[27日 ロイター] - SNS(交流サイト)「レディット」のチャットルーム「WallStreetBets」で個人投資家に米ビデオゲーム販売ゲームストップ株の購入を促す呼び掛けが広がり、同株が急騰している問題で、27日遅く、同チャットルームが一時的に非公開化され、招待者しか参加できない設定になった。

これを受け、米株式市場の時間外取引では、これまで急騰していたゲームストップ株などが急落。1時間後に同チャットルームが再び公開されると、下げ幅を縮小した。

その後、同チャットルームのモデレーターは「あまりにも多くのコメントが寄せられ、モデレーターとしての役割を果たせないどころか、すべての投稿を読むことができない状態だ」とのメッセージを出した。

同チャットルームの非公開化を受け、時間外取引ではゲームストップのほか、映画館チェーン大手AMCエンターテインメント、ステレオ・ヘッドフォン製造のコス、セキュリティソフトのブラックベリーが軒並み20%以上急落。同チャットルームの影響力の強さが浮き彫りとなった。

<個人投資家がヘッジファンドを打ち負かす>

この日の通常取引では、ゲームストップ株を空売りしていた複数のヘッジファンドが多額の損失に見舞われ、アマチュア投資家がプロの投資家を打ち負かす格好となった。

規制当局や専門家からは、SNSへの匿名の投稿で特定銘柄の取引が急増する実態を詳しく調査すべきだとの声が出ている。

1週間にわたって続いた個人投資家とウォール街の対決では、ファンド勢がゲームストップ株の空売りで被った損失を穴埋めするため、他の保有株式を売却。27日のダウ工業株30種は2%以上値下がりした。

著名ベンチャーキャピタリストのチャマス・パリハピティヤ氏はCNBCに「普通の人々がプロの投資家と同じ情報を入手でき、双方が同じ結論に至る、もしくは正反対の結論に至るという世界に移行しつつある」と発言。

「解決策は、機関投資家サイドの透明性を強化することであり、個人投資家のアクセスを制限することではない」と述べた。

<ホワイトハウスも注目>

市場の混乱にはホワイトハウスも注目。サキ報道官は、イエレン財務長官も含め、バイデン政権の経済チームが「状況を注視している」とコメントした。

マサチューセッツ州のガルビン州務長官は、ニューヨーク証券取引所に対し、ゲームストップ株の取引を30日間停止し、冷却期間を設けるべきだと主張。「これは投資ではなく、ギャンブルだ。明らかに画策されたものだ」とインタビューで述べた。

ナスダックのフリードマン最高経営責任者(CEO)もCNBCで、取引所や規制当局は匿名のSNSへの投稿による「株価操作」の可能性に注意を払う必要があると主張。異常な取引があれば、売買を停止し、状況を調査する可能性があると述べた。

米証券取引委員会(SEC)は、市場のボラティリティーを把握しており、他の規制当局と協力して「状況を見極め、規制対象の組織、金融仲介機関、他の市場参加者の活動を調査する」と表明した。

レディットの広報担当は、株価急騰に関連して当局からの接触はないと述べた。

<シトロンも空売り解消>

ゲームストップ株を巡る個人投資家とプロの投資家の対決のきっかけをつくったのは、空売りを専門とする米シトロン・キャピタル率いるアンドリュー・レフト氏。

ゲームストップ株に空売りを仕掛けたレフト氏は、WallStreetBets上で標的となり、個人投資家が一斉に買いに動いた。

レフト氏は投稿した動画で、ゲームストップの株価が2週間で10倍近くに跳ね上がったことを受けて、シトロンがゲームストップ株の空売りを中止したと表明。「私は市場を尊重する」と述べた。

ヘッジファンドのメルビン・キャピタル・マネジメントも26日、ゲームストップ株の空売りで多額の損失を出したことを受けて、同株の空売りを解消した。

<新たな空売りも>

ゲームストップ株は27日の通常取引で135%上昇。1月12日以降の上昇率は約1700%に達し、時価総額は240億ドルに膨らんだ。

ブラックベリーの米上場株も27日の通常取引で33%上昇。年初来上昇率は279%に達している。

AMCも27日の通常取引で300%急騰し、年初来上昇率は800%を超えた。

この3社とフィンランドの通信機器大手ノキアは、レディットで話題になったことを受けて、取引高が急増。ノキアは自社株の急騰が続ている理由は分からないとコメントしている。

LPLフィナンシャルのシニア・マーケット・ストラテジスト、ライアン・デトリック氏は、株価が急騰した銘柄について、最終的には適正価格に戻るだろうと予想。

米資産運用大手ブラックロックは、ゲームストップ株への投資で、約24億ドルの利益を上げた可能性がある。同社は昨年末時点でゲームストップの株式13%前後を保有していた。

調査会社S3パートナーズによると、ゲームストップ株の空売り残高は27日時点で106億ドル。株価が急騰する中、空売り残高は過去7日間で1億1700万ドル(1.1%)増えた。

S3のマネジングディレクター(予測分析担当)、イーホリ・ドゥサニウスキー氏は「多くの空売り筋は、多額の含み損を抱え、空売りを解消するだろうが、今後の株価下落を見越して新たに空売りをする投資家もいる」と述べた。

個人投資家の買いを巡っては、ファンダメンタル分析を無視しているとの批判が出ているほか、有力ファンドが空売りしている銘柄に個人投資家が買いを仕掛け、世界的に多額の損失が発生するリスクがあるとの懸念が出ている一方、個人投資家の拡大は健全な動きと指摘する向きもある。