生活の困窮、パートナーからのDV、予期せぬ妊娠……コロナ禍で苦境に立たされる人が増えている。SNSやネットニュースのコメントでそんな状況の告白に対して、自己責任や考えの甘さを指定するレスが、増えている。

 

SNSを中心に、体型に関するポジティブなメッセージを配信し続けている、プラスサイズモデルの吉野なおさん(モデル名:Nao)のところにも、自己責任論を突き付けられて苦しむ人たちからの悩みが増えているという。

「太ったのはだらしない生活のせい」「デブと言われるのは自業自得」「心が弱いから摂食障害になる」といった刃物のような言葉たち。今回は、ネットに増加する、呪いの「自己責任・自業自得」について、自らの経験とともに執筆してくれた。

コロナ禍になって一層、ネットでは助けを求める人たちに対して自己責任、あなたの努力不足と言葉が増えている。photo/Getty Images

人生の失敗や不幸はすべて自分の責任なのか?

あなたはこれまでの人生で「あのとき、あんなことしなければよかった」「別の選択肢を選べばよかった」と後悔したり、反省した経験はあるだろうか?

就職した会社がブラック企業だったとか、良い人だと思って付き合ったらモラハラ男だったとか、安く買えたと思った物がすぐ壊れてしまったとか。物事の程度に差はあれ、後になってもっと良い選択に気づくパターンは、誰もが身に覚えがあると思う。

日本人の私たちは、日常生活で悪いハプニングが起きると、その人自身の過去に悪い原因を探してしまいがちだ。「日頃の行いが悪かった」「因果応報だった」「自業自得だった」などの言葉で受け入れ難いことをまとめようとしたりもする。でも、何も悪いことをしていなくても、良い行いをしていても、悪いことは起きるし、止むを得えず導き出した答えの後、ハプニングが起きることだってある。

最近、ニュースやSNSをみていてちょっとモヤモヤすることがある。
それは『その状況にならざる負えなかった人』が傷付き助けを求めているときに、「あなた自身に問題の原因がある」と責め立てる人を見るときだ。

例えば、コロナ禍で生活が困窮している人に「貧乏は個人責任。仕事はいくらでもある」、モラハラ夫に苦労している人に「悪い人だと見抜けず結婚したあなたが悪い」、コロナ感染した人に「そこへ行ったあなたにも責任がある」などなど……。すでに傷ついている人の傷を更にえぐる言葉が最近、あまりに増えている。。

人の人生は簡単に他人に語れるほど単純ではないのに、表層の情報とイメージで他人を解釈し、傷ついた人を説教するくだりには、傲慢さを感じてしまう。もう変えることができない過去の原因や選択を責め続けても、困っている現状は変えられないのに……。