ミャンマーでスー・チー氏拘束 大統領も、クーデターか
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金曜日の時点で現地報道や外電は報じ始めていました。現時点ではNLDスポークスマンは国民に対して冷静に行動するよう発言しており、英語でもtakenと表現されており、機微な状況に対して細心の配慮を払っている模様です。
そもそもは、26日の記者会見で朝日新聞の現地記者が軍のスポークスマンに対して、クーデターの可能性を資したところ、必ずしも否定されず、そこから慌ただしさが出てきた経緯があります。
https://myanmarjapon.com/newsdigest/2021/01/27-28721.php
昨年の選挙結果が今回の動きの背景となっています。実際、選挙前にはNLDが勝だろうが、野党がある程度取れるとの見方が通説的でしたが、ふたを開けてみるとNLD圧勝でした。
選挙不正の有無を外部からは断定できる要素はありませんが、過去に近隣国ではごく小さな手続き的な瑕疵などをとらえて政権がひっくり返ったケースがあります(タイのタクシン政権やサマック政権など)。今回、そうなるという意味ではありません。何らかの政治的なバーゲニングという意図があるからこその行動と思われます。
やられた方にしてみれば、正直、「そこまできちんとやってこなかったでしょう、それに今の国家的なリソースでは無理」という気持ちがあるかもしれませんが、法律や規則等で決まっている以上、つつかれたら何らかの対応が必要になります。
なぜこうかったのかは推測の域をでませんが、近年の近隣国での政治と社会の亀裂から敷衍して考えると、旧来エリートによる不満はあるかもしれません。民政移管10年、そしてNLD政権5年という時間は、過去の利権から外された人々が不満を持つには十分な期間でしょう。民意は選挙を通じて表明されますが、軍部は自らの意図で動くことができます(但し、タイミングと大義名分がポイント)
私がNewsPicks在籍中に執筆した記事は、ミャンマー政治の構造のポイントを理解するために、参考として頂けると思います。
2015年選挙と政治構造について
https://newspicks.com/news/1243976
ロヒンギャ問題について政治構造から解説(非常に複雑でスー・チー氏の置かれた立場が簡単ではないことがわかります)
https://newspicks.com/news/2943014国軍の最高司令官は、1月30日に「軍は憲法を尊重する」という声明を出していました。しかし、今朝の多方面への迅速な措置から見て、クー・デタを綿密に準備していました。
・ミャンマーのテレビ、ラジオは、「技術的問題」として、停止しています。典型的なクー・デタです。
・有線の電話は全て使用不可能にされています。Wifiは使用できるところもあるようです。
・ミャンマーで発着する全ての航空便は全てキャンセルとなることが発表されました。
・スー・チー氏だけではなく、ウィン・ミン大統領も拘束されています。ウィン・ミン大統領は、スー・チー氏と同じ政党、国民民主連盟に所属しています。
・テレビが一時的に映り、国軍による政権の掌握と、第一副大統領であるミン・スエ将軍が臨時大統領に就任することが発表されました。ミン・スエ将軍は、これまでは国軍を代表して、スー・チー氏と同じ政権に入っていました。
今後の展開として、当面重要なのは、大規模な抗議行動が起きるかどうか、ということでしょう。ソーシャル・メディアでは、抗議行動が盛んに呼びかけられています。状況の推移によっては、国軍に数千人が殺された1988年の民主化運動のようなことになるかもしれません。
多民族社会であるミャンマーの各地の少数民族の武装勢力がどちらにつくのか、米国をはじめ欧米諸国がどこまで実効力のある措置をとるのか、も状況を左右しえます。昨年11月の総選挙でアウンサンスーチー氏のNLDは圧勝しましたが、国軍の協力を得られなければどんな政治改革も進められないミャンマーの現状は変わっていません。そんな状況下でもNLDは国軍批判という民主化運動時代からの路線を変えられず、国軍も国軍でNLDとの対決姿勢を強め、両者の対話が非常に乏しかったという事情が背景にあります。以下は11月の総選挙前に聞いたミャンマー政治評論家のインタビュー、このあたりの背景事情を詳しく読み解いています。
スーチー氏「期待外れ」の声 どうなるミャンマー総選挙
https://globe.asahi.com/article/13878169