[東京 26日 ロイター] - 日銀が昨年12月に開催した金融政策決定会合で、上場投資信託(ETF)などの買い入れを巡り、複数の委員から、当面は積極的な買い入れを維持するものの「市場機能への影響や日銀の財務安定性にも配意し、市場の状況に応じた柔軟な調整の余地を探るべきだ」との意見が出されていたことが分かった。

日銀が26日、決定会合の議事要旨を公表した。12月の決定会合で日銀は、政策点検の実施を決定。3月の決定会合をめどに点検結果を公表する。

決定会合では、何人かの委員が「感染症の影響により、2%の物価安定目標の実現に時間がかかる可能性が高い」と発言。こうした見方が政策点検を実施する背景の1つになった。何人かの委員は、ウィズコロナの状況を踏まえ、「2%目標をどのように実現していくか、これまでの政策の効果をあらためて分析した上で総合的に検討することが必要ではないか」と述べた。

委員は、現行の「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和」は現在まで適切に機能しており、変更は必要ないとの認識を共有。多くの委員が、現在の枠組みを前提に「資産買い入れやYCCの運営などの各種の施策について、点検を行うことが適当だ」と指摘した。

ある委員は「金融緩和の効果と副作用を点検し、必要に応じて持続性や効果を高める改善を図るべきだ」と述べた。1人の委員は「戦略、手段、コミュニケーションについて、海外中銀の取り組みや学術研究等も踏まえて点検すべきだ」と付け加えた。

ETFなどの買い入れについて、複数の委員が「これまで大きな役割を果たしてきており、引き続き必要な施策だ」と述べた。このうち1人の委員は「出口を検討するのは時期尚早」と発言した。「現在の資産買い入れ方針のもとでも柔軟な買い入れが可能だが、さらなる工夫の余地がないかは検討に値する」(ある委員)との発言もあった。

YCCの運営について、複数の委員は「柔軟な運営で持続性を高めつつ、経済・物価・金融情勢の変化に対して、効果的に対応できるよう備えておくことが必要だ」と指摘した。別の1人の委員は「イールドカーブの緩やかなスティープ化は、金融緩和の長期化と金融システム安定の両立の観点から望ましい面もある」と話した。

政策点検の目的について、何人かの委員は「2%目標実現に向けて金融緩和を続けていくことにある点を明確にしていくこと重要だ」と強調した。大方の委員は、2%目標やオーバーシュート型コミットメント、政策金利についてのガイダンスを見直す必要はないとの認識を共有した。

<ワクチン期待の株高に警戒感>

日銀は12月の決定会合で、新型コロナウイルスの感染拡大で厳しい経営を強いられている企業の資金繰りを支援する「特別プログラム」の期限を2021年9月まで半年延長することを決めた。

会合では、当面、企業等の資金繰りにはストレスがかかり続けるとの見方を委員が共有。多くの委員が「感染症が再拡大し不確実性が依然として高いもとで、早めに特別プログラムの延長の方針を示すことは、同プログラムを利用する金融機関や借り手企業などに安心感を与え、資金繰り面でのストレスを緩和することにつながる」と述べた。

新型コロナの感染が拡大する中でも、東京株式市場では主要株価指数が堅調に推移している。複数の委員が「足元の市場センチメントの改善は、ワクチンへの期待が先行している面もあることから、金融市場が大きく変動するリスクには引き続き注意が必要」と指摘した。緩やかなドル安・円高について、何人かの委員が為替をはじめ金融市場の動向には引き続き注意が必要だと話した。

<苦境の対面型サービス業、雇用への影響注視>

景気の先行きについて、多くの委員は「感染症の拡大が続く中で、対面型サービス業を中心に不透明感が強まるなど、回復ペースが一段と下押しされるリスクがある」と警戒感を示した。ある委員は、対面型サービス業は雇用者数が多いため、影響を「注意してみていく必要がある」と述べた。

一方、ある委員は「輸出の持ち直しの動きは予想を上回るペース」と指摘。委員は、自動車関連のペントアップ需要の一巡から減速するものの、世界的な設備投資需要の回復やデジタル関連の需要の堅調さなどに支えられて、輸出・生産は増加基調を続けるとの見解を共有した。また、サービス業の建設投資の弱さは続くものの、輸出・生産の回復で製造業の機械投資は増加するため、設備投資全体では徐々に持ち直していくとの見方も共有した。

物価については、複数の委員が「エネルギー価格やGoToトラベル事業による宿泊料の割引といった一時的な要因を除けば、消費者物価の前年比は小幅のプラスを維持しており、経済の落ち込みに比べると底堅い」と指摘した。

*内容を追加しました。

(和田崇彦 編集:山川薫)