2021/3/12

【キャシー松井】女性活躍と多様性こそ日本経済の成長ドライバー

MPower Partners ゼネラル・パートナー
「ウーマノミクス」の提唱者であり、ゴールドマン・サックス証券(GS)の副会長、そしてチーフ日本株ストラテジストとして活躍してきたキャシー松井氏。約30年にわたるGSでの日々において、ほぼ下り坂の日本経済を見据え、女性の活躍推進に尽力してきた。昨年末に退職し、次のステージに進もうとしている。

日系アメリカ人2世として育ち、大学卒業後に初めて訪れた日本での生活も、もうアメリカ生活より長い。農業移民として苦労してきた両親、大学進学が10人にも満たない高校からのハーバード大学進学、そして日本でのキャリア──。

「社会へ恩返しをしたい」と語るキャシー松井氏が描く日本の成長戦略とは。(全7回)
キャシー松井(きゃしー・まつい)/ゴールドマン・サックス 元副会長
1965年米国生まれ。ハーバード大学卒業、ジョンズ・ホプキンズ大学大学院修了。90年バークレイズ証券、94年ゴールドマン・サックス証券(GS)に入社。99年に「ウーマノミクス」を発表し、日本政府が打ち出した「女性活躍」の裏付けになる。『インスティテューショナル・インベスター』誌日本株式投資戦略部門アナリストランキングで1位を獲得。2015年にGS副会長に就任。チーフ日本株ストラテジストとして活躍する一方、アジア女子大学の理事会メンバーも務める。2020年12月にGSを退職。1男1女の母。
INDEX
  • きっかけは自分の産後復帰だった
  • 国の成長ドライバーは3つしかない
  • 多様性が経済戦略へと転換した日
  • 昭和のリーダー像から脱却を
  • 日本の将来を楽観していられる理由

きっかけは自分の産後復帰だった

「ウーマノミクス」を発表したのは、1999年。もう22年も前。書いた理由は、実は身近なきっかけからでした。
息子を生んだのが96年。ゴールドマン・サックス(GS)の基本産休ポリシーは、産休期間4カ月でした。
私は産後休暇をとってすぐに復帰しましたが、周囲のママ友には専業主婦を選んだ人もいれば、もとの仕事やフルタイム勤務に復帰したかったけれども何らかの理由でできない人もいました。
(写真:monzenmachi/iStock)
そんな周囲の様子を見ながら、女性たちが仕事を続けることがいかに大変かと感じました。
バブルが崩壊し、日本が経済的に一番厳しい9年間を迎えていました。
経済は不況、不良債権問題が表面化し、デフレが浸透。財政赤字が大きく膨らみ、私の仕事上、国内だけでなく海外の機関投資家に「なぜ日本に投資する価値があるか」を提案しなくてはいけません。
しかし、なかなかいい答えが出ませんでした。人口統計学上も少子高齢化が進んでいく。日本の成長を促すドライバーが見つからなかった。
そんなとき、頭に浮かんだ言葉は、「もったいない」。
私が仕事上で見ている労働力減少と、働く親として直面している環境を見たときに、その言葉を強く感じたのです。
それがウーマノミクスのスタートでした。

国の成長ドライバーは3つしかない