。

私は10代の頃、多くの若者のように不安と不満に悩まされていた。そんな私に、両親は同情するというよりむしろ当惑していた。戦後のイギリスで育った両親はすでに50代だったが、私の不満の原因を必死で理解しようとしていた。

「あなたたち世代の問題は、自分が幸せであることを常に期待していることよ」

母はかつてそう言った。私は混乱した。たしかに、「幸福」は生きる目的だった。だが、私たちはどんなときも幸せであるべく、努力すべきなのだろうか? 当時の私は、自分の手に負えない憂鬱な感情を受け入れる準備ができていなかった。


近年、幸福関連の文献はますます増え続けている。多くの人が私と同じ考えを持っているようだ。しかし幸福を研究し続けてきたなかで、私は現在、母の意見が完全に正しいという結論に達している。

過去10年間にわたる多くの研究で、幸福へのこだわりと高い自信が私たちの人生に対する満足度を低下させており、目標達成を妨げている可能性がある、ということがわかっている。たしかに、幸福を重視することをやめたとき、私たちはより幸せを感じることがよくある。

まず、「幸福を意識的に追求することが私たちの気分に影響を与える可能性がある」ということを考えてみよう。

カリフォルニア大学バークレー校のアイリス・モースの研究のなかで、参加者は一連の意見にどれだけ自分が当てはまるかをチェックした。たとえば「あることが自分の個人的な幸福に影響を与えるときだけ、それを大事にする」「幸せだと感じているときでさえ、自分の幸福について心配している」といったものだ。

この調査で高得点を得た人々は、喜びの最後の一滴のために毎日を楽しんでいるはずだった。だが、モースは彼らは毎日の生活により満足していない傾向があり、比較的ストレスの低い時期でさえ鬱症状になる可能性が高まることを発見した。

もちろん、さまざまな要因が関連しているかもしれないが、モースの別の研究では強い因果関係が示されている。この実験で、参加者の半数は、良い気分であることのメリットを説明する文章を読んだあと、良い気分になるプロのフィギュアスケート選手の映画を観た。だがその結果、感情を揺さぶるストーリーを楽しむ気持ちが高まるどころではなく、自分自身の幸せに意識が集中したため、幸福感が弱まってしまったのだ。

理性的な判断の重要性に関する無味乾燥な記事を読んだ比較対象のグループに比べても、彼らの幸福度は低かった。

不幸になる人の特徴

残り: 3407文字 / 全文 : 4736文字

読者のコメント 0
コメントを投稿するには会員登録が必要です。
ガーディアン(英国)

ガーディアン(英国)

おすすめの記事

loading

表示するデータはありません。

注目の特集はこちら

loading
    • {{ item.type }}
    • UPDATE

    {{ item.title }}

    {{ item.update_date }}更新 [{{ item.count }}記事]

表示するデータはありません。