2021/5/14

【柴山和久】お金の有無で人生の豊かさは測れない

WealthNavi CEO & Founder
一人ひとりに最適な資産運用を提案し、ほったらかしでも自動で運用を続けてくれるロボアドバイザー投資サービス。その国内最大手であるウェルスナビは2020年12月にロボアドバイザー投資専業として日本初となる上場を果たし、公開価格を50%以上上回る初値をつける人気となった。

2015年に同社を創業し、経営の舵取りを続ける柴山和久氏は、東大、財務省、マッキンゼーという華やかなキャリアを歩んできた。しかし、人生の価値観を大きく変える挫折や経済的困窮も経験したという。

預かり資産が4000億円に達したウェルスナビは、資産運用ビジネスを通して何を目指そうとするのか。柴山氏の「お金哲学」に迫る。(全7回)
柴山和久(しばやま・かずひさ)/ウェルスナビ CEO・創業者
1977年生まれ。東京大学法学部卒。ハーバード・ロースクール、INSEAD(MBA)修了。ニューヨーク州弁護士。2000年から9年間、日英の財務省で、予算、税制、金融、国際交渉に従事。その後マッキンゼーに移り、ウォール街に本拠を置く10兆円規模の機関投資家をサポート。2015年にウェルスナビを創業。著書に『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』がある。
INDEX
  • マッキンゼーで金銭感覚が一変
  • 生活水準を上げ過ぎない
  • 本当に大切にしたいことは何か
  • 常に目の前の仕事で頭がいっぱい
  • 仕事が面白いピークで退職

マッキンゼーで金銭感覚が一変

社会に出てから収入や生活に関してジェットコースターのような起伏を味わってきました。これにより、お金に対する私の価値観は大きく変わりました。
(写真:Torsakarin/iStock)
財務省に入省した当時は、英会話スクールに通うために教育ローンを組みました。今のように安価なオンライン英会話などないので、とても高額でした。
留学時や英国財務省に出向していたころは、現地の物価の高さに悩まされましたが、ほとんど外食もしないほど質素な生活を続けました。
財務省を辞めてフランスの経営大学院に留学した際は、財務省時代の貯金と退職金があったので、卒業して就職するまではこれでなんとかしのげると考えていました。
しかし、実際は卒業してから次の職が決まるまでに半年近くかかってしまい、社会に必要とされていないみじめさに経済的な困窮が追い打ちをかけ、どん底の生活を経験しました。
夫婦で1杯のコーヒーを分け合い、スーパーの野菜の値段が30円上がると買うのをためらいました。
しかし、マッキンゼーに入社し収入が上がると、金銭感覚が一変しました。