日本生命、投資先の排出量ゼロに 対応不十分なら売却も
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日本生命は約70兆円もの資産を運用する民間最大規模の機関投資家ですが、今年4月からすべての投融資につきESG評価を行うということが、つい先日記事になっています。
https://www.asahi.com/sdgs/article/art_00063/
機関投資家として資産運用の収益性が重要であることは当然なのですが、この記事の中で、日生の松永陽介取締役専務執行役員は、ESGを重視すべき理由につき以下のとおり仰っています。
「ESG投融資は今までは社会課題解決の側面が強かったように思います。私たちは保険契約者の利益を常に第一に考えますので、従来は資産運用の収益性を見たうえで同じならばESG評価が高い企業に投資しようというスタンスでした。
ところが、最近、ESGが資産運用の収益性に大きな影響を及ぼすようになったのです。ESGは長い目で見て企業の持続可能性にかかわるとされてきましたが、最近はESG評価によって株価などの市場評価に大きな差が出るようになりました。企業がESGに取り組んでいないと株価が下がるなどして、私たちの資産が劣後する恐れが出てきたのです。」
脱炭素に向けた取組みもまさにこの考え方に基づくものなのでしょう。
また、同記事では、ESG評価が高くないから株式を売るというのみではなく、「エンゲージメント」つまり「対話」を重視するとも仰っています。
脱炭素の文脈では具体的にどのレベルでの提案・対話がなされることになるのか気になるところです。
注目のコメント
自動車・運輸や電力産業に対してどれぐらい踏み込んだ提言ができるかに注目しています。
既存のビジネスモデルや事業戦略に沿った脱炭素の取り組み(=延長線上での省エネや脱炭素の取り組み)は、比較的業態によっては取り組みやすいと思います。なので、投資家側の明確な方針ができ、それが外圧となることで、少しづつではありますが確実に効果が出ると思います。その意味で、この流れが加速すること自体は大歓迎です。
一方で、自動車・運輸や電力産業というCO2排出量のウェイトが高い産業にとっては抜本的な削減には、事業戦略そのものを抜本的に見直していく必要があります。今回の日本生命の取り組みはそこまでを意図してはいないでしょう。今後、企業価値にダイレクトに影響するような提言まで踏みこむ投資家がでてくると、ますますこのうねりは大きなものになると思います。日生のアニュアルレポートを紐解くと、2019年年度末時点の一般勘定資産残高は約67兆円。このうち株式と公社債が約半分(47.9%)を占め、投資先は現在約1500社のようです。インパクトの大きさが伺えますね。
生保は一般勘定と特別勘定を抱えていますが、取引先との関係などから「政策保有」している株は一般勘定で運用されています。
政策保有していても、少なくとも建前上は「純投資」の位置づけとしているので、カーボン・ニュートラルをベースとした投資方針を先鋭化させる場合は、政策保有株についても同じ方針が適用されるでしょう。
取引関係を踏まえれば、一般勘定の政策保有株についても強い姿勢で臨めるのか、個人的には関心を持っています。