[ロンドン 25日 ロイター] - 英国の科学者が、同国で見つかった新型コロナウイルス変異種について、感染力が高いだけでなく死亡率が従来型より約30%高い恐れがあるとの見方を発表した。

「B.1.1.7」と呼ばれるこの変異種は、英国で広がっている他の型に比べて感染力が最大70%高いとされ、既に世界各地でも感染が確認されている。米公衆衛生当局者らは、これが3月までに米国で最も支配的な変異種になる恐れがあると指摘している。

<英科学者の新たな科学的証拠とは>

死亡のリスクの科学的証拠は、英政府の諮問機関である「新型呼吸器系ウイルス脅威諮問グループ(NERVTAG)」が示した。同一のデータ集合体を使った4種類の別々の研究に基づいている。こうした研究は、地域住民のウイルス検査のデータをコロナ死者と関連づける。

分析結果は研究ごとにわずかに異なっていたが、いずれも「B.1.1.7」変異種に感染した人の死亡率が、英国の他の型に感染した人々よりも高いことを示した。

「B.1.1.7」の方が死亡率が低いことを示す分析結果は皆無だった。

NERVTAGはこの結果を1つのモデルにまとめ、同モデルが平均的な死亡率のリスクを推計した結果、約30%高まるとの数字になった。

<科学者らは分析結果の確度をどの程度と考えているか>

英政府のパトリック・バランス首席科学顧問は22日、様々な小規模情報の集合からデータを取ったため、死亡率の推計には一定の「不確実性」があると述べた。

イングランド公衆衛生局(PHE)の専門家、スーザン・ホプキンズ氏は暫定的な推計値について、変異種感染の流行が確認されている英国の人口のうち、比較的小さな割合を分析した結果だと説明。「全てのデータ源ではなく、一部のデータ源」から得られた科学的証拠が死亡率の高まることを示している状態だと述べた。「まだ、全体像が見えていない可能性はある」とした。

レスター大学の臨床ウイルス学者、ジュリアン・タン氏も、データ量が少ないため、結果は「今後大きく変化する可能性が残る」と述べた。

ただ、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の感染症数理モデル教授、ジョン・エドマンズ氏は25日、分析結果の不確実性について意見を問われ、分析結果は「統計上有意」であり真剣に受け止めるべきだと述べた。

エドマンズ氏は「かなり多くの科学的証拠がある。意義は小さくない」とし、一朝一夕ではなく「われわれが数週間かけて取り組んだ」結果だと擁護した。

<死亡率が高まる仕組みは分かっているか>

科学者らはその点について、まだ確信を持っていない。だが、解明に取り組んでいる。

PHEのホプキンズ氏は「この変異種の科学的証拠はまだ出てきている途中であり、仕組みを完全に理解するための研究は続いている」と述べた。

しかし、この変異種は、人間の細胞により強く結び付くことができるようにウイルスの一部が変異したという点は分かっている。

NERVTAGの座長を務めるオックスフォード大学のピーター・ホービー新種感染症教授は「実際に観察されている感染率上昇および、可能性として考えられる重症化リスク上昇の両方の原因として、これが生物学的に見て最も妥当な説だ」との考えを示した。

レディング大学のサイモン・クラーク細胞微生物学助教授は、より強く人間の細胞と結び付くという特徴が「免疫システムの強い過剰反応を引き起こし、これが症状の最悪化を招き、死に至らしめる可能性」を指摘した。

<死亡率上昇はどのくらい懸念すべきか>

死亡率が推計で約30%高まるという分析の1つを主導したロンドン大のエドマンズ氏は、この科学的証拠について「非常に深刻な状況暗転だ」と指摘。「このウイルスは非常に深刻なものであり、非常に深刻に受け止める必要がある」との考えを示した。

一方、PHEは書面で、(全ての年齢グループにわたる)新型コロナ感染1回当たりの死亡の絶対リスクは「新たな変異種でも従来型でも、依然として低い」と強調している。