2021/3/25

【南 壮一郎】一瞬の縁が、人生を決める

Visional / BizReach Founder & CEO
2009年にビズリーチを創業し、即戦力人材の転職市場を可視化した南壮一郎氏。創業10年の節目で社長の座を譲り、同社を含む4社を統括するホールディングカンパニー、ビジョナルの社長に就任して1年が過ぎた。

起業する前には楽天イーグルスの球団設立に参画し、さらに遡ればモルガン・スタンレーからキャリアをスタートさせている。華やかな成功の連続のように映る道のりの原点は、「強烈なマイノリティ体験」だったという。

南氏の「仕事の哲学」に迫った。(全7回)
南 壮一郎(みなみ・そういちろう)/ビズリーチ 創業者、ビジョナル 社長
1976年生まれ。1999年、米・タフツ大学数量経済学部・国際関係学部の両学部を卒業後、モルガン・スタンレーに入社し、投資銀行部でM&Aアドバイザリー業務に従事。2004年、楽天イーグルスの創業メンバーとなり、チーム運営やスタジアム事業の立ち上げを行う。その後、ビズリーチを創業し、2009年、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」を開設。「HRテック」の領域で日本の採用市場を可視化し、新しい働き方を創造。2020年、ホールディングカンパニーのビジョナルを新設し、社長に就任した。著書に『絶対ブレない「軸」のつくり方』『ともに戦える「仲間」のつくり方』がある。
INDEX
  • 本社勤務にこだわる
  • 試合後に汗だくで最終面接へ
  • 「フェラーリの人生を取るか」
  • 一瞬の縁が、人生を決める
  • 退職を決めた理由

本社勤務にこだわる

卒業後は、日本に戻らず、アメリカで就職するつもりでした。
オリンピックの感動の余韻から、「スポーツビジネスに携わりたい」と考えたのですが、信頼を寄せる大先輩から「スポーツに関わる前に、しっかりとビジネスの基礎をつくりなさい」という助言を得て、投資銀行へ路線変更。最もハードな鍛錬場のイメージがあったのと、大学で学んだ国際関係学と数量経済学を生かせる業界だと考えたためでした。
スイス銀行で働く叔父から「本社と支社では仕事の質が大きく異なるから、絶対に本社勤務を志望したほうがいいぞ」と聞かされていた僕は、その言葉通り、「ウォール・ストリートで働く」という一点にこだわっていました。
(写真:Fabrice Cabaud/iStock)
大学4年の秋、在米留学中の日本人向けのキャリアフェアがボストンでも開催されると聞き、僕も参加してみることにしました。
指定された金曜日の朝にスーツを着て会場に行くと、ゴールドマン・サックスのブースにはすでに長い列ができています。事前に履歴書を送っていたモルガン・スタンレーのほうがやや少ない印象でした。

試合後に汗だくで最終面接へ

午前中に面接を終え、会場を後にしようとすると、「午後もインタビューを」と声がかかりました。
「すみません。サッカー部の練習があるので帰ります」と答えると、相手は一瞬ギョッとした顔をし、「では明日土曜の朝に来てください」と。
一番早い時間を指定して翌朝に再訪し、2回目の面接を終えると「最終面接をしたいので午後も残ってください」。
僕は再び丁重に「すみません。今日は試合なので帰ります」と詫びました。
変な学生と思われたに違いありません。僕は付け加えました。
「あ、でも、夜の食事会は参加できます!」。キャリアフェアの最終日には高級レストランで豪華な食事をご馳走してもらえる、という情報を先輩から聞いていたのです。
試合を終え、スーツに着替えて、汗だくのままレストランに向かいました。